はぐれ者たちの宴――異端パーティの誕生
騒動が収束した後の冒険者ギルドは、嵐が去った後のような静けさと、熱を帯びたざわめきが混在していた。
血に濡れた床は清掃され、気絶したガストンと『赤き牙』の残党たちは、駆けつけた街の衛兵たちによって厳重に連行されていった。
「本当に、何から何まで世話になったな。彼らがこれ以上の被害を出す前に制圧してくれたこと、ギルドを代表して感謝する」
ギルドマスターが、アレンたち三人の前にずっしりと重い革袋と、真新しい認識証を差し出した。
「B級魔獣の異常発生を討伐した特別報酬と、ガストンたちの所持金から没収した見舞金だ。それと、特例としてお前たちのギルドランクを一気に『銀ランク』へと昇格させる」
銅色から、鈍い光を放つ鉄色のタグへ。
駆け出しのFランクから中堅手前の銀ランクへの異例の特待昇格に、ギルド内の冒険者たちが再びどよめくが、先ほどのレオの圧倒的な一撃とクリスの実力を見せつけられた後では、誰一人として文句を言う者はいなかった。
「ありがとうございます。……でも、目立ちすぎるのは少し怖いんですけどね」
アレンは気弱な少年の顔つきに戻り、苦笑いしながら鉄のタグを受け取った。
騒ぎの処理を終えた三人は、ギルドに併設された酒場へと席を移した。
木製の丸テーブルには、湯気を立てる肉料理とエール、果実水が並べられている。
「それじゃあ……僕たちの生き残りと、新しい仲間の加入を祝って。乾杯!」
「乾杯っ!」
「乾杯です!」
三つの木製ジョッキが打ち鳴らされ、ささやかな祝宴が始まった。
スラム育ちでまともな食事をとったことのなかったレオは、運ばれてきた厚切りの肉を泣きそうな顔で頬張っている。
クリスもまた、泥濘と血に塗れた逃亡生活の緊張から解放されたのか、年相応の柔らかな笑みを浮かべていた。
「なあ、アレン」
口の周りをソースだらけにしたレオが、真剣な顔で切り出した。
「俺、絶対に強くなる。あんたに教えてもらったこの【トレーディングカード】の力で、二度と誰にも見捨てられないくらい……あんたの背中を守れるくらい、強くなってみせる」
「うん。期待してるよ、レオ君。君の『効果カード』による支援があれば、身体能力の低い僕の弱点もカバーできる。クリスが前衛で敵のヘイトを稼ぎ、レオ君がバフと遊撃を担い、僕が後方から火器で面制圧する。……うん、完璧なフォーメーションだ」
魔法も鋼鉄も易々と貫く『無限の弾倉』。
強力な近接戦闘を誇る『銀髪の騎士』。
そして、戦況を根底から覆す『無限の手札』。
それぞれの力は世界の常識を逸脱しているが、単体では勝てない相手もいるだろう。
しかし、この三人が噛み合った時、その戦闘力は帝国軍の精鋭部隊すら凌駕する可能性を秘めていた。
「アレン殿。我々が正式にパーティを結成するにあたり、パーティ名が必要かと存じます。ギルドマスターも、登録のために決めてほしいと仰っていましたし」
クリスが居住まいを正し、提案した。
「そうだな……アレン、あんたがリーダーなんだから、あんたが決めてくれよ」
二人の期待に満ちた視線を向けられ、アレンは少し困ったように頬を掻いた。
「僕たちはそれぞれいた居場所から見捨てられたり弾き出された人間の集まりだ。……だから、あてどなく彷徨うはぐれ者という意味を込めて、『ストレイ』なんてどうかな」
「『ストレイ』……。はぐれ者、ですか。フフッ、今の我々に相応しい、良い名ですね」
「おう!俺は気に入ったぜ!」
かくして、のちにエルフレイデン王国のみならず、世界中の伝承にその名を轟かせることになる最強の異端パーティ『ストレイ』は、辺境の酒場の片隅でひっそりと産声を上げた。
「さて、お腹がいっぱいになったら、さっそく次の依頼を探そうか。武器の整備や今後の旅費で、お金はいくらあっても足りないからね」
「はいっ!どこまでも、主のお供をいたします!」
「俺のカードの力、存分に見せてやるぜ!」




