809.王と王の戦い
「痺れるなぁ……!」
「最高ぽよっ!」
野外コンサート会場の客席部分に集まったプレイヤーたちは、その戦いぶりに興奮する。
凄まじい強さを誇る皇帝と、これまで幾度も奇跡を起こしてきたパーティ。
星屑でも例を見ない『勇壮な音楽の中』での戦いは、どうしたって気分が盛り上がる。
「【瞬動】――――アイン! 【葬剣】!」
「ッ!!」
高速移動から、飛び道具と思われていたスキルの近接使用。
迫る斬撃をメイは横っ飛びでかわす。
「ツヴァイ! 【葬剣】!」
しかし隙消しの高速移動で切り返し、再びメイに接近斬撃。
「【アクロバット】!」
これをしゃがんだ状態からの側方宙返りで回避。
「ドライ! 【葬剣】!」
さらに三度目の剣撃で隙を消しつつ攻撃。
「【ラビットジャンプ】!」
これは跳ばされる形での回避となり、メイは隙を晒すことになった。
「【加速】」
「止まれ、【闇閃】」
「ッ!!」
助けに向かうツバメの足を、放つ超高速の魔力刃でけん制。
その速度は、ツバメだからこそ肩を斬る程度で済んだというレベルだ。
「高速【フレアアロー】!」
ここでレンは隙を突き、速い魔法で攻撃を仕掛ける。
「【斬魔剣】!」
すると魔法攻撃を剣で斬り払ったルーデウスは、今度は一転その狙いをレンに移した。
「【命ずる】――――喰い尽くせ【大獅子】!」
四角い魔法陣の天井から落ちてくるのは、化物のごとき大獅子。
その牙をむき出しにして、レンに喰らいつく。
「【加速】【リブースト】!」
これをツバメが、スレスレで抱きかかえて回避。
レンは牙がかすめて小ダメージを受けたが、問題なし。
「助かったわ!」
だがルーデウスは止まらない。
「【命ずる】――――焼き尽くせ【赤竜】!」
「今度はドラゴンッ!?」
「潰せ【白竜】!」
「しかも、二頭同時とは……っ!」
レンとツバメが驚く中、壁の魔法陣から出てきた二頭の紅白ドラゴンが攻撃体勢に入る。
赤竜はブレス、白竜は尾の振り払いだ。
「まもりちゃん!」
「はいっ」
即座に動く二人。
メイは【王者のマント】で炎を払い、まもりは【不動】【地壁の盾】で尾を受け止める。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
「【斬魔剣】!」
ドラゴンの作った隙を突こうと飛び込んできていたルーデウスを、レンが魔法で留める。
「【稲妻】!」
そしてその時にはすでに、目前まで迫っていたツバメの【村雨】による一撃が決まっていた。
「おおっ! 完璧な連携だ!」
「防御から攻撃まで、完璧です!」
ルーデウスの強烈なコンビネーションを止めた上での反撃。
その見事さに、マウント氏と計算君が跳び上がりながら喜ぶ。
やはりオーケストラは、大きく戦いを盛り上げているようだ。
そして皇帝ルーデウスのHPは、早くも残り4割強ほど。
その表情にわずかないら立ちが混じり出し、怒りはそのままツバメに返される。
「【瞬動】」
斬り抜けから刀を収めたツバメに、ルーデウスは距離を詰める。そして。
「【破山】!」
その手には槍。
先ほどまもりに向けられたそのスキルを前にして、ツバメは側方へのステップで回避した。しかし。
「【剛旋槍】!」
「ッ!?」
先ほどとは別のスキルであることに、虚を突かれるツバメ。
前回は突きから続く二撃目に、波動砲のような魔力の開放があった。
だが今回は、豪快に魔力の斬撃を起こす振り払いだ。
「く、うっ!」
ツバメは慌てて跳ぼうとするが、わずかに遅く足に喰らいダメージ。
浅い入り方にも関わらず、派手に地を転がる。
「【命ずる】! つかめ【クラーケン】!」
追撃は、箱型の魔法陣の足元から。
「「「「ッ!?」」」」
現れたのは、この空間を埋めるほどの巨体を持つクラーケン。
その長い足が一斉に、メイたちをつかみにくる。
「【加速】【リブースト】【跳躍】【エアリアル】!」
体勢を立て直したばかりのツバメは、目の前から迫る三本の触手を足で引きつけ、二段ジャンプで回避する。
「【低空高速飛行】【旋回飛行】!」
レンはその隙に速い低空移動で、隙間を抜けていく。
しかし回り込むように迫りくる『つかみ』に、対処法は無し。
捕獲を覚悟する。
「レンちゃん! 【バンビステップ】【ラビットジャンプ】【アクロバット】――!」
この危機を、メイが抱きかかえて跳躍することで難を得た。
だがこの状況では、まもりが動けない。
「レンちゃん!」
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
それでもレンはメイに担がれたまま杖を伸ばして、炎砲弾を飛ばす。
無理な体勢からの魔法でも【誘導弾】がしっかり狙いをつけ、見事に触手を焼き払った。
「まもりさんっ!」
しかし足元、背後から今まさに伸び上がった触手まではカバーし切れなかった。
クラーケンの触手はまもりの足をつかんで、その場に縫い付ける。
「光栄に思うがいい。我が奥義で貴様を葬ってやろう」
そして聞こえる、絶望的な言葉。
【瞬動】で助走をつけたルーデウスは、笑みと共に2メートルほど跳躍。
手にした剣を掲げた。
「――――【雷鳥乱舞】」
その静かな始まりが、逆に嵐の前の静けさのようで寒気が走る。
高速の飛び掛かりから放たれるのは、剣撃の乱舞だ。
そんな中まもりは、当然大慌てしながら盾を構えた。
「ば、ば、【爆火盾】ーっ!!」
聞こえた乱舞という言葉に選んだスキルは、攻撃を引き付けベストのタイミングで防御することが必要な、難関のカウンター防御スキル。
放つ剣舞は最初の跳躍から四連。
着地して左右に二連。
再跳躍から四連。
着地から振り降ろし振り上げの二連。
三度目の跳躍から八連。
そして最後に斜めの振り降ろしから、遅れて大きな剣撃がもう一発。
3回の飛び掛かりから放たれる合計22連撃の乱舞は、各攻撃のタイミングが違うゆえに回避すら無謀なレベル。しかし。
盾と剣がぶつかり合い、激しく飛び散る火花。
「おおっ!」
まもりがこれを受ける度に上がる歓声。
「おおおおっ!」
それはどんどん大きくなる。
「おおおおおおおお――――っ!!」
そして最後の跳躍剣舞から、着地後の二発を全て受けたところで観客は全員立ち上がっていた。
見た瞬間誰もが、『とんでもないことをした』と理解する完全防御。
「あと、お願いします……っ!」
まもりが残す言葉の直後、【爆火盾】が炸裂。
「な……にッ!!」
カウンターの凝縮炎を喰らい、吹き飛ぶルーデウス。
「おまかせくださいっ! 【装備変更】っ!」
メイは応えて装備を【狼耳】に変更。
【群れ狩り】を発動し、右手を突き上げる。
「それではご一緒に! ――――よろしくお願いいたしますっ!」
召喚魔法と友達バングルによる同時召喚は、メイの左右に魔法陣を展開。
「……え?」
「二体……同時!?」
異常事態に、観客たちが慌て出す。
二つの魔法陣からせり上がってくるのは、揃いの鎧を身にまとった近衛兵クマ。
白黒の巨大クマは、メイ王を前に敬礼して同時に走り出す。
先行する白クマは、華麗な走りから跳躍。
豪華な剣を高く掲げ、そのまま放り出して【ホワイトベア・クロー】を叩き込む。
まもりの一撃から起き上がったばかりのところに、追撃を喰らい転がる皇帝。
すると白クマの頭上を跳び越える形で、二体目のクマがハルバードを手に登場。
全力で振り上げた斧槍を放り投げ、続けざまに【グレート・ベアクロー】を叩き込んだ。
「「「す、すげえ――――っ!」」」
その迫力に、雄叫びをあげる観客たち。
ルーデウスは派手に地面を転がり、不様に倒れ伏す。
一方白黒クマはヒザを突き、メイ王に一礼して去っていく。
「……でも、残った!」
白黒二頭の巨大クマが叩き込んだ一撃。
二重召喚という恐ろしい事態に、唖然としていた観客が気づく。
ルーデウスは運良く、HPドット残しという状態で生き残っていた。
そしてHPが一定以下になったルーデウスは、今回も自身にダメージを与えた対象への反撃に入る。
「やってくれたな、反逆者共よ」
怒りに燃える目でメイをにらみ、【瞬動】で一気に距離を詰めてくる。
「受けてみろ――――【極鳥乱舞】」
迫るルーデウスの手に合ったのは剣でなく、槍。
「もう一つ乱舞があったのか!」
その火力はもう、疑うまでもない。
乱舞スキルの二つ持ちということに、驚愕する観客たち。しかし。
放たれる払いからの高速八連突きを、メイは柔らかなヒザの屈伸と上半身の身体の傾けでかわす。
続く往復の払いをしゃがみでかわし、振り上げをサイドステップで回避。
再び迫る払いをもう一度しゃがんで避け、そこから続く突きを【アクロバット】で後方へ飛んで回避。
槍の乱舞はどうしてもリーチが長い分剣より遅く、直後の12連突きも、あくまで範囲は点だ。
メイはこれを全弾見事に回避する。だが。
「これで……終わりだァァァァァ――――ッ!!」
「わあっ!?」
しかし叫びと共に下がりながら放った一回転の払いは、攻撃ではなく『事前モーション』
巻き込むような形で吹き荒れる風に、メイはあおられ体勢を崩した。
最後の一撃は、槍の投擲。
大きく振りかぶる皇帝の周りを、バリバリと音を鳴らして弾ける雷光。
爆発音を鳴り響かせて、放たれる槍の一撃。
体勢を崩したままのメイ。
見学者の誰もが、その流れに息を飲む。
だがメイは、最後の投擲を予想していた。
そして、その場にいる全員の予想を裏切っていく。
轟音を立てながら飛来する槍を、身体をひねる形で回避して――――。
「……おい。ウソだろ!?」
「そんなこと、本当にできるぽよっ!?」
ありえない事態に、観客たちが自分の目を疑う。
回避したはずのメイが、体勢を崩して大きく三歩ほど下がった。
その理由はなんと――。
「投げられた必殺の槍をつかむなんてマネ、初めて見たぞ!!」
思わず叫んでしまう。
メイは回避しながらも、通り過ぎていく槍の長い柄を左手でつかんでいる。
その強力過ぎる【腕力】は、攻撃判定を持たない柄の部分をしっかりつかんで止めていた。
体勢はさすがに大きく崩されたが、すぐに持ち直したメイはそのまま槍をバトンの様にくるっと回して持ち直すと――。
「【ゴリラアーム】! それええええええ――――っ!!」
「「「ッ!?」」」
全力の投擲はエフェクトこそないものの、その速度は異常に速い。
豪速で飛んだ槍はそのまま、投げモーション後のルーデウスの肩に直撃して容赦なく弾き飛ばす。
「ぐああああああああ――――っ!!」
砂煙を上げながら石畳の上をバウンドしたルーデウスは片手を突き、肩で息をする。
他者の武器ということで、ダメージの計算はオブジェクト扱いだが、残りわずかなHPを削るには十分。
四角の魔法陣が消え、ヒザをついた皇帝ルーデウスは、静かに顔を上げる――――。
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