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第10話 チートキャラ。

 

「チェックメイトだ」


 俺の剣が、喉元を軽く撫でる。

 その瞬間、パリンッと世界が壊れた───。


「「あっ……」」


 するとどうだろう。世界が一変した。小屋の中に引き戻され、机や椅子、窓といった俺が本来見ていた物がその場へと顕現されていく。戻った、と実感出来たのはその後だ。


 俺とルナは互いに剣を向けあっていた。喉元を突き刺す寸前、お互い殺す事を厭わないといったそんな状況だった。


「主、ですか?」

「その汚物を見るような視線。間違いなくルナだな」

「どこがですか!」


 間違いない。俺達は戻ってきた。


「なるほど、俺が"見ていた"のは本当にルナだったんだな。ただ、言葉や仕草に少しずつ『幻惑』をかけていたと」

「まさか主も同じ試練を……!?」


 この様子だと、ルナもまた偽りの俺を見抜いたという訳か。ただ従順に接していないルナだからこそ、俺を疑い、俺に剣を向けた。向ける事が出来た。


 ふふ……流石俺の見込んだ女だ。


「で、これで試練は終わりなのか?」


 俺とルナは互いにある一点を見つめた。

 腕組みをしながら俺達を眺めていた低身長の男。綿のような自慢の髭を下げて、満足気に頷いた。


 奴は……『鍛冶種(ドワーフ)』だな。


「儂の『幻惑』を見抜くか。大したものじゃ」

「俺を侮ってもらっては困るな。俺はスキルをそもそも全面的に信頼している訳じゃない。俺が信じているのは───」


 トン、と頭に指を置く。


「この頭脳だけだ」

「くはは、良いぞ小僧。気に入った」


 0→5


 ───スキル『幻惑』を獲得しました。


「ところで爺さん。あんたのステータス覗いてもいいか?」

「勝手にすればよかろう」

「だから言ったろ。爺さんの『幻惑』が俺の『鑑定眼』を上回っているって。勝手に見る事は出来ないはずだ」

「くはは、そこまでお見通しか」


 ファン……何かが弾ける音がした。


「これで良いぞ」

「そうか。じゃあ……」


 名前:ジンエイ

 ギルド:無所属

 ユニークスキル:【???】

 スキル:『鍛冶』SS『幻惑』S『槌術』B『幸運』D


 おい誰かこのチートキャラを何とかしてやってくれ。


「俺のFランクスキルじゃ見抜けないのも納得だ」

「それにしては使いこなしているように見えたが?」

「ふはは、それは俺の技量とセンスだ」

「主、調子に乗らないでください。気持ち悪いです」


 ねえってば。


「お二人さん。その剣をやろう」

「剣。いいのか? 代金は」

「何年ローンがいいかの?」

「こいつ……!」


 結局金取るのかよ。


「利息なし。金貨三枚でどうじゃ?」


 ───スキル『交渉術』を発動。


「俺達を試した事について弁明を聞こうか?」

「そ、そうですね。まだ何も頼んだ訳じゃありませんのに」

「そう言われると弱いの。くはは、いいだろう。金貨一枚」

「銀貨五十枚。そしたら、俺達は定期メンテナンスや装備新調を含めて、ここで行うと約束しよう」

「ぐっ……仕方ない。強欲な奴じゃな」


 ふはは、強欲?

 それでこそ俺に相応しい。


 ルナはそんな俺を肩を竦めながら、口角を上げた。

 そうか、主たる俺の類稀な才能に恐れ入ったか。


「死んでください」

「俺まだ何も言ってないのだが」


 さて、用事も済んだ。

 そろそろお暇するとしよう。


「それじゃあ爺さん。また来るよ」


 ルナもぺこりと頭を下げた。


「おい待たんか」

「まだ何かあるのか?」

「剣を剥き出しのまま、外に出るつもりかの?」


 あ、確かに。

 剣を抜き身のまま持ち出していた。


 鞘が必要になるな。


「儂が前に作ったので良ければ無償でやろう」

「ほう、ならそれを頂こう」

「主は多分、古着でも喜んで着るタイプですね」


 ルナが突然、俺を見透かしたように挑発する。


「何を言ってるんだ。服など着れたらいいだろう」

「はあ、これだから男の子は……」


 ルナはやれやれと頭を抱えた。


「お前こそ勘違いするな。この俺ならば、どんな服でも着こなせるという意味だ。そこらの男と一緒にするな」

「その場合、主は余計タチが悪いですね」

「おいこら、どういう意味だ」

「そのままの意味です」


 鼻歌交じりに、ルナはご機嫌よく店内を散歩して回る。あれだけ広大に思えた店内はよく見れば、落ち着いた雰囲気の喫茶店のようにも見える。『幻惑』で騙され続けていただけに、意外な発見だ。


 木調本来の包み込むような自然の香り。

 丁寧に設えられた防具やアイテムの数々。それが棚にどれも綺麗に揃えて置かれてあって、ガサツの『鍛冶種(ドワーフ)』というイメージを払拭する仕上がりだ。


 元々鍛冶師というだけあって、手先の器用さや几帳面さは随一のはずだ。店内を綺麗に見せる事等造作もないのだろう。


「ほれ、持ってきたぞい」


「ありがとうございます。ほら主も」

「はいはい、分かってるよ」


 ぺちぺちと俺の手を叩くルナ。

 面倒見がいいお袋が出来た気分だぜ。


 鞘には、これまた見事に収まった。

 しっくりと、手に馴染んでくる仕上がり。


 紐を背中部分に括り付けて背負う。武士のように左腰に提げる事も考えたが、ここは異世界。肩に装備するのが美学だ。


「また来るよ」

「その時はお金も沢山持ってきますね、主が♪」

「俺かよ」


 全部人任せな癖に、適当言うこの少女の口を誰か塞いでやってくれ。その内勝手に魔王討伐依頼とか引き受けて来そうだ。


 しかし、あれだ。

 時々ではあるが、ルナが笑顔を見せるようになった。


 これは、今日一日の成果にしては上々じゃないか?



 こうして俺とルナは、冒険には必要不可欠な装備を手に入れた。


「時間も結構経っちゃったな……」

「この後はどうしますか。いよいよ冒険ですか」

「いや、最後にやるべき事が残ってる」


 ルナは首をかしげた。


「なんですか?」


「宿探し」








 名前:月乃 玲

 ギルド:無所属

 ユニークスキル:【魅力支配(ヴィーナス)

 スキル:『言語理解』E『鑑定眼』F『交渉術』F『礼儀作法』G『挑発』G『料理』G『幻惑』G

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