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「ここで魚を釣ったな」
やけに威圧感がある。
それに押されて僕は答えた。
「はい」
「そんで、釣った魚は死んだな」
「……はい」
「困ったことをしてくれたもんだ」
「……」
「坊主、ここがどこか知っているのか。その川が何なのか知っているのか」
「知らない」
「まあ、そうだろうな。ここはこの世とあの世の境界。目の前にある川は、三途の川だ」
――ええっ!
三途の川。
聞いたことがある。
初老の男の言う通りの川のはずだ。
「そんで、この川で泳いでいる魚は、器だ」
「器?」
「そう。死んだら天国か地獄に行かなきゃならない。でもその審判が出るには時間がかかる奴もいるんだ。たいしていいことも、たいして悪いこともしなかった奴だ。その魂を審判が下るまで、魚に入れて待機させてんだ。でも川から魚を上げると、魂が抜き出てしまう。で魚は死に、魂はどこかに行っちまった。今ごろ、浮遊霊にでもなってるかもな。でも問題はそこじゃない」
「……」
「その魚。大事な魂の入れ物だ。そして今は死んでいるが、すぐに代わりの魂を入れれば生き返る。でもまごまごしてたら、もう生き返らない。そんで早急に誰かの魂が必要なんだが、周りにはそんな魂は一つしかないんだよなあ」
「……」
「わかったようだな。坊主の魂だよ。そんで坊主は死ぬことになるけど、仕方がないよなあ」
「……」
男が僕に近づいてきた。




