549.使徒の弱点
旧神殿の魔法陣が解かれたことで、アルティシアに悪しき魔力が流れ込み始めた。
これ以上悪魔が目覚めるのを防ぐため、次の魔法陣を目指すメイたち。
「悪魔召喚カッコよかったねぇ」
そう言って、悪魔召喚ポーズを決めるメイ。
「メイさん、それなら腕の角度はこうですわ」
「カッコよくなりました」
「おおーっ!」
「ここでさらに、わたくしがこう」
「合体ポーズもいい感じです」
楽しそうなメイを見て、ツバメも喜ぶ。
「ふん」
そんな三人を一瞥して、リズは鼻を鳴らした。
「威圧感が足りていない」
「さっさと行くわよ」
鳥肌状態のレンを先頭に、6人はアルティシア南東の墓所へとたどり着く。
廃教会を通り抜けると、そこには雨風にさらされたのであろう墓石が並んでいた。
「大丈夫なの?」
その暗雲たれ込める雰囲気に、レンが問いかける。
「と、当然だ」
「……あら? もしかして怖いのですか?」
「勘違いをするな。恐怖などという感情はとうに失っている」
「――前にも聞いた記憶」
リズと白夜がそんな会話をする中、メイとツバメは地下への道筋を探す。
「ここの墓石を動かすと、その下に隠し階段があるようです」
「おまかせくださいっ! それー!」
「ぬあッ!?」
墓石が倒れて大きな音が鳴り、リズがビクッ! と身体を震わせた。
「…………」
「ずいぶんと驚いていたようですが?」
「音に反応するのは、剣士として当然の反応だ」
「困った時は言ってくださいね。このわたくしが、いつでも助けて差し上げますわ」
「ふん」
余裕の笑みを浮かべてみせる白夜。
メイたちはさっそくレンの腕に抱き着きながら階段を降り、リズもしれっとその後に続く。
「地下は『迷路』になっているわけね」
そこは広大な地下迷宮。
魔法灯が照らす石積みの暗い道は、道幅も広い。
6人がいくつかの角を曲がると、早くも小型のホールと左右への別れ道が現れた。
「もしパーティを分けるようなことになったら、個人で状況を変えられるメイと、罠を解除できるツバメは別がいいわね」
そんな事を言いながら、分かれ道の近くまで進んでいくと――。
やや手前の地面から、ゾンビたちが一斉に這い上がってきた。
「ッ!」
その光景に、思わず身体を大きくのけぞらせるリズ。
すると一部のゾンビたちが手に持つ杖が、輝きを灯し始める。
「気を付けて、ここのゾンビはスキルを使ってくるみたいだわ!」
「このくらい問題ありませんわっ! 【エンジェライズ】!」
背に生えた小さな天使の羽が、一度の羽ばたきでブースターのように白夜をはじき出す。
速く大きな一歩で魔法を掻い潜り、先頭のゾンビをレイピアで斬り飛ばした白夜はそのまま手を上げる。
「【エーテルライズ・エクステンド】!」
レイピアを振り降ろすと天井に穴を穿つほどの光の飛沫が吹き上がり、ゾンビたちが消し飛んだ。
「【エーテルジャベリン】」
間髪入れずに左右三本ずつの『魔法の槍』を生み出し、これを放ちつつゾンビたちを斬り伏せていく。
「闇の使徒はアンデッドに弱い。これは良い情報を得ましたわねっ」
余裕の笑みを浮かべながら、白夜は多量のゾンビを斬っては捨てていく。
「新手が来たわ! 気を付けて!」
「もちろんですわ! わたくしにかかればこの程度――ひっ!?」
突然、あげた悲鳴。
ゾンビたちの合間を縫って駆け込んできたのは、四頭のゾンビ犬。
「エエエ、【エーテルライズ】ッ!!」
慌てながら放った大雑把な狙いの光柱は、速いゾンビ犬には当たらない。
「【エーテルライズ】【エーテルライズ】ッ!!」
放つ光柱の全てが、あっさりとかわされていく。
「こ、こっちにこないでくださいーっ!」
そしてついに、白夜は逃げ出した。
そして闇雲なダッシュによって右側の分かれ道に踏み込んだところで、何かを踏む。
「ええっ!?」
そして道を塞ぐような形で現れた帯状の落とし穴に、飛び掛かってきたゾンビ犬ごと落下。
「【ライトニングスラスト】――ッ!」
白夜は落下中に、飛行突撃スキルを発動。
そのままレイピアで天井を突き刺し、運良くゾンビ犬だけを片付けてみせた。
「この通り、全ては計算通りですわ」
「嘘つきなさいよ! 【ファイアウォール】!」
プラプラしてる白夜にツッコミを入れつつ、レンがゾンビたちの動きを制限。
崩落の可能性を踏まえて爆破系の魔法は避けつつ、敵を誘導する。
「【フルスイング】!」
そこに踏みこんできたメイの横なぎの一撃が、20体に及ぶ前衛型ゾンビを吹き飛ばした。
「【加速】!」
後方に残っていたゾンビ魔導士は杖も大きく、大きな魔法を使いそうな気配。
「【リブースト】!」
ゾンビ剣士たちの放つ【大回転斬り】を潜り抜け、一気に魔導士型の懐へ。
「【アサシンピアス】」
しかしそこに飛び込んで来たのは【かばう】を使用した騎士ゾンビ。
ツバメの一撃を代わりに食らい倒れる。
輝きを強める魔導士の杖。
「――【早駆け】」
そこに飛び込んで来たのは雨涙。
「――【水遁・天嵐砲】」
吹き荒れる風の音と共に放たれた水の爆発で見事、付近一帯を飲み込む炎を放とうとしていたゾンビ魔導士を片付けた。
「【紫電】! リズさん、お願いします!」
「う、うむ! 【暗夜剣】!」
ツバメの言葉に、降り抜く黒の大剣。
三日月形の剣撃を飛ばし、残ったゾンビたちを斬り飛ばす。
とっさの判断にしては、十分な連携だったと言えるだろう。
「……光の使徒は犬に弱い。これは良い情報を得たな」
ゾンビ犬に追われて、大慌てだった白夜。
そう言いながらあえて余裕を見せるようなゆっくりとした足の運びで、レクエイムは歩を進める。
向かうのは、白夜が落とし穴を発動させた右側の道だ。
この位置で発動した罠があるということは、すぐに新たな罠が出てくることはないという判断によるもの。
「い、犬など問題ではありません。あれは作戦ですわ」
無事着地した白夜も、並ぶようにして進む。そして。
「「ッ!?」」
二人一緒に踏んだ罠が起動して崩落。
目の前に突然空いた穴に、二人仲良く落ちていった。
「……ええと、大丈夫?」
レンは底の見えない穴に向け、問いかけてみる。
「下にも道がある。計算通りだな」
「計算通りですわ」
「――言い訳の内容が同じ」
「もう……二人の面倒は私が見にいくから、メイとツバメは雨涙と左側の道を進んで」
「りょうかいですっ!」
「分かりました」
「――承知」
レンは落ちていった二人を【浮遊】で追いかける。
「まったく、忙しいクエストになりそうだわ」
敵対設定の使徒たちが仲間という状況に、苦笑いを浮かべながら。
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