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家庭菜園物語  作者: コンビニ
14/180

13 肉が!

 ん……モモか? 揺さぶられて目を覚ます。

 まだ外は薄暗く、太陽は出きっていない。いつも通りの時間だ。

 モモは寝起きが非常によく、毎朝こうして起こしてくれる。


 たまには寝坊したモモも見てみたいものだ、それはそれで可愛い困り顔をみせるかもしれない。


 新居の洗面所でモモと一緒に歯を磨き、顔を洗う。

 今日は畑への水やりに加え、余っているスペースに人参、レタス、唐辛子、トマト、ナス、ブロッコリー、きゅうり、ピーマンと、種類を多めに浅く種を植える予定だ。食卓に彩りを、ってね。


 木材も使い切ったし、次の家のアップグレードに石材も必要になるので、少し集めておきたい。

 余裕があるうちに、買取箱も各所に置いておいた方がいいかもな。


「モモ、俺は朝食を用意してくるから、ガンジュさんたちの様子を見てきて。起きてたら呼んできてくれるか」

「はい!」


 人数が増えると、朝食の準備は一気に大変になる。

 じゃがいもの皮むきだけでも手間がかかるため、芽だけ取って皮付きのまま一気に大量のじゃがいもを塩茹でする。

 その間に、トマト、レタス、きゅうりで簡単なサラダを作っていく。


 背後でかちゃかちゃと食器の音がする。

 振り向くと、モモが皿の準備をしてくれていた。ガンジュさんたちも、すでに縁側に姿を見せている。


「モモ、ありがとう。サラダから盛り付けて出しちゃってくれるか」

「はい!」


 てけてけと歩きながら、ボウルに入れたサラダと皿、ドレッシングをちゃぶ台へと運び、先に食べてもらうよう配膳してくれる。

 まだ食器棚はアップグレードされていないので、細かな家具も少しずつ増やしていかないとな。


「先に食べてよいのだろうか?」

「片付かないので、先にお食べください」


 モモとガンジュさんとの小さな押し問答の末、ようやく食べ始めてくれたようだ。「このタレ、美味ぇっす」などと聞こえてきたので、ドレッシングが好評のようでよかった。


 全員に朝ごはんを出し終えたあと、俺も手早く口に詰め込む。この後は洗い物が待ってるしね。


「悠、我々でできることがあれば、何か手伝わせてくれ。昨日と今日と、貴重な食事をご馳走になったのだ。何かさせてくれ」

「にゃーん」

「畑仕事に、木の伐採、石材集めですか? 任せてくれ」

「姉さん、でもさー」

「にゃーん」


 確かに、もらってばかりだと相手も気を遣うしな……。


「杏殿の言う通りだ。元はドナルが木こりで、エリザベスとアダメは野良仕事の経験がある。石材などの力仕事なら、俺に任せてくれ」


 確かにこの人数が手伝ってくれるのは心強い。ここは素直に頼るか。

 納屋に案内し、鍬や斧、じょうろなど必要な道具を渡す。それぞれの作業エリアに買取箱を設置して、「成果物はここに入れておいてください」と説明した。


 これで午前中はかなり余裕ができた。


「ご主人様、私は……」


 ああ、モモの仕事がなくなってしまったのか。


「俺は洗い物してるから、たまにはゆっくりしてていいよ」

「ゆっくり、ですか……」

「にゃーん」

「はい!」


 姉さんが「ブラッシングしてくれ」とモモを連れていってしまった。

 せっかく自由時間を与えようと思ったのになー。

 まぁ遊ぶ場所もないし、モモも困るか。


 姉さんの配慮には感謝しないと。


 手早く洗い物を済ませて、クラフト画面とにらめっこを始める。

 木、石、肉の小屋、それに加工するための小屋のシリーズ……。

 現在は自分で伐採して、お金を払って加工してもらっているが、これを作れば無料になる? 建築物っぽいが、詳しい説明がないのは、例の神様クオリティということか。


「まずは試しに作ってみたいよな……」


 木材が六十個あれば、一万円で建築可能らしい。

 六十といえば巨木三本分。今の俺の実力だと、集めるまでに二日はかかる。

 金額的には安いけど、労力を考えると安くはないな。


 肉は大福が確保可能と言っていたけど、どのみち木材がベースになるから、まずは木関連を優先すべきか……悩ましい。


 でもこうやって、ゆっくりクラフト画面を眺めたり、ショッピングサイトを見て検討できるって貴重だよな。

 最近はバタバタしてて、落ち着いて考える時間も取れなかったし。

 人が増えて、食材の減りも早くなって不安だったけど、短期間ならむしろ安い労働力かもしれない。


 今の畑のき規模だと、一家族で六人くらいが上限か……自動化や肉の供給ラインが整えば、もう少しいけるかな。


 あ、そろそろ昼飯の準備もしないと。


「兄貴」


 ドナルさんがこっちを見ているが、ガンジュさんならいないぞ?


「兄貴」

「……俺のことですか?」

「兄貴」


 ドナルさんは、アダメさんと比べると寡黙な人という印象がある。

 実際に喋ったのは少しだけだけど、そういう空気がある。


「えっと……どうしました?」

「兄貴」


 俺を手招きして、伐採しているエリアへと誘導する。

 そこには、すでに何本かの木が切り倒されていた。そして、買取箱を指差す。


 中を確認すると、午前中だけで五本の木が伐採されていた。

 体格や種族の違いもあるが、それにしても凄い。


「今から、もう一本伐採すること可能ですか?」


 ドナルさんは頷き、伐採の準備を始める。

 その動きを食い入るように見つめる俺。スイングスピード、腰の入り方、フォーム……すべてが理に適っていて、美しい。


 俺も木こりとして、いつかこの高みに至れるだろうか。


「ドナルさん、素晴らしい動きでした!」

「兄貴」


 斧を撫でて頷く。おかげってことかな? 

 さくらさんも褒めてたし、業物なのだろう。

 俺なんて、あれ使っても一日二本が限界だけどね。


 切ってもらった木を木材に加工すると、八十個の木材が手に入った。

 これで何か一つ、小屋が建てられるな。


 何を作ろうかな――と考えながら帰宅すると、ガンジュさんたちも作業を終えて集まっていた。

 そして足元では大福がわんわん騒いでいる。


 その足元には、大福の二倍ほどのサイズはある、鹿のような動物が横たわっていた。


「大福、獲物を取ってきても、俺にはどうしようもできないぞ」

「ああ、すまない。大福様に『解体できるか』と今朝聞かれて、『できる』と答えたもので、持ってきてくださったそうなのだ」

「ガンジュさん、解体いけるんですか!」

「ああ。我々は全員できるぞ?」


 これで大量の肉が確保できる……!

 ガンジュさんたちがどれくらい滞在するかは分からないが、解体の仕方を教わるのも悪くない。


 ちょうど木材も揃ったし、肉の加工小屋を作ってみよう。どんな機能があるのか検証も兼ねて。

 自動化できなくても、道具があるかもしれないし、解体できる人材もいるから無駄にはならないだろう。


「そうなんですか! 俺に解体の方法、教えてもらってもいいですか?」

「そのくらいなら構わない」


 よっし!


 えっと、肉の加工小屋を作成。家の側の空き地でいいだろう。

 完了は二時間後。昼ご飯を食べて一息ついた頃にちょうど良さそうだ。


 設置場所を選ぶと、土の中から妖精さんたちがわらわらと湧き出てきて、足場を組んでトンカンと建築を始めてくれる。


「加工する小屋を作ってもらってるので、二時間ほど時間をもらってもいいでしょうか?」

「わかった。とりあえず獲物は血抜きして、川で冷やしてこよう」

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