764.帝国に向かいます!
「『ていこく』ってどんなところなのかなぁ」
フローリスの教会を出た四人は、街を襲い『兵器』を奪いに来た兵士たちが帝国の者だという情報を得た。
「ほ、『星屑』で帝国って言えば……ガルデラ帝国のことを指します」
控えめに告げるまもり。
「まだ行ったことはないけど、まさにファンタジー世界の帝国って感じだった記憶があるわ」
「は、はい。要塞のような街に大きなお城がありますよ」
「大図書館帰りを狙ってきたアサシンも、帝国の者なのでしょうか」
「アサシンとは別じゃない? アサシンは黒づくめで、黒仮面と兵士たちは濃い灰色に赤だったし。でも、確認はできるかもね」
「そうですね」
「せっかくだし、次の行き先はガルデラ帝国にしてみる? フローリスの『兵器』は何か、大きな物語につながってる気がするし」
「一体あの『兵器』は何だったのか、そして帝国は何を狙うのか……そんな物語が隠れていそうですね」
「おおーっ……!」
これにはメイも、ワクワクで尻尾がブンブンし始める。
「まもりはどう?」
「興味あります……!」
そもそもフローリスの崩壊は、深い池の底から『兵器』を見つけてしまうところがスタート。
謎の物体を帝国の密偵たちと奪い合い、敗北することで終わる形だ。
「元凶になった帝国にどんな裏があるのか、見られるかどうかは分からないけど、観光気分でもいいと思うわ」
「い、いいのでしょうか。戦わないとなると私、ただの置物なんですが……」
「まもりちゃんも一緒に遊びにいきましょう! それだけで楽しいよっ!」
「は、はひっ」
さっそく楽しそうに、グイグイと背中を押すメイ。
四人はこうして、マップ北部の大国の一つであるガルデラ帝国を目指すことにした。
フローリスからでもポータルの乗り継ぎは少なく済む、大きな街。
たどり着くのもすぐだ。
「おおおおーっ!」
その風景に思わず声を上げる。
ガルデラ帝国はオレンジのレンガを積んだ建物が非常に多く、全体的に橙色の雰囲気がある。
飾り気が少ないことからどこか、質実剛健とした雰囲気だ。
また高い壁が街を覆っていることで、要塞都市としての一面も感じられる。
「また全然風景が違うねぇ……」
さっそく尻尾をブンブンさせながら、辺りを駆け回るメイ。
「前に行ったウェーデンに距離が割と近いけど、雰囲気は結構違うわね……」
ところどころに立つ兵士たちの姿は、わずかに物々しさも醸し出している。
「フローリスに来た兵士とは違うみたいだけど……まもり?」
「ひゃいっ!」
「どうしたの、さっきから忙しないけど」
「え、ええと、その、新しい街なのでつい……」
「まもりちゃん、さっきからお店が気になってるの?」
メイの言葉に、「は、はひ」とうなずくまもり。
その視線の先には、飲食店。
「漫画であれば、お腹の音で返事をするシーンですね」
ツバメの言葉に、笑うメイとレン。
「そういうことなら、ガルデラ帝国は飲食システム導入でどんなものを出しているのか確かめに行ってみましょうか!」
「いいと思いますっ!」
「と、とてもよいと思いますっ!」
まもりはそう言って赤くなった顔を慌てて盾で隠すが、足は止まるどころかむしろ店に急いでいる。
先頭のメイを追い抜こうかという勢いだ。
レンガ造りの店のドアは、四枚の板を並べたものを鉄製の枠で囲った、これまた頑丈そうなもの。
「レンちゃんっ!」
「レンさん!」
すぐさまレンの背後に隠れるメイとツバメ。
それを見てまもりは、一番背後についた。
「盾のまもりが一番後列になるの?」
苦笑いしながら、ドアを開くレン。
するとそこは、レンガ造りの壁に並んだ固そうな木材製のテーブルとイス、そして横向きの樽が並んだ大衆向けのバーといった雰囲気。
「おおー、なんだかいい雰囲気だねぇ」
メイはさっそく近くの席に着く。
見れば店員の若い女性は、ディアンドルと呼ばれる『アルプスの女性が普段着にしていそうな民族衣装』を着ている。
口元のゆるみが止まらないまもりが、さっそくメニューを見てみると――。
「じゃがいもとソ-セージ料理がほとんどです!」
そう言って、満面の笑みを見せた。
「大体どのあたりの国が想定されているか、見えてきます」
まずは基本のフライドポテト。
続いて小ぶりなジャガイモを、玉ねぎやベーコンと一緒に炒めたジャーマンポテト。
そして種類の多いソーセージ盛り。
そうなれば必然的に、飲み物がビールということになるが――。
そこは念のため、見た目は完璧だけど中身は子供向けのもの。
だが樽に付いた『栓を回すとビールが出てくる』方式は、やはりワクワクする。
メイは「わあーっ」と興味津々だ。
「まもり、別に乾杯を待たなくてもいいわよ?」
「ふえっ!? い、いえ……それはさすがにっ」
最初に来たのはソーセージ盛り。
目を輝かせながら、両手にフォークでテーブルをカンカンしながら待っているまもりに声をかけると、慌てて首を振る。
そんな姿に笑っていると、続々届く陶器製のビアマグ。
さっそく手に取り、掲げる。
「それではっ……楽しい旅にかんぱーい!」
メイの音頭で始まる、『星屑』ご当地料理タイム。
「「「かんぱーい!」」」
「まもりちゃんは、ご飯食べに行くのが好きなの?」
「はひっ! 飲食システムが導入されてからは、色々!」
「そうなのね。現実でも色々食べに行ったりしてるの?」
「げ、現実の世界の飲食店は、行きたくても……」
「それもそうね。まあ女子一人だとなかなか――」
「私みたいな日陰者が、居ていい場所ではないので……」
「そういう理由なの?」
「かつて私も、駅近くにできた少しおしゃれなお店に行ったことがあるのですが、店内に入っても、思い切って席に着いても店員さんが来てくれなかったことがありました」
「呼んではみたんでしょう?」
「すぐ行きます、と言ったまま忘れられていたようです」
「「「…………」」」
「ごく稀にそういうこともあるかな……?」みたいな事件を、普通に話すツバメに皆驚く。
「レンさんは、どんなお店でも似合いそうですね」
「着ていく服がないけどね」
制服か黒レース。
そこから黒レースを抜いたのが、今のレンが所有する現実世界装備ということになる。
「……メ、メイは?」
「実は最近、とてもおしゃれなお店に行ってしまいました!」
「あらそうなの? どこ?」
「最近駅前にできた、おしゃれな紙のカップで飲めるコーヒー屋さんですっ!」
「それ……緑色のロゴのやつ?」
「うんっ!」
青春の長い時間を『村の防衛』に投じたメイ、先日初めて『チェーン系コーヒー店』に行く。
「すっごく注文が難しそうでね、ドキドキしちゃったよー」
「あのお店に踏み込むとは、つわものですね」
「わ、私もそう思いますっ」
「……やっぱり私たちは、星屑の世界で楽しむのが正解だわ」
熱いフライドポテトに、まもりが幸せそうに「はふはふ」している姿を見て確信。
そんなレンの結論に再び四人は、ビアマグを傾けるのだった。
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