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第40話 転生者 もしかして:チート


 シンシア・オルデンが刺されたという話は街全体に急激に拡大していった。王国最強と呼べる戦力が何者かに打ち倒された。その事実だけで不安が煽られるのは最もだ。


 しかし、その影響を最も受けたのは他でもない。


「僕はどうしたらいいのだろうか……」


 シンシアの護衛騎士であり転生者。イレイス・マキアージュだ。


「なんですか、新手のゾンビですかね」

「ああ……理性を失って襲いに来るのも時間の問題だぜきっと」


 俺とルナはそんな彼の心境など知った事かと罵詈雑言を浴びせる始末。第二階層主を倒して最高潮だった気分が一瞬にして冷めてしまった。


「主……どうするんですか、これ」

「そんな汚物を見つめる様な目で見てやるな。確かにこうも落ち込まれると話す事さえ一苦労だ。ったく……転生者のメンタルが豆腐以下なのが再確認できたぞ」


 ルナは興味深く俺の瞳を覗き込む。


「転生者ってなんですか?」

「あー簡単に言えば、前世の知識を持つ者達の事だな。だが、この場合は異国の地で育った知識や経験が幼少期から備わっている為、現地人より破格の強さを持つ事に定評がある者の事を言う」

「な、なんですかそれ……天才児が爆誕し放題です」


 ルナはそんな都合のいい事があっていいのかと目を丸めた。


「そういう卑怯な能力の事を総じてチートと呼ぶ。ここテストに出るから覚えておいた方がいいぞ?」


「な、なるほど……」


 こうしてルナはまた一つ言葉を知った。

 その時、ふとルナは頭を上げた。


「待ってください。主は……どうしてそこまで詳しいのですか。もしかして、主も……ちーと? を宿す異国からの覇者だったりするのですか?」

「ないな。だって俺厳密には転生者じゃないし」

「ですよね。主は私よりも雑魚ですし」

「おい」


 主に対する敬意がやはり足りない。

 何故だ、俺は何故こうも舐められてしまうのか。


 やはり威厳が足りないのか?


「……転生者、じゃない?」


 しかしその言葉に引っかかったのはイレイスだった。机に突っ伏して今にも溶けそうだった身体をぐんと起こして俺を隅々まで眺める。


「いや、しかし……」

「俺は転移者で、もっと言えば女神のゲームだっけか? 俺にはそんなゲームを受けた記憶がさっぱりない。完全に巻き込まれてるだけだ」


「転移者。確かに黒髪黒目なのは妙だと思っていた」


 ルナが再び小首を傾げる。


「転移者っていうのは?」

「異国の地から、身体や魂をそのままに転移された事を指す。だから初めはこの国の言葉も分からなければ、能力の使い方すら知らないと来た。どんなハンデだよ全く」


 そのハンデのせいで最近死にかけたのは記憶に新しい。


「主は……勇者様だった!?」

「おっ、そんな風に見えるかー?」

「スラム街をうろつく浮浪者に見えます」

「そんなに変かな俺!?」


 もしかして体臭がきついとか!?

 身体が煤け、服が破れ、やせ細っているとか!?


 こうもパーフェクトな存在でそんな懸念を抱く方が間違いだ。やはり目が節穴なのはルナの方に違いない。これも照れ隠しの一種、ツンデレイズムの為せる業か。


「潰しますよ?」

「え、どこを……?」


 主に下半身を見つめるルナの表情は、語りきれない程に薄暗い殺意に満ちていた。これ以上言うと本当に何かが潰されかねないので自重する。


「それはそうと、女神のゲームとやらについても詳しく説明してください。二人だけで分かったように話を進めるのは少々深いです」


 ルナはぷくっと頬を膨らませる。


「なら外で待っておいてもいいんだぞ」


ここはシンシアが運び込まれた病院にある小会議室だ。この病院は《王国要塞(ロイヤルフォート)》が運営する機関の一つで様々な融通が利くのだった。まして、シンシアを除けば最高権力者であるイレイスの頼みを断れるはずもなかった。


「いいえ。主が私に内緒で何を話すか分かりませんから」


ルナはぼすんと俺の膝に座った。

ええい、暑苦しい。


思えばルナと出会ってから片時も離れた事がない。俺と指をぎゅうぎゅうに絡めて過度なスキンシップを取ってくるあたり、例の一件から本当に容赦がなくなった。


落ち込むイレイスの傍らでそんなイチャイチャ空間を作り出す俺達に嫌気が刺したのかどうかは分からないが、ふとイレイスは俺達を見てこう口にした。


「君達の関係って結局何なんだい?」


俺とルナは顔を見合わせる。


「そりゃ……」

「勿論……」



「主と従者だろ」

「従者と主ですね」


当たり前の返答をする。


「ルナよ。本当に自分と従者と思っているか?」

「なんですか、疑ってるんですか」

「お前が疑われるような事しかしてないからな」

「なら主が毅然と振る舞えばいいだけです」


それで解決しますから、と期待できない案を仄めかす。


「で、俺とルナの関係だっけか。あれはいつだったかルナが俺に『私の身体をめちゃくちゃにして下さい』とせがんできた時に」

「そんな事実はないので死んでもらっていいですか?」

「辛辣すぎる」


ルナはこほんと咳をして。


「主から話されると事実を捻じ曲げられそうなので。責任を持って私からイレイスさんにお伝えします」


ルナは俺を放って勝手に話を進めた。


「これは私と主の原点に立ち返る話……」


イレイスはその話に集中して聞き入っていた。


「私は、最初に主と出会った日……【契約】を交わしました」




【ステータス】

 名前:レイ レベル:15

 HP360/360 MP220/220

 称号:【植物の探求者】

 ギルド:《北極星(セプテントリオ)

 ユニークスキル:【魅力支配(ヴィーナス)】【勇猛果敢(メメントモリ)

 EXスキル:《鑑識眼》C《演算領域》E《二刀流》E《気配遮断》F《処世術》D《全属性耐性》F

 スキル:『言語理解』C『料理』F『剣術』G『体術』F『槍術』G『火魔法』F『光魔法』G『土魔法』G『蓄積』F『瞑想』G『詠唱』G『紅魔』G『連携』G『受け流し』G『先見』G『暗視』G

 所持SP:25

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