708.星屑フェスの終わり
「それでは今回の星屑フェス、MVPを発表します!」
メインステージ最後の催しは、フェスにて一番の功績を残したプレイヤーの発表。
「栄えあるMVPは――――」
運営の司会者の言葉に、鳴り出すドラムロール。
誰もがその演出にワクワクする。
「野生児メイさんです!」
「野生児ではございませーん!」
万雷の拍手の中、しっかりとその辺りを否定しながらステージへと上がるメイ。
いつもの掛け合いに、レンとツバメが笑う。
「今回は最後のレイドボス戦での活躍だけでなく、前半戦最後の星屑無双では新たなギネス記録を『星屑』にもたらしてくれました!」
「レンちゃんやツバメちゃん、皆がいてくれたからですっ」
メイはうれしそうに頭を下げると、レイドバトルを共にしたプレイヤーたちと手を振り合う。
「そして本来フェスのポイント報酬は、終了後に特別ブースにて配布されるのですが、今回は特別にこの場で授与を行おうと思います!」
「「「おおーっ!」」」
わき上がる歓声の中、運営がメイの前に立つ。
司会者が両手を掲げると、その中に『報酬』が現れた。
「こちらです、どうぞ!」
「え、ええええええええ――――っ!?」
運営に手渡されたのはなんと、こんがり焼かれた『巨大な骨付き肉』
食いしん坊な原始人が、かぶりついてそうな一品だ。
「おめでとうございます! それでは皆さん、MVPのメイさんにもう一度盛大な拍手を!」
再び鳴り出す万雷の拍手の中、メイはすっかり食いしん坊原始人になってしまったのだった。
「次にお会いする時は果たして、どのような関係になっているのでしょうね」
「さあね。敵でも味方でもボクは構わないよ」
「できれば『そんな恥ずかしい時代もあったわね』って言える関係になっていて欲しいんだけど」
白夜の問いに意味ありげな笑みで返す刹那。
それを見てレンは苦笑い。
「――三人の連携は痺れた」
「敵ながら、お見事でしたわね」
「あれは忘れて」
うなずく雨涙と白夜に、レンは顔を赤くしながら応える。
「見つかった! さらばだナイトメア。貴様たちとの戦い、悪くなかったぞ! 行くぞ雨涙!」
「――了解。すでに経路は用意済み」
一方のリズは、さりげなく街の角を曲がったところで雨涙と共に猛ダッシュ。
「どこに行った!?」
「やられた!」
使徒志望者たちの追跡を、けむに巻く。
「相変わらずメイちゃんはすごかったね。あの銀色のメイちゃんとはどういう関係なのかな?」
「それそれ! とんでもない事態だよなあれ! どうなってんだ!?」
「遺跡都市で出会いましたっ」
向けられる視線を前に、骨付き肉を隠したメイが応える。
「禁忌目録に載った子を呼び出すってすごいなぁ……もっと私たちも力を付けないといけないね」
「全くだな。あんなに強いボスがいるなんて思わなかったし、それを押し切っちまうメイのパワーも半端なかった」
「ふ、ふん、今回はそこそこだったが、星屑の最終兵器はこのグラム・クインロードだからな」
「グラムはまず、補習にならないようにしないとね」
「おい! 思い出させるな!」
ローランのツッコミに、ぷんすかと怒るグラム。
「やはりメイと共に戦うのは燃えるな!」
一方のアルトリッテは気合十分。
「だが敵の強さはすさまじかった! このアルトリッテ、次は完全体となった聖剣を手にメイと八面六臂の活躍をしてみせるぞ!」
そう言って剣を持った手を突き上げるアルトリッテ。
「……それは【エクスブレード】」
「は、八面六臂の活躍をしてみせる!」
マリーカの言葉に慌てて【エクスカリバー】に持ち換える。
「……いつものこと」
「いつもではないっ! それではまたな戦友たちよ! 私たちは聖剣の鞘を探す旅に戻るぞ!」
「……次に会う時は、一回りも二回りも小さくなっている」
「この場合は大きくなってるじゃないのー?」
「確かに」
マリーカの言葉に、首を傾げるココとアトラクナイア。
「マリーカちゃんは小さくなりたいのぉん? こんなに大っきくていい感じなのにぃ」
「……っ!?」
肌色多めのキュービィにしっかり抱き着かれ、そのうえ色々触られて、マリーカはビクリと身体を震わせる。
「……っ!!」
そしてそのまま顔を赤く染めながら、アルトリッテの背中に逃げる。
「ぬはははは! マリーカの動揺は久しぶりに見たぞ!」
手を振り、皆に笑いながら去っていくアルトリッテ。
それに続く形で、ココたちもラフテリアを後にする。
「それじゃ私たちも解散しようか」
その姿を見て、ローランも歩き出した。
「じゃあな」
「またなー!」
補習による遅刻をいじられながら、グラムたちも続く。
「次に会う時にはスワローちゃんをもっと、ツバメちゃんと並んで戦う姿が映えるようにしておきますな!」
「私もご一緒したいわねぇ」
「アサシンコンビからの格闘。その流れでローチェちゃんに美味しいところを回してねっ!」
更なるレベルアップを誓いながら、なーにゃたちが手を振りながら去っていく。
こうしてラフテリアに集まったトップ勢は、各々の拠点や冒険へと戻っていったのだった。
「終わってしまいました」
つぶやくツバメ。
ラフテリアを拠点にしているメイたちは、当然皆を見送る形になる。
「本当だねぇ」
多くのプレイヤーと共に迎えたエンディングは、次々に上がる花火と街のライティングが美しい。
街には今だ多くのプレイヤーが残っているが、すでに残り火のような穏やかな空気になっている。
「お祭りの終わりは寂しいものですね。こんな感覚は初めてです」
「うん。終わっちゃうんだーって感じるね」
いつもの防波堤に腰かける。
これまでお祭りごとにちゃんと関わることがなく、現実でも持てる時間の全てを村の防衛に費やしていたメイ。
経験値やアイテムがいつもより豊富にもらえるということで、いつもより多くの人とすれ違うだけだったツバメ。
二人はしみじみと語る。
「最後、レンちゃんとツバメちゃんが待っててくれてうれしかったなぁ」
花火を眺めながら、つぶやくメイ。
「最後は一緒にって約束したでしょう」
「バタバタとした集合から駆けつけるクエスト、とても楽しかったです」
「その慌ただしさも、いい思い出よね」
「……本当に、終わっちゃうんだねぇ」
「メイ」
「なあに?」
「幽霊船が発見されたらしいわよ」
「幽霊船!?」
「どこにも停泊しない恐怖の船が、世界を漂流してるんだって」
「すごい……!」
「鉱山では、怪しい遺跡のようなものが見つかったんだとか」
「ええっ、何を掘り出しちゃったの!?」
「その後、発見パーティは謎の全滅を果たしたらしいわ」
「ええーっ! 一体何があったんだろう……っ!」
「ワクワクしてこない?」
「わくわくしちゃうよーっ!」
「お祭りは終わりだけど、明日からも三人一緒なのは変わらないわよ」
そう言ってレンも、二人の横に腰を下ろす。
「えへへ、そうだよね」
「新しい冒険が始まるのですね」
「それにこうやってお祭りの終わりを寂しく感じられるのは、それだけ楽しく遊べたってことなんじゃないかしら」
「その通りだと思います。グラムさんやアルトリッテさんも気合を入れ直していたようですし、私たちも負けていられません」
「そうだね!」
メイの意識は、早くも新しい世界へ。
「明日はどこに行こっか!」
「やはりまずは、まだ行ったことのない場所から探してみるというのはいかがでしょうか」
「そう思って、地図なんかも持ってきたわよ」
広げた地図に、笑みと共に向ける視線。
こうして三人はまた、新たな冒険の話に夢中になるのだった。
◆
「ただいまー」
仕事の手伝いを終え、やよいは自宅へと帰ってきた。
「夕食は、全力でいくからね」
新たな香辛料をそっとキッチンの奥地に隠し、今夜こそはとうなずく。
多国籍料理攻勢なら、さすがに『当てられない』だろうという目論みだ。
「さつきたちはどうしてるかしら」
とりあえず飲み物を三つほど用意して、さつきの部屋へと向かう。
「さつき、いるんでしょう?」
部屋の戸を叩いても返事はなし。
「さつき?」
そっとドアを開く。
するとそこには、しいた布団の上で眠るさつきと、寄り添うようにして寝ている可憐とつばめの姿。
イベントをやり切って戻ってきた後、そのまま眠ってしまったようだ。
「……本当に、仲がいいのねぇ」
並んで眠る三人を見たやよいは、思わず微笑む。
「よかったね、さつき」
そんな光景に、思わずリビングへ戻ったやよい。
つばめ兄から預かった重装のカメラを手に取り、再びさつきの部屋へと戻っていくのだった。
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