881.リベンジ戦
起動した、ミューダス三角海域の転移装置。
三本の輝きが海面を照らす中、装置のものとは別の揺れ、そして音。
凪いでいた海面が大きく浮き上がり、波を起こす。
その中から出て来たのは――。
「ミューダスのヌシですか……!」
巨大なウミヘビは、以前クエストでメイたちの船を沈めた個体だ。
転送装置を使い、海底遺跡へ向かうには、この魔物を倒すことが必要になるようだ。
その大きな頭部をもたげて、こちらを威嚇したヌシ。
大きな咆哮を上げると、ひっくり返った船の上に立ったメイたち目がけて、尾を振り上げた。
「くるっ!」
メイはまもりの手を取り、即座に全員で二つ隣の船に移動。
叩きつけられた尾が、メイたちのいた船を叩き割る。
高々と舞い上がった大量の水飛沫が陽光に輝く中、始まる戦い。
再び上がる尾。
メイたちはそのまま船から船へ跳び、迫る尾を回避する。
「うわっと!」
メイたちがかわせば、ヌシは尾を上げる。
そして尾を打ち付けられた船は、砕け散って宙を舞う。
怒涛の【尾撃】攻勢に、五人は必死に移動を続ける。
そんな中、反撃に出るのはレン。
「【魔砲術】【誘導弾】【フレアストライク】!」
【低空高速飛行】と【旋回飛行】の組み合わせで距離を取ったレンは、沈没船の舳先に立ち、魔法を放った。
炎砲弾は直撃したが、ダメージは微小。
「上級魔法で5%って、なかなか大変そうね」
するとヌシは首を後方に下げ、口を開く。
反撃は【水塊連射砲】
一個が直径1メートルを超える水塊球が、連続で吐き出される。
「【バンビステップ】!」
「【加速】!」
「【スリップ・フット】!」
メイとツバメ、そして迷子ちゃんはこの攻撃をしっかりとフットワークで回避。
「【天雲の盾】!」
まもりは盾防御で、しっかりとこれを弾く。
その威力は高く、一発で二歩ほど後退。
状況次第では【不動】も必要になりそうだ。
五連発の水塊弾をやり過ごしたメイたちは、反撃の隙をうかがい距離を詰めていく。
しかしここでミューダスのヌシは、三角海域の中央へ移動。
大きく尾を払うように一回転。
「「「「ッ!!」」」」
巻き起こった波は、波紋の形で迫る。
左右への回避では、どうにもならない攻撃だ。
「【ラビットジャンプ】!」
「【跳躍】!」
「【浮遊】!」
「【不動】【天雲の盾】!」
これに四人はしっかり対応。
「【スチームブーツ】!」
迷子ちゃんも、踵から吹き出す蒸気で空中へ。
波にさらわれる展開を回避するが、やや前方への跳躍になってしまったことで、着地した際に船底部の丸みに足を滑らせた。
「きゃあっ」
飛沫を上げて落水。
これに目を付けたのは、ミューダスのヌシ。
迷子ちゃん目がけて一気に距離を詰めていく。
【喰らいつき潜水】は、プレイヤーにダメージを与えつつ海中へ引きずり込み、『呼吸ゲージ』を奪って死に戻らせるという恐ろしいスキル。
その牙で、迷子ちゃんに喰らいつきにいく。
「メイ、お願いっ!」
「りょうかいですっ! 【バンビステップ】!」
しかし迷子ちゃん個人を狙ったことで、メイたちに余裕が生まれた。
ヌシの牙が、今まさに身体に触れようとしたその瞬間。
「【ターザンロープ】!」
迷子ちゃんが射線から消え去る。
メイは見事、迷子ちゃんの引き上げに成功。
「【魔砲術】【フレアバースト】!」
すかさず放ったレンの爆炎が、ヌシの側部を弾いて炎を上げる。
「あ、ありがとうございますっ!」
「いえいえーっ!」
ピンチを一転して好機に変えたメイたちは、『釣り』の要領でダメージを奪うことに成功。
しかしミューダスのヌシは爆炎に弾かれ落ちた後、すぐさま攻撃に転じる。
天を仰ぎ咆哮を上げると、放たれるは全方位への水散弾。
直径15センチほどの水弾がまとめて、360度に放たれる。
「【天雲の盾】!」
この攻撃をまもりは盾でしっかり防御して、同時にレンを守る。
一方迷子ちゃんは傾いたマストの背後に隠れることで、物理的な盾を作ることに成功。
メイとツバメは転覆船の上、全力でこれをかわす。
計五回の水散弾をどうにかやり過ごした五人だが、このスキルは敵を削りつつ『守りの姿勢』にさせることが可能。
動き出したヌシの狙いは、ツバメだ。
「【加速】! 【跳躍】! 【加速】……【加速】っ!」
駆けるツバメは船の上から船の上へ、【加速】と通常ダッシュ、【跳躍】と通常ジャンプを織り交ぜながら駆ける。
船の長さや船間の距離がそれぞれ違うため、【加速】と【跳躍】の間に通常移動を挟まなくてはならないのが、かなり難しい。
ヌシは続く転覆船の道をツバメの右から左、左から右へと、ジグザグの【飛び掛かり突撃】で追いかけていく。
「当たれば海中落下、そこからの【喰らいつき潜水】が確定ですか……っ!」
メイたちとも距離ができてしまい、もはや孤立と言っていいこの状況。
さらにその視線に、瓦礫の道の行き止まりが見えた。
追い込まれたツバメは、そのまま道の端まで疾走。
「【加速】【リブースト】【反転】!」
おあつらえ向きの長い船に飛び乗ったところで、急加速。
たどり着いた転覆船の先で、腹をくくったかのように振り返る。
狙いは【跳躍】【エアリアル】の二段ジャンプによる、【飛び掛かり】の回避だ。
「ッ!?」
そして、その光景に思わず目を奪われた。
ミューダスのヌシが選んだ攻撃は、【ハイジャンプ】からの【体当たり】
巨大なウミヘビが飛沫を上げ、ミューダスの空を舞う光景は圧巻。
VRMMORPGでは稀にある、見た瞬間『あ、これダメなやつ』と、死に戻りを受け入れてしまうような圧倒的状況だ。
しかしツバメは、即座に思考を切り替える。
その手の武器を、【村雨】に持ち替えた。
そして大きな弧を描いて落ちてくるミューダスのヌシをギリギリまで引き付けて、刀を突き上げる。
「――――【水月】」
「「「「ッ!?」」」」
飛び上がったミューダスのヌシに、真下から対抗しにいったツバメ。
突き出した【村雨】は一瞬で水刃を伸ばし、なんと敵の巨体を貫いた。
高々と天を突いた水の刃は、一瞬時間が止まったかのように制止。
そのまま弾けて、飛沫となって消えていく。
「すっごーい!」
「何よそれ! カッコいいじゃない!」
「お、おどろきました」
「さすがツバメさんです!」
舞い散る飛沫が輝く。
ヌシの巨体と、小さなツバメの一撃はメイたちの視線を奪ってみせた。
「……あ」
しかしミューダスのヌシの、落下自体は止まらない。
ツバメはそのまま、巨体に押し込まれる形で海中へ。
「ツバメちゃーん!」
「……ぷはっ」
衝突ゆえに、ダメージはほどほど。
思わぬオチに、ツバメは「無事です」と手を上げつつ苦笑い。
しかし水系スキルの効果を大きく上昇させる、【村雨】の一撃は強烈。
そのまま海中に落ちたミューダスのヌシは、HPを半分近くにまで減少させた。
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