541.ひといきつきますっ!
「それじゃまたね」
「良いクエストだった」
「またねー!」
「お疲れさまでした」
「――失礼します」
錬金術師の研究所を出た五人は、神殿前で分かれることになった。
メイたちはそのまま神官のもとに戻り、【偽命の石】を差し出す。
「おおっ、これこそまさに【偽命の石】! 良かった、これでまた一つ街の危険が減りました。ありがとうございます!」
歓喜の声を上げる神官。
こうしてリズたちと『目的を同じくする』クエストは、見事メイたちが攻略を達成した。
「しばらくお待ちください。この石をしかるべき場所に安置した後、また新たな依頼をさせていただきたいと思います」
「それじゃ私たちも一息ついて待ちましょうか」
「いいと思いますっ」
「そうしましょう」
メイたちは神殿外の階段に腰を下ろすと、街の美しい夜景を眺めながら次のクエストの発生を待つことにした。
「そういえば、飲食のシステムが実装された事によって、待ち時間も楽しくなったと聞きました」
「そーなの?」
「はい。おやつを食べつつ会話を楽しむということもできるようです」
「おおーっ!」
その話を聞いて、メイは目を輝かせる。
尻尾もブンブンだ。
「戦闘時の食品アイテム使用も『オン・オフ』できるみたいね。実際に食べても良し、今まで通りの『使用』形式もありみたい」
「わあ! それは楽しそうだねっ!」
そう口にして思い浮かんだ光景は、両手のバナナにがっつく自分の姿。
「ハッ!?」
メイは慌ててブルブルと首を振る。
さすがに両手のバナナに喰いつく絵は、野性味が強すぎる。
「実は、メイちゃんカフェのクッキーを色々と頂いてきました」
「やったー!」
そう言いながら取り出したのは、フルーツ入りのクッキー。
さっそく受け取って口に運ぶ。
するとその肩口に現れたのは、いーちゃん。
「欲しいの?」
そう言ってメイがクッキーを一つ渡すと、両手で持ってかじりつく。
「かわいいーっ!」
「これはかわいいです」
「いいわね、これ」
頬をふくらませながらもぐもぐしているいーちゃんに、思わず癒される三人。
「ツバメちゃん、これもおいしいよ! はいっ!」
メイはお返しとばかりに、シナモンラスクを差し出した。
「……手持ちのお菓子を交換して食べるというのは初めてです」
遠足等でお菓子を交換している同級生を見て、少し憧れていたツバメはうれしそうにほほ笑む。
「おいしいですね」
「考えることは皆同じね」
そう言うレンの手にも菓子。
両手にクッキー状態のメイ、取り出されたチョコパイを見てさらに目を輝かせる。
「はい」
差し出すと、パクッと喰いつく。
その姿は犬のようで、思わず笑みがこぼれる。
「やっぱり、好きな物を素直に食べるのが一番いいわね」
そう言いながら、チョコパイを口にするレン。
「そうでない場合があるのですか?」
「私はなんか……食べずにいるのがカッコいいって思ってたのよね……」
食に対する好みや、食事独特の隙を晒さない。
そんなストイックさを貫く自分を演出していたことを思い出して、首元を駆けるゾワゾワに震える。
「今回は大きな展開に向かっているはずだけど、静かに進んでるのが助かるわ」
レンはそう言って息をついた。
「全開の中二病を、たくさんのプレイヤーにひけらかしながら進むんじゃないかって思ってたから」
「皆の知らないところで、ひっそりと大事が進行している感じがあります」
「白夜ちゃんもリズちゃんも、レンちゃんが来るとうれしそうにしてたねぇ」
「余計な設定を背負ったせいで、一層『面白い存在』になっちゃったんでしょうね……」
何物にも縛られず純粋な力を求めるために組織を抜けたという、リズを納得させるための設定。
その後はメイやツバメと共に、すさまじい活躍の連続。
そんな存在、『使徒』たちの大好物になるのも当然だ。
「リズには『純粋に力を求める』っていう宣言をして組織を抜けたのに、新たな力である悪魔召喚について興味なし。街がその力で闇に落とされる展開を無視するっていうのは辻褄が合わないのよね」
悪魔召喚によって力を付けたから、光の使徒を討ち街を暗黒に染める。
そんな横暴を放っておくのは、設定に反してしまう。
そこからまた「話が違うぞナイトメア!」という展開になるのは、非常に困る。
「なんとか、荒れずに片付けられればいいんだけど」
「やはり心配しているのですね」
「まあきっかけは私のベルゼブブ退治だし、それでこの街が変わっちゃうのは申し訳ないもの。大丈夫とは思うけど、それで揉めたりしたら嫌だし。なによりちょっと……寂しいじゃない」
そう言ってレンは、苦笑いを向ける。
「あとはあの子がどんな感じになっているのかだけど……なんとか、なんとかこのまま街を守ることで、見せ物中二病バトルをしなくて済みますように……っ!」
天に祈る、元闇の使徒レン。
すると神官が何やら考えるようにしながら、神殿内をうろつき始めたのが見えた。
「何か状況が変わったみたいね。このままサクッと街を救っちゃいましょう」
「りょうかいですっ!」
「はい」
こうしてお菓子タイムを終えたメイたちは、新たなクエストを求めて神官のもとへと駆け出した。
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