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736.封印指定

「下道を選んだ場合、重装のガーゴイルもいるのね」

「ちょっとカッコいいデザインですね」


【隠密】【忍び足】のツバメが先行し、レンが【浮遊】で続く。

 高さがまちまちの書架の上道にはガーゴイル。

 しかし【致命の葬刃】によってツバメの『見つかっていない』時の火力が向上していることで、進行はとてもスムーズだ。

 敵が運良く生き残っても――。


「【低空高速飛行】【魔力剣】!」


 続くレンのフォローで、音もなくガーゴイルが粒子に変わる。


「また少し先にもいますね」


 新たなガーゴイルを見つけたツバメは、ここでも早い掃討を狙って動き出す。

 こちらを向いていない今が、打倒のチャンスだ。


「……ん?」


 一方、少し視線を先に向けていたレンは足を止める。

 そこにはプリズムのように、七色の薄い輝きが見える。

 やや異質だが、光の入り加減ではあってもおかしくない現象。

 だが明かりが篝火しかないこの場所に、七色の光が見えるのはおかしい。

 そう、それは『罠』だ。


「……待って」


 レンがつぶやくと、先を行くツバメが振り返る。


「固定ガーゴイルの視線がこっちに向いていないからって急ぐと、あれを踏んでガーゴイルたちが気づく仕掛けかしら」


 その予想は正解だ。

 光が散り、付近のガーゴイルたちが気づく仕掛け。

 そして一方的に倒せるはずだった手前の魔導士型に範囲攻撃をされ、下手をすれば落下という流れだ。

 もちろん下には、トドメを刺しに来る武装ガーゴイルが設置されている。


「……【罠解除】」


 ツバメがスキルを起動すると、見事に偽装型の魔法陣が分解して消えた。


「【加速】【アサシンピアス】」


 こうして仕掛けとガーゴイルの配置を使った罠も、見事に突破。

 再び書架の上を上がって下ってを数回繰り返したところで、いよいよ目的の書架に近づいてきた。


「……レンさん」

「良くない状況みたいね」


 しかし目的地が近づいてくれば、それに合わせて警備も厳しくなる。

 レンたちの進んだ『上道』は、なかなか厳しいガーゴイルの配置がされている。

【隠密】でどれを倒しに向かっても、姿が戻った時点で他の個体に気づかれてしまうような状況だ。

 誰かがオトリになるか、パーティを分けて各個撃破が本来のやり方なのだろう。


「ここは私に任せて」


 しかしこちらは二人。

 レンはそう言って、一番奥にいる弓ガーゴイルに杖を向ける。


「手前のガーゴイルたちの視線が、私たちと弓ガーゴイルを結んだ線から離れたら教えて」

「分かりました」


 静かにうなずき、ツバメは各ガーゴイルの『視線』の方向を確認。


「今です」

「【超高速魔法】【誘導弾】【魔砲術】【フリーズボルト】」


 狙いのガーゴイル以外の視線がこちらにないことを確認した瞬間、放つ魔法。

 目にも止まらぬその速度。

 閃光のように暗い書架の間を駆け抜けた氷弾が、そのまま弓ガーゴイルに直撃。

 書架から転がり落ちる弓ガーゴイルの出した音に、周りのガーゴイルたちが反応した。


「今のうちよ、いきましょう!」

「はいっ」


 一斉にガーゴイルたちが同じ方向に意識を集中させたところで、レンたちは移動を開始。

『X23AB』の書架はやや低め。

 ツバメは近くの書架を経由して、レンは【浮遊】で降りていく。

 緊張感の高いマップだが、レンとツバメは見事に対策してみせた。


「ここが『X23AB』に当たるけど……」


 低めといっても、二階建ての家ほどの高さがある大きな本棚。

 よく見ると、一冊だけ背の色が違う本がある。


「まあ、あれでしょうね【浮遊】」


 レンはふわりと浮き、高いところにある色違いの本を抜く。

 すると詰め込まれていた本が全て手前に落ちる。


「っ!?」


 慌てて下がるツバメ。

 自分に向けて本が雪崩れてくるような状況に驚くも、落ちた本はそのまま煙のように消え去った。

 残った書架の底面には、下り階段。

 二人はうなずき合い、そのまま階段を降る。

 そこには、隠された小さな書庫があった。


「少し、他の書架とは雰囲気が違うわね」

「本棚、本自体に封印がかかっているのでしょうか」


 書架の上部を飾る木版画。

 そこに埋め込まれた宝玉が、バリアのようなものを張っている。

 そして並ぶ本は不思議なことに、羊皮紙に革の表紙ではなく、現実世界のハードカバーに近い。

 使われている紙も上質だ。

 それでいて、使われている文字は読めるものではない。


「遺跡時代の本なのかしら」

「封印された本、なんだか怖さがありますね」

「知ってはいけないことを知っちゃいそうな感じがあるわね」

「知ったが最後というやつですね」


 二人は「分かる分かる」と、笑い合う。


「持って行くのはこれね。【毒素大全】」


 レンが手を伸ばすと、視界に現れる文字。


『――――毒素大全の封印を解きますか?』


「なるほど、このパスでは二冊までなのね」


 様々な本が並ぶ隠し部屋だが、毒に関するものはその一冊のみ。

 扉は閉められたまま。

 封印状態ではこの部屋を出られないし、本を開くこともできない。

 レンは『毒素大全』の封印を解き、入手した。


「あと一冊、何か面白そうなものはあるかしら……」

「レンさん、これは」


 ツバメが指さしたのは、書庫の端に置かれた書架。

 そこにも封印が施されているが、本自体の作りは『星屑』の世界でよく見るものと同じだ。


「これ、スキルブックじゃない……!」

「そのようです」

「一応、各スキル名を確認しておきましょうか」


 レンとツバメは、棚に収まっているスキルブックの内容を確認していく。

 その内容はランダムらしく、レンたちには使い道のないものも多い。


「情報サイトとかでも確認されてない、初見のスキルばっかりじゃない。できることなら全部持って出たいわね」

「本当ですね。ワクワクします」


 レンとツバメ、気になるタイトルとスキルブックを天秤にかけて悩む。


「スキルを選ぶなら、これでしょうか」

「そうね。他にも『兵器書』だとか『前文明史』辺りの情報書は気になるけど……面白そうなものを見つけちゃったし、今回はスキルブックにしておきましょう」

「これで目的は達成しました。あとはリャオルさんのところに戻るだけですか」

「ええ、帰りも気合を入れて進みましょう。メイとまもりは間違いなく医者を連れてくるだろうし、私たち次第になるわ」

「そうですね。あの二人なら、間違いないでしょう」


 レンはツバメと音を鳴らさないハイタッチで笑い合うと、帰り道を急ぐことにした。

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【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[気になる点] このパーティーならどんなスキルブックでも使いこなしそうだが、誰の為のおもしろそうなスキルを選んだのやら [一言] あれが魔術兵器や古代兵器なら魔術学院とか古代都市の図書館でも情報が手に…
[一言] こうしてレンは新たな力を得て闇の使途ナイトメアの力を増大させるのだった。 レン「もうその話しはやめてー」
[一言] 論理クイズは大正解ですね模範解答と模範解法は 正解 1本目の線香の「両端」に同時に火をつけると同時に、2本目の線香の「片端」に火をつける 1本目の線香が燃え尽きた時、2本目の線香の「もう片端…
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