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そして事は終わる

 結局ぼくが意識を取り戻した後にはすでに事は片付いた後のようだった。ミルーさんはまだ頭がくらくらするためふらついてるぼくの傍にくっついている。ロイはいつもはおしゃべりなのに視線をあちこちに彷徨わせて落ち着かない様子だ。シャルトーはこの中で一番重症だった。鼻の辺りに血が固まって痛々しいし、身体のいたるところに切り傷が見られた。しかし当のシャルトーは笑顔で自分の武勇伝を語っていた。そしてセンプスさんは驚く事にあのオオグロを一人で追い払ってしまったらしい。

余程壮絶な戦いだったのだろうかなぜか猫神様がセンプスを畏怖しているように見える。その割にセンプスさんは傷が一切なく、本人はいつもと変わらずみんなを包み込むオーラを発していた。

「猫神様なんでそんなにもセンプスさんのこと気にしてるの?」

「い、いや別に何でもないニャ」

 慌ててひげをいじり始める。話したがらない素振りがなんだか妙に癪に障ったので原因でありそうなセンプスさんの方に直接聞くことにした。

「センプスさん。猫神様の様子がなんだかおかしいのですがなにか知ってます?」

 その言葉を聞くと猫神様が激しく反応した。首を百八十度一回転したように見えたほど勢いよく首をこちらに向け、センプスさんの方に向かって必死に首を振る。本当に頭がおかしい猫だ。

「それはですねー」

 くすくす面白そうに口元を隠すセンプスさん。その視線の先では涙と鼻水をほとばしらせまだ首を振っている猫の神がいる。

「ふふ、オオグロ様の首を絞めて失神させたとき、ミケ様ったら私がオオグロ様を殺してしまったと勘違いされたらしくて私が怖いっておっしゃったのよ」

「ふーん」

 そこまで必死になって隠すこともない話だと思うけど。

「それでその後ね、ミケ様ったら……」

「お願い、お願いだからそれ以上は言わないでーー」

 悲痛な叫びも聞こえないのか楽しげにセンプスさんは続ける。

「あまりにびっくりしたみたいでおもらししてたの」

「……え?」

 得意げに自分の話をミルーさんに披露していたシャルトーでさえこちらを向いた。

「あまりの怖さにちびっちゃったってことですか」

「そういうことですねえ」

 みんなの視線が猫神様に集まる。

「そんなにみんなして哀れな目で見ないでー。うわーん」

 視線に耐えきれずに部屋から逃亡していく猫の神様。本当にこんなのが猫の神様でいいだろうか。


 後日なんとかメンタルを回復させた猫神様から聞いた今回の事の顛末。

「わしの上司に当たる人いてニャ、まあ基本は優しくて良いかたなんだが今回はその、なんだ昇進試験みたいなものだったらしいニャ」

「昇進試験? 猫の神からさらに上とかがあるのか?」

「そ、そうニャ」

「じゃ次は何になれるの?」

「えっとそうだニャあ。たぶん魚の神?」

「魚って……なんかランク下がってないか? 哺乳類から魚類にっておかしいだろ。適当に思いついた鮪から連想したとかそんなんでしょ」

「そ、そんなことないニャ。魚は偉大だニャ。数も多いし、おいしいし……」

「やっぱりそんな理由なんだな。ま、それで昇進試験がオオグロと何か関係してるの?」

「そうだニャ。わしの上司……なんか長くて言いにくいニャ。本当の名前は言えないから『わし上』とでも略そうかニャ」

「意味わかんない略し方すんなよ。普通に上司でいいだろ」

「そうかその手があったか。お主グッドアイディア!」

「普通なことしか言った覚えはないんだが」

「それで上司がオオグロと接触して力を与えたんだって」

「へー、それじゃそのオオグロが言っていたっていう混沌の神だっけ? は上司だったってわけね」

「そう言うことニャ。不安定なオオグロに力を与えることによって暴走することは予想済みだったってわけ」

「でもそうするとお前のためにオオグロは使われたってことかなんか不憫だな」

「まあ記憶は既に消去されているから覚えてはおらんだろうニャ。今頃あのセンプスにやられたことすら覚えていることなく野良猫のリーダーでもしているんじゃないかニャ」

「ふーん。でなにもできなかったお前は昇進できたのか?」

「そ、それはうまく部下を使ったという評価が……」

 うーんこれは失敗だったらしいな。センプスさんの話じゃオオグロの話は聞かない、殴りたいだけ殴られ、最後はセンプスさんが助太刀に入って助けられたっていう醜態しかさらせたないのに昇進できるはずないか。

「ま、おまえが昇進できたなんて思っちゃいないからいいよ、嘘つかなくても。だって現にいまおまえはここでまだ猫のままだもんな。魚になってないからな昇進できなかったんだろう」

「いやいや、魚はうまいが自分がなるのは気に入らないから丁重にお断りしただけだニャ」

「ぼくはおまえが昇進しようと関係ないが、ここの人たちにお世話になってるんだろ。勝手に昇進して魚になんかなるなよな」

「う、うむ。まだまだうまい魚が食いたいニャ。しかしご主人はなぜコンビニのツナマヨおにぎりを出してくれんのだろうか。何度もお願いしてるのに」

「おまえ意思疎通できてなかったのかよ」

「これだけはどうしても聞いてくれないのニャ。首を振るばかりで……。今度はコンビニ業界に進出するようにご利益をあっち方面に凝縮させよう」

「職権乱用だな」

「食券? 何が食べれる食券? ねえねえ」

「ゆするな気持ち悪い。お前の想像している食券じゃねえよ」

 それでもしつこくからんでくる猫神様。飯のことになると粘着度がガムよりうっとうしい奴だ。

 今回は猫神様の試練なのに周りのぼくらが振りまわされた出来事になった。昇進というよりこのおバカを叩き直すような試練を与えてはくれないものかねえ。

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