第88話 犯人の候補
マリウスが目覚めたのと同日、役所に一人の男が現れた。男は受付の人間に尋ねる。
「町長に繋いでくれないか?」
「すいません今町長は席を外しておりまして……」
「そうかい……どこ言ったか聞いてる?」
「イルダ先生のところだと」
「了解、ありがとうね」
そう言うと男は振り返って、役所の出口へと向かおうとする。そこで男は一人の男とすれ違う。
男は見覚えがあるその男に会釈をする。もう一人の男も会釈を返す。
男が役所から出た所で、外回りから帰って来た役場の人間が話しかけてくる。
「リフルさん。今日も町長に用事ですか?」
リフルはうなずく。
「ああ、にしても今日は珍しいなあの人が役場にいるとは」
「あの人って?」
「そりゃ……」
役場ではもう一人の男が、受付に話しかけていた。
「実は、販売許可証の期限が来たので更新に……」
受付が明るくうなずく。
「わかりました、クロムさん少し待っていてください」
クロムはほっと一息ついて、近くの腰掛けに座った。受付は奥の人間に、販売許可証を取ってくるように指示する。
言われた職員は奥の資料庫へと向かう。一方、リフルはマリウスの家の近くまで来ていたが、そこで一人の男を見つける。
「おい、クラムそこで何してる」
クラムは驚いて逃げようとするが、リフルにがっちり掴まれる。
「マリウスのお見舞いだろ?」
「誰があんな奴のお見舞いになんか行くか」
「いいから来い。元は仲良しだろお前ら」
リフルは無理やりクラムをマリウスの家に引っ張っていく。
職員が資料庫へ行くため役場の奥へと歩いて行くと、その途中の一室に護衛が一人ついている部屋があった。護衛は聖獣隊の制服を着ていて職員が会釈をすると、護衛もそれに返す。
職員が行ってしまうと、少ししてから、同じ制服を着た男が一人そこに現れる。男は護衛をしていた男と話すと、その場を交代する。
そして、元の護衛もいなくなり、職員も誰もいなくなったタイミングを見計らうと、男はゆっくりと扉をあけて部屋に入り腰に刺している剣をとる。
「さあ、どこにいる……ファンネルの子供……」
しかしその瞬間横からガチャと銃を構える音がした。
「そこまでです」
男が驚いて声の方向を見ると、扉を開けたすぐ横でサラが銃を向けていた。
「サラさん……ここで何を?」
「それはこちらのセリフです。レルベットさん」
男は聖獣隊の監査役、レルベットだった。
「私は護衛をしているまでですよ。部屋から物音がしたので、気になって扉を開けただけです」
サラは首を振る。
「苦しいですね、私は横にいましたが、物音はしませんでした……」
レルベットは少し黙る。そして次の瞬間、襲い掛かろうとした。
しかしサラは焦らず、レルベットの頭を撃ち抜く。レルベットはその場に倒れ込む。
サラは躊躇わずに何発も銃弾を打ち込んでいく。薄れゆく意識の中でレルベット……エサルの中では人生の記憶が走馬灯のように駆け巡っていた。




