880.転移装置を復旧せよ
「【ドルフィンスイム】!」
大量の沈没船が浮かび、重なっている個所もあるという不思議な光景。
五人は、ミューダス三角海域の中心部に潜ることにした。
目的は、転移装置の再稼働だ。
「うぐっ」
そんな中、早々に迷子対策の【ロープフック】によって止められる迷子ちゃん。
おとなしく浅いところの船のドアを開けたり閉めたりしながら、付近を警戒する役につく。
他四人は海中に進み、転移装置の起動を狙う。
意外にもそこまで深くない海底には、1、2分ほど泳いだところで到着。
しっかりと溝の残った紋様入りブロックが敷かれた、大きな三角形の床面は、やはり遺跡を思わせる。
四人は三角形の『角』を目指して、分かれることにした。
「……あった」
しばらく泳いでたどり着いた角で、レンが見つけたのは重たいレバー。
このレバーを引いている間は、足元にある円形の魔法陣に輝きが灯る。
戻せば輝きは止まり、やがてゆっくりと戻っていく。
要は【腕力】と【呼吸ゲージ】の二つが求められる仕掛けになっているようだ。
「……これ、ちょっとキツイわね。十回くらいは潜らないと無理そう」
レンは一度、泳いで海面へ。
「……んー」
一方メイがたどり着いた魔法陣には、中心に結晶のようなものが埋められていた。
触れると、魔力が注ぎ込まれていく。
【耐久】が高いため【呼吸ゲージ】は全然残っているが、魔力が低いため全然輝きが灯らない。
仕方なく、海中に手を付けたまま正座でジッと待つメイの肩をまもりが叩く。
そして「い、一度上がりましょう」と、なぜかジェスチャーなのにちょっと噛んでいるように見えるぎこちない動きで表現。
「りょうかいですっ! 一緒に行こうっ!」
うなずいたメイは、まもりの手を取って一気に上昇。
輝く海の中、メイに連れられ海面を目指す時間に、まもりは思わず感動するのだった。
「…………」
一方ツバメは、三つ目の角で虚無状態。
そこにあるのは、八つのブロックの一つを選んで押し込むというシンプルな仕掛け。
当たりを引かなければ、魔法陣が輝かないようだ。
外れるとまたブロックが八つ飛び出し選択の流れになるのだが、その際に時間がかかるため、ゲージは減る一方だ。
ツバメは酸素不足ではなく、【幸運】不足で白目をむく。
仕方なく、一度海面へ。
「あれ、皆さんどうしたんですか?」
結局四人戻ってきたのを見て、迷子ちゃんが首を傾げた。
「ちょっと時間がかかりそうなの。【呼吸ゲージ】が少ないのはキツイわね……」
「うん、なかなか大変そうだよ。【呼吸ゲージ】は大丈夫なんだけど」
「メイのゲージを少し分けて欲しいわ。人工呼吸でゲージを何とかできれば面白いのに」
冗談めかして言うレンに、ツバメは想像してちょっとドキドキする。
まもりに至っては、顔を赤くしていた。
「……いや、メイの肺活量を考えたら破裂するわね」
自分が風船みたいにふくらむ姿を想像して笑うレン。
「さて、どうしたものかしら」
「私は今の文明が滅びてもまだ、1/8の当りを引けずにいるかもしれません」
「……待って、そっちは運の良さが絡む感じ?」
「皆さんは違うのですか?」
「こっちは魔力が関わりそうだったよ」
「私のところは【腕力】がメイン。これ、分担先を変えればいけるんじゃない?」
「なるほどー!」
「そういうことですか……!」
「これでいけそうね、もう一度行きましょうか!」
「「「はいっ!」」」
皆で迷子ちゃんに手を振って、再び潜水。
八分の一の勝負に立ち向かうのは、まもりだ。
飛び出した八つのブロックの中から一つを選び、押し込む。
一回目、失敗。
二回目、失敗。
三回目、成功。
元々【呼吸ゲージ】の長いまもりは、かなりの余裕を残して魔法陣の起動に成功。
ツバメが見たら気を失いそうな早さで、問題を片付けた。
「あった! あれだねっ!」
メイは重たいレバーを見つけて、軽く押す。
もちろんその【腕力】なら何も問題はなく、あっさりレバーが倒れる。
手から人差し指に変えてみる……余裕。
そのまま小指一本に変更……余裕。
「ッ!」
しかしレンが重くて大変だと言っていたレバーを余裕で下げる姿は『力自慢=野生児みたいになっているのでは!』と思いつき、慌てて両手に変更。
急に『がんばっている女の子感』を出し始める。
ここも問題なく陣を起動して、残りは後一つだ。
「……ここね」
レンは魔力を注ぐタイプの魔法陣にたどり着き、結晶に触れる。
すると輝きが広がり、魔力が一気に注入されていく。
やはりここにレンが来たのは正解のようだ。しかし。
「ッ!?」
三つの装置の最後には、迫る影あり。
ギャングオーカは、体長5メートルほどのシャチの魔物だ。
「これ、手を離したらダメなんでしょう……?」
魔力の注入は、手を離せばゆっくり減少する。
そこに魔物が背後から迫るのは、やっかいな展開という他ない。
水中で有効な魔法攻撃は【魔力剣】か一部氷結魔法だが、片手を突いた状態で後方に向けて撃つのは難しい。
レンが難しい戦いを覚悟した、その瞬間。
「【ロックアーム】!」
見張り役をしていた迷子ちゃんは、ギャングオーカの接近に気づいていた。
レンのもとに一直線に潜ってくると、錬金術を発動。
すると足元の石材が変形し、ガントレットをつけた巨大な腕が誕生。
迫るギャングオーカに、そのまま叩きつけた。
この隙に迷子ちゃんは敵に接近し、取り出したナイフを突き刺す。
すると『痺れ』の状態異常を起こし、敵を行動不能に陥らせた。
「もう少し……もう少しっ!」
見事な時間稼ぎ、レンはこの隙に魔力を注ぎ続ける。
ようやく身体の自由を取り戻したギャングオーカは、大きく一回転。
その見事な動きで迷子ちゃんをかわし、あらためてレンに突撃を仕掛ける。
「……きたっ! 魔力注入完了! あとはこいつを片付けるだけっ!」
顔を上げると、そこにはすでに目前に迫ったシャチの牙。
「【魔力剣】!」
レンの突き出した魔力剣が、ギリギリでキングオーカに突き刺さる。
HPゲージが跳び、粒子になって消えていく。
「あとは【呼吸ゲージ】だけっ!」
レンは迷子ちゃんの手を取り海面へ。
「間に合った!」
そのまま迷子ちゃんの手を取って船のガレキに上がり、笑い合うレンと迷子ちゃん。
「助かったわ」
「間に合ってよかったです」
続けてメイやまもり、ツバメも戻ってきた。
すると三つの装置が起動し、海面に輝きが生まれる。
そして――――。
「これだけでは、終わらないみたいね」
大きく揺れ出した海面に、五人は自然と目を合わせた。
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