813.新たな帝国の始まり
ルーデウス敗北の事実は、兵士たちによってすぐさま伝達された。
帝国の大黒柱を失った兵たちは最悪の事態に戦意を喪失し、そこへレジスタンス側に増援が到着。
危険兵器を求めて侵略を続けていた帝国の政変を成すなら今しかないと、隣国が第二陣を送り込んだ結果だ。
そして贅の限りを尽くしてきた貴族たちに戦うほどの気力はなく、城の陥落はあっという間だった。
「苦しい時代を共に生き抜いた者たちよ、悪しき王はもういない」
呆然とする兵たちの防衛を突破し、城の前に集まったレジスタンスたち。
パーティルームの前に当たる三階バルコニーからは、ちょうど一階に集まった者たちの姿が一望できる。
そこには駆けつけた旧市街民や、この戦いを見に来たプレイヤーたちも集まっていた。
大型クエストのエンディング、そしてメイたちを一目見ようとやって来ている者は多く、とても賑やかだ。
「そして新たな王となるのは、皆のために最後まで皇帝に立ち向かい続けてくれた、第二王子ルティアだ」
レジスタンスのリーダーであるスタンが紹介すると、ルティアは前に出てヒザを突く。
そしてスタンが与える剣をルティアが受けることで、『民のための王』という意思を表示。
第二王子ルティアの人望は厚く、他国から加勢に来た兵士たちも新たな国の始まりを見届ける中、無事王権の授与は完了。
スタンたちレジスタンスの面々が背後に控えると、代わって新皇帝ルティアが語り出した。
「腐敗したこの国を変えるのは、容易ではなかった。いくつもの難題を乗り越える必要があったからだ。何か一つ失敗するだけで敗北してしまう可能性も高かった。そうなれば我々は、更なる苦境に追い込まれていただろう。皆、よく戦ってくれた」
その言葉に、歓声を上げる旧市街民たち。
「そしてこの奇跡を成すために、大きな活躍をしてくれた者たちがいる」
そう言ってルティアは、振り返った。
「我らを救ってくれた英雄たちだ! この者たちの剣が悪しきを断ち切り、盾が弱気をまもり、炎が因習を焼き尽くした!」
「「「うおおおおおおおお――――っ!!」」」
旧市街民から、観客たちから上がる盛大な歓声。
「やっぱりメイさんは華があるぽよね!」
「使徒長……っ!」
「また最後まで、メイちゃんたちの戦いを見届けてしまったか」
「掲示板でマウントが始まる確率は、100%ですね」
豪華なオーケストラの中での戦いは早くも話題になっており、メイたちを見上げる掲示板組も楽しそうだ。
「ありがとう。強大な帝国に風穴を開けた君たちの活躍によって、本日をもって我らは……新たな歴史を刻み始める!」
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
奇しくも建国祭は、新たな歴史の始まりとなった。
「わあっ!」
「これはすごいわね!」
「ちょっとびっくりしました」
「は、はひっ!」
一斉に舞い散る紙吹雪と共に、鳴り出す盛大な音楽。
希望を感じさせる明るいメロディに、わき立つ国民たち。
「すげー……本当に英雄だな」
「エンディングでああいう場所に立つって、どんな感じなんだろう」
向けられる羨望の中、レンはわずかに笑っていた。
「なんだかこの感じだと、野生の王国の戴冠式みたいになっちゃうわね」
まだ原状回復が行われていない王城一帯は、完全に密林の国と化している。
特に世界樹の分枝は、それだけで城をまるまる陰で覆ってしまうしまうほど大きい。
メイが【王者のマント】に【大地の石斧】を持っていたら、誰もが「あ、この子が王様なんだな」と思うレベルだ。
「てへへ、少しやり過ぎちゃったかも」
「どこが決戦の舞台になってもいいよう、お城付近にも一応種はまいておきましたが……完全に緑の帝国ですね」
「わ、私なんかがここに立っていていいのでしょうか……」
そんな中まもりは盾に隠れながら、しきりに辺りをキョロキョロ。
「お前ごときがメイちゃんと一緒にエンディングなんて!」と糾弾されるのではないかと、なぜかどの強欲貴族NPCよりドギマギしている。
「メイちゃーん!」
「はーいっ!」
歓声を上げる観客たちに、手を大きく振って応えるメイ。
そんな四人を前にして、ルティアはつぶやく。
「パーティールームに飾られていた皇帝の肖像画は、我らが英雄の姿に変えてもいいかもしれないな――」
「そそそ【装備変更】ッ!!」
「マズいわ! このままじゃまたっ!」
聞こえたそんな言葉に、メイは大慌てで【装備変更】を発動。
今回は特に装備は変わっていないことを忘れて同じスキルを何度も連発し、「か、かわらないよーっ!」と頭を抱えてしまう。
一方のレンはとにかく黒い衣装を変えようと大慌てで選んだ結果、先日のビール祭りでもらったカラフルなメイド服っぽい【ディアンドル】に変更。
まもりは今回も二枚の盾の背後に隠れて、「生意気」だと言われない対策に入る。
そしてツバメは、頭にそっとヒヨコを乗せてダブルピース。
「……いや、これはこれで調子に乗ったおふざけパーティみたいになっちゃってるわね……」
そんな自省の一言に、あらためて自分たちの姿の見直した四人は、楽しそうに笑い合うのだった。
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