表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

727/1474

727.かつてを知る二人

「エンリケ……エンリケじゃないか!」

「ビルダじいさん、これは……」


 突然現れた謎の青年を見て、ビルダ老人は慌てて駆けつける。


「どうしたんじゃ? 何かあったのか!?」

「いや、街の様子が気になってな……見に来てしまったんだ。だがこれは……」


 一番酷かった時期の状況からはだいぶ良くなったフローリスの様相に、エンリケは驚きを見せる。


「ワシはここに残って復興を続けていたのだが……この冒険者たちが、ここまで引っ張って来てくれたのじゃ」


 そう言ってビルダ老人は、どこか誇らしげにメイたちを紹介する。


「そうか、すごいな……」


 短く刈った黒髪と、シャツの上に羽織った短めのローブ。

 エンリケは何やら考えるように辺りを見回し、小さく「よし」とうなずいた。


「それなら俺にも手伝わせてくれ」

「いいのか? お前ならどこに行ってもやっていけるではないか」

「どこでもやっていけるのなら、大好きなこの街でやっていきたいんだ」

「……助かる! こやつは優秀な建築士でな! 錬金術を使うことであっという間に建物を造るのじゃ! もちろん修復も得意じゃぞ!」


 いよいよその目を輝かせるビルダ老人。


「必要な素材は天幕の下に大体そろっておるはずじゃ、エンリケの指示に合わせて素材の受け渡しを頼む」

「りょうかいですっ」


 どうやらここからは、崩れた建物の修復を行うクエストになるようだ。

 エンリケは近くの崩れた建物に向かい、すぐに必要な素材を吟味する。


「影見石を30個頼む」

「はいっ」


 指示を受け、メイが走り出す。


「ここは石灰で表面を覆ってるな。石灰を3袋頼む」

「これは私が」


 足の速い二人が天幕に向かうと、ビルダ老人は数台の荷車に乗せた素材を並べていた。

 メイは影見石、ツバメは石灰を取ってすぐにエンリケのもとへ。


「よし、いくぞ」


 エンリケが錬金術を使うと、付近を覆うエフェクトと共に崩れた建物が修復される。


「おおーっ!」

「見事ですね!」


 その手腕に、思わず歓声を上げるメイとツバメ。

 ここからエンリケは、仕事を早めていく。


「花王岩2個、白色粉10袋、白磁石12個、水差し2杯分の水を頼む」

「は、はいっ。かおう2、しろこな10、はくじ12、みずさしみず2」


 難しくなってきたオーダーに、まもりはこれを口ずさみながら天幕の下へ。

 続くオーダーを受けるのはメイ。


「砂岩3個、安山岩11個、銀の欠片10個、油3杯頼む」

「さがん3、あんざん11、ぎん10、あぶら3……」


 増えたオーダーにメイも、内容を口ずさむ形式で天幕へ。

 するとわずかに先を行く、まもりに追いついた。


「かおう2、しろこな10、はくじ12、みずさしみず2」

「さがん3、あんざん11、ぎん10、あぶら3……」

「かがん2、しろざん11、はくぎん12、みずあぶら2……」

「さおう2、しろあん10、ぎんじ12、あぶらみず2……3……」

「「……あれ?」」


 並んだ二人、お互いのつぶやきが混ざってしまって思わず顔を見合わす。

 メイが「てへへ」と笑うと、まもりもこれに笑って二人一緒にエンリケのもとへ戻る。


「花王岩3個、安山岩5個、銅板2枚、青磁石10個を頼む」

「は、はひっ」


 今度はごちゃ混ぜにならないように、時間差をつけてメイが続く。


「これなら大丈夫だねっ。次は何を持って来ましょう!」

「石灰岩4個、黒色粉8袋、緑磁石12個、水差し4杯分の水、砂岩3個、安山岩5個、銀の欠片7個、油を3杯、青葉石2個、竜山石3つを頼む」

「ええええええ――――っ!?」


 そして地獄のロングオーダーに頭を抱えた。


「メイさん、ここは半分ずつ覚えましょう。後半は私が覚えます!」

「それが良いね! もう一回お願いしますっ!」


 ここでメイはツバメと共に、共同作戦を展開。


「石灰岩4個、黒色粉8袋、緑磁石12個、水差し4杯分の水、砂岩3個、安山岩5個、銀の欠片7個、油を3杯、青葉石2個、竜仙石3つを頼む」

「せっかい4、くろこな8、りょくじ12、みずさしみず4、さがん3」

「あんざん5、ぎんかけ7、あぶら3、あおば3、りゅうせん3」


 メイとツバメは、互いの声が聞こえてしまわない距離を取って慎重に歩き出す。

 やはりオーダーを半分に割って覚えればいけそうだ。しかし。


「ああそうだ、凍石も5つほど頼む」

「「はいっ」」


 メイとツバメ、エンリケの追加注文に返事して歩き出し――。


「なんだったっけ……?」

「なんでしたっけ……?」


 案の定ごっちゃになって頭を抱える。


「ツバメはあんなに長い詠唱を即座に思いつくのに、どうしてオーダーは覚えられないのよ」


 そんな二人を見て、レンが笑う。


「レンちゃんはどうしてるの?」

「基本は普通のゲームをする時と同じよ」


 そう言ってレンは、エンリケのオーダーを地面に枝で書く。


「その手がありましたか……!」

「さすがレンちゃん!」

「こうしておけば何度か読み返してから動けるし、忘れてもすぐに確認に戻れるでしょう?」


 これでオーダーの記憶と運搬は、かなりスムーズになった。

 メイとツバメがその足の速さを再び活かし始めたのを見て、レンも仕事を続ける。


「まもりは、ここで何をしているの?」

「は、はひっ、教会の壊れた女神象のパーツを集めて、修復してもらうということなのですが……」

「……腕ばっかね」


 ここはパズル要素になっているのか、まもりの前に並んでいるのは様々な形をした大量の腕パーツ。


「こ、このままでは千手観音女神さまができあがってしまいますっ」

「これって多分、街の復活後にそのまま残る部分よね。私はあえてゴツイ筋肉の腕でもいいと思うわよ」

「い、いいんですかっ!?」


 まもりは言われるまま筋肉隆々の腕を横に並べて、力で全てを解決しそうな女神さまに思わず息を飲む。


「よいですね……」


 一方ツバメは「趣があります」と、深くうなずくのだった。


「おお、いよいよ修復も進んできたな」


 微笑ましい光景に、はかどるメイたちの手。

 すると様子を見にやってきたビルダ老人が、感心したようにつぶやいた。


「今では優秀な建築士だが、エンリケは悪ガキでなぁ。錬金術を学び始めるまでは落書きに落とし穴作りに、イタズラばかりで苦労したもんじゃ」

「お、おいおいやめてくれよ、恥ずかしい」


 街の歴史を知るビルダ老人の言葉に、思わず恥ずかしがるエンリケ。


「それが今では、時計塔や教会を建てた街一番の建築家とはなぁ。教会の時は皆で手伝いをしながらだったのをよーく覚えておる」

「……懐かしいな」


 かつてを思い出しながら、エンリケは最後の修復に入る。

 そして見事に、女神像の修復と設置を完成させた。


「よし、できたぞ!」

「ふむ! これで建物の修復も完了じゃ!」

「おおーっ!」


 あらためて振り返ったメイは、思わず歓声を上げた。

 整然とした作りの街は建物一つ一つから美しく、ガレキ一つない状況はもはや普通の街と変わらない。


「これでいよいよ花を育てることができるぞ! フローリス復活も目前じゃな!」


 そう言ってビルダ老人は、天幕下に敷いた土から芽を出していた植物に目を向ける。


「やがて咲く黄色い花が、フローリスの象徴じゃ!」

「ああ、やっぱりフローリスにはこれがなくちゃな!」


 すでにクタクタだが、それでも活き活きとしているビルダ老人とエンリケ。

 まもりも長らく拠点にしていた街の復活を目前に、うれしそうにほほ笑む。


「こんなに早く街を修復できるとは思っていなかったぞ! 持ち出しておいた種を取りに行かなくては! エンリケも付いてこい! あれだけの量は、ワシ一人では持ちきれん!」

「ああ!」


 どうやら花の種など、無事だったものは別の街に逃してあるようだ。

 ウキウキで花の種を取りに動くビルダ老人とエンリケ。


「しばし待っておれ! 明日には戻ってくるぞ!」

「りょうかいですっ」


 メイたちは、駆け出していく二人を見送った。


「ここは待ちの時間みたいね。辺りを見ながら時間を過ごしましょうか」

「のんびりしましょうっ」

「は、はひっ」

「ログアウト前に、アイテム等の補充だけしておくと良さそうですね」


 ここからは、ビルダ老人たちの帰りを待つ空き時間。

 メイたちは、彼らが戻ってくるまでの時間をゆっくり過ごすことにした。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆新作よろしくお願いいたしますっ!◆◆◆

【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] 論理クイズのヒントは一位の人の人数を変えて考えると良いかも
[一言] 記憶力ゲームが始まってる!?
[良い点] >>「まもりは、ここで何をしているの?」 「は、はひっ、教会の壊れた女神象のパーツを集めて、修復してもらうということなのですが……」 「……腕ばっかね」 「はひ…でも、見つからないんです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ