714.まずは毒食草から
「とりあえず、毒の回復アイテムはまとめ買いできたわ」
「メイさんも、お肉の用意をしておいた方がいいかもしれませんね」
「そ、そうだね」
【原始肉】の補充はなんと、【骨付き肉】という特別なアイテムを買った上で、手持ちの専用台に乗せ、自ら焼いて作るという形式。
石器時代を思わせる調理法に、思わずメイは肩を震わせながら肉を取り出した。
「「「…………」」」
『丸焼き』を製作するような形で、焼き色を見るメイを見つめるレンたち。
その姿は、とても原始人っぽい。
そして【原始肉】の色味が、いい感じになった瞬間。
「はいっ!」
タイミングよく火から取り出すと、【原始肉】は状態異常対策のアイテムに変化した。
こうしてメイは、所持数限界の3つまで肉焼き作業を続けたのだった。
「……さて、目的は【毒食草】を持って帰ることよ」
「りょうかいですっ」
「が、がんばります……っ」
まもりもこくこくとうなずく。
ポータルを使ってたどり着いたのは、王都から遠く西南に向かった先にある密林。
湿度の高いこの密林の中にあるのは、【毒食草】の群生地だ。
昼間だというのに薄暗い、鬱蒼としたそのマップ。
普段プレイヤーが近づかないのは、そこがひたすらに『やっかい』だからだ。
四人が踏み込んでからしばらく。
しっかりと『その一帯』の奥地にまで入り込んだところで、森が動き出す。
「ッ!」
後方にいたレンとまもりを狙い、後方から飛び出してきたのは大型の黒ヘビ。
その口の開き方から喰らいつきを予想したが、放たれたのは噴き出す毒による範囲攻撃だ。
これを必死に避けたところで、死角から飛んできた濃赤色の果実。
レンはこれをまともにくらい、肩にペイント弾のように赤いシミができた。
「【フレアバースト】!」
しかしダメージがないことを確認し、すぐさま得意の火炎魔法で反撃を狙う。
「……え?」
その火力は【ファイアボルト】並み。
「まさか今の、魔力低下!?」
状態異常には、ステータスを大きく下げるものもあり。
よりによってレンが引いたのは、魔力を低下させるものだった。
「【電光石火】!」
代わりにヘビの打倒に動いたのはツバメ。
速い斬り抜けで大きくのけ反らせるが、打倒には至らない。
「ッ!?」
次の瞬間、踏み込んだ足元から噴き上がる煙。
「視界が……!」
【方向感覚異常】によって、思ったように狙いを定められない。
レースゲームのハンドルが、異常なまでに効きすぎているかのような状態。
大きく揺れる視界は目標をうまく定められず、走り出した身体は斜めに曲がって行き、木に肩をぶつけて転倒。
ツバメは衝突ダメージを受けた。
「ここ、本当にとんでもないわね……っ!」
毒だけならまだしも、連続して浴びせられる多様な状態異常。
そして【魔力剣】の威力も当然減少する状況では、レンにまともな反撃は難しい。
このマップの敵の強さを考えると、厳しい状況だ。
再びレンを狙う黒ヘビ、さらにこの戦いを聞きつけたヘビが二匹一気に寄ってきた。
迫る二匹の喰らいつき。
「し、しつれいいたしますっ! 【ローリングシールド】!」
レンの前に立ったまもりは、盾による大きな振り払いで二匹まとめて弾き飛ばす。
見事にレンを守った形だ。
「いきますっ!」
ここで動き出したのはメイ。
最初の一匹目を狙って距離を詰め、振り上げる剣でヘビを斬り飛ばす。
「うわっと! 【アクロバット】!」
しかし踏みつけた足が、膨らんだ木の根のような感覚を覚えて即座にバク転。
噴き出した【方向感覚異常】の煙を回避する。
するとそこに、まもりの攻撃で弾かれた二匹のヘビが目を付けた。
二匹は時間差による飛び掛かりで、【毒牙】を光らせる。
「よっ! それっ!」
だがこのくらいの攻撃なら、着地直後でも問題なし。
メイは回避と同時に剣撃を加えて、難なくこれを打倒。
だが今度は付近に林立する砲実樹たちが、一斉に濃赤色の果実を乱れ撃つ。
「【地壁の盾】!」
まもりは狙われたツバメの前に立ち、これをしっかりガード。
「一気にいきますっ!」
似たような場所に密生していることは、攻撃される側に回った時大きなマイナスとなる。
マシンガンのように放たれる果実を、メイは踊るような動きで軽やかに回避。
「【ソードバッシュ】だあああーっ!」
降り下ろす剣から吹き荒れる猛烈な衝撃波は、容赦なく砲実樹の群生する地点に炸裂。
まとめて消し飛ばした。
「こ、これがメイさんの【ソードバッシュ】……」
木々を揺らすその一撃に、まもりが感嘆する。
「ありがとうございます、まもりさん」
「い、いえっ!」
「まもりちゃん助かったよー!」
「いいいいえっ! そんなことはっ!」
余計なことをしたのではないかと、ビクビクのまもりは盾に隠れる。
「それにしてもこのマップ、とんでもないわね」
戦いは一段落、レンは思わずこぼす。
敵の戦い方は順当だが、そこに様々な状態異常を喰らった状態で挑むとなると、途端に難易度が急上昇する。
【万能薬】といった形の全方位の状態異常回復アイテムは、かなりのレアアイテムで早々手に入らない。
そのため、しっかり一つ一つの異常に対応する薬を使う必要がある。
「【方向感覚異常】と【魔力低下】に対応する薬なんて、どこに売ってるのよ……」
毒や痺れといった基本的な異常に対応する薬は持ってきたが、ここで受ける異常は特殊なものも多い。
「ほら、いきましょう」
「ありがとうございます」
今だフラフラしているツバメの肩を抱え、歩き出すレン。
あまりに厳しい状態異常マップ。
いまだかつてない経験に、レンですら気を遣う。しかし。
「メイ、念のため【原始肉】を食べておいて。すでにツバメと私がこの状態だし、今後はメイの状態異常耐性がカギになるわ」
「りょうかいですっ」
そう言ってそっと【原始肉】を取り出すと、今度こそ小さくかじろうとして豪快にかぶりつくメイ。
「なんでーっ!?」
漫画のような『引きちぎり食い』の直後、その身体に光を宿らせたのだった。
「まもりも引き続き、防御よろしくね」
「は、はははひっ!」
こうして四人はさらに、状態異常の森へと踏み込んでいく。
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