726.復興は進みます!
「おおーっ! また街の雰囲気が良くなったよ!」
「これでガレキの運び出しは終了ね」
「ふむ! 助かったぞ!」
老人は疲れを見せているが、それすらも楽しそうだ。
三色の毒だまりが消え、ガレキの撤去が終われば街は見違える。
「花の都を取り戻すには、街の各所にある『麻痺の蒸気を噴き出す穴』を土で埋めてしまわなくてはな! かつてのような勢いがないのを見ると、蒸気もすでにある程度出尽くしたのだろうが、気をつけなくてはならん」
「どうすればいいの?」
「街を出て少し先の採掘現場に、掘り起こした土を集めておる。そこから土を運んで使えば問題ないじゃろう。ついでに要所にも健康な土を増やし花壇を作成、プランターも各所に配置。そして種をまくといった感じじゃな!」
五人並んで進むと、 そこにあるのは人数分の荷車。
そして盛られた大量の土とスコップだ。
「ここは毒液の範囲外ギリギリの場所でな。ワシが毎日掘り出しておいたのじゃ」
「ちゃんと人数分の荷車がちょうど現れるのは、ちょっと面白いわね」
「土を載せてみようよ!」
そう言ってメイはさっそく、荷車にスコップで土を載せていく。
途中でちょっと引っ張ってみて、「もう少しいける!」と荷車に山盛りの土を搭載。
結局二階建ての民家レベルの高さまで盛ったうえで、軽々荷車を引いていく。
「ふううううーっ!」
一方それを見て多めに土を盛ったまもり、必死に荷車を押すも全く動かない。
そんな姿に皆で笑いながら、フローリスの土壌改良作業が始まった。
各々が、見つけたひび割れを黒土で埋めていく。
「わはーっ!」
目の前のひび割れから突然蒸気が噴き出して、さすがに驚くメイ。
爆発の時は直前に音がしたが、単純な噴き出しには予兆がないためちょっと怖い。
メイが尻尾を毛羽立たせて驚く姿に、レンはクスクス笑う。
「ここは一度待って行くのがベストね」
こういうクエストの定石は、噴き出した直後を狙う事。
レンは一度蒸気が噴き出すのをしっかり待ってから、駆けつける方法を選んだ。
「……出ないわね」
しかし出ない。
「……出ない」
そこのひび割れは周期がゆっくりなのか、そもそも噴き出し自体が起きないところなのだろう。
「それなら先に埋めちゃいましょう」
そう踏んだレンは、ひび割れに近づいて――。
「きゃああああ――っ!!」
突然の噴き出しに、思わずひっくり返った。
「なんなのよもうっ!」
その流れが恥ずかしくて、思わず顔を赤くする。
そして地面を叩いてまた蒸気が噴き出し悲鳴をあげるという、最高のリアクションをしてみせたのだった。
まもりはそんなレンを見て、恐る恐るひび割れに近づいてやっぱり止まる。
「そろそろ、来そうな気配が……」
しかし噴かない。
「でもこれで近づいたら、間違いなく噴き出すはず……」
レンのパターンを考えて、ちょっと待つがやはり噴かない。
「今行けば間に合うかも……で、でも、もう結構待っちゃったし……」
まもり、いよいよ身体を動かせない。
こうして見事、実は何も噴き出さないひび割れにしっかり惑わされる。
「ふふふ、蒸気が出ると分かっているからこそ踏み込めない。これは良いクエストですね」
「はいツバメちゃん、【痺れ治し】」
「ありがとうございます」
そしてすでに痺れによって倒れたまま「お見事です」とか言っていたツバメを、メイが【痺れ治し】を使って助ける。
これまでとは少し違ったこのクエスト。
制限時間もないためひび割れは順当に埋まり、足元に黒土の箇所が増えていく。
普段はただの土としてしか見ていないが、三色の毒にまみれていた頃を知っていると、そこに『健康さ』を感じるほどだ。
綺麗な黒土は、やはり見ていて気持ちがいい。
「おーい! 【水宝珠】を持ってきたぞ! これで各所の汚れになっている毒を洗い落とし、溜まりになっている部分は流してしまってくれ!」
一通りひび割れを埋めると、ご機嫌な老人が駆けてきた。
手にした【水宝珠】を四人に配る。
今度は各所の毒の洗い流し作業だ。
単純な【毒】のたまりは、薄めてしまえば問題なし。
「それっ」
メイはさっそく受け取った【水宝珠】を民家に向け、黒ずみになっている部分に向けて放水する。
すると水流が当たった箇所から、黒ずみが消えて流れていく。
これがシンプルだが、始めてみると意外と楽しい。
もともとフローリスの建物は白壁、屋根や扉なども色合いが明るいものが多いため、綺麗になった時の見た目の変化が大きい。
そのため、妙に達成感がある。
「楽しいです……」
ツバメはもくもくと洗い流しを続け、家々をきれいにしていく。
「くらえレンちゃん! アクアストライク!」
「おっと!」
ここでメイは【水宝珠】で水弾を発射するも、レンはこれを回避。
「ふふ、メイにいいことを教えてあげる。こういう宝珠は大抵……」
レンが宝珠を強く握って、少しためてから起動。
「『溜め』でも撃てるのよ!」
「おおーっ!?」
するとため時間分だけ威力を増した、強い放水となった。
どうやら【水宝珠】は意外と、水の出し方に幅があるようだ。
「アクアストライク!」
「うええっ!?」
水弾と言いながら飛沫を噴き出すフェイントに、素直なメイはしっかり引っかかる。
舞い散る飛沫に濡れる髪。
そのまま二人は「きゃっきゃ」しながら、水の出し方を変えつつ互いを狙い撃つ。
「そんな使い方が…………あっ」
そんなメイとレンのやり合いを見ていたまもりは、一体の植物型モンスターの接近に気づいた。
攻撃方法に乏しいまもりは【水宝珠】を溜めつつ、そーっと進む。
そして枝を振り回すタイプのモンスターがこちらに気づき、近づいてきたのを確認してから宝珠を最大威力で発動。
「今ですっ! ええッ!?」
噴き出す、ダムの放水かと思うレベルの豪水。
一瞬で敵を洗い流し、大きく体勢を崩させたところにツバメが気づく。
「【加速】【電光石火】!」
すぐさま接近して敵を打倒。
一方まもりは、どうにか止めようとして水宝珠を両手でつかもうとするも、なかなか止まらずあたふた。
そんなまもりの姿に、笑う三人。
ようやく水が止まって安堵のまもりは、少し恥ずかしく感じながらも思わず笑ってしまうのだった。
◆
「すごーい!」
「見違えてきたわね」
「は、はいっ」
「もともと、とても綺麗な造りの街なんですね」
中央通りに戻ってくると、毒を洗い流し、各所のひび割れを埋めたフローリスの綺麗さに思わず感嘆する。
この街は建物自体はもちろん、その並び方まで整然としていて、もともとかなり美しかったのだと分かる。
つい四人並んだまま、街の光景を眺めてしまう。
「それにしても私の格好は、街の復興に似合わないわね」
土いじりゴスロリみたいになってるレンの言葉に、さすがに笑ってしまうまもり。
「ここからさらに街のいたる所に花が咲き誇るのじゃ。フローリスの美しさは、まだまだこんなものではないぞ!」
張り切りすぎてすっかり泥だらけの老人は、階段に座りながら得意げな笑顔を見せる。すると。
「ここが……フローリスなのか?」
いつの間にかやってきていた見知らぬ男が、驚きの声をあげた。
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