535.罠だらけの森
「街外れにある森には、罠が幾重にも仕掛けられているのです。危険なので、それを解除してきていただけないでしょうか」
「全部の罠を見つけだせってこと?」
「いえ、全ての罠を司っている『宝珠』を止めれば解除できるはずです」
神官の出す新たなクエストは、森に仕掛けられた罠の解除。
「それではさっそく、行ってみましょう!」
拳を「やー!」と突き上げるメイ。
三人は言われるまま、慣れた速い移動で街外れを目指す。
そこには、山とつながっていく黒々とした森が広がっている。
「この時間の森は、なかなか迫力あるわねぇ」
「本当ですね」
アルティシアの外れにある小高い山。
そのふもとに広がる森へ踏み込んだメイたちは、仕掛けられている罠を探して進む。
「あれ、何かいるよ?」
メイの言葉に構えるレンとツバメ。
三人の10メートルほど先を前を横切っていくのは、一匹の鹿だ。
鹿はトントンと、軽やかに道なき道を行き――。
「「「ッ!?」」」
突然足元から吹き上がった炎に、軽く尻尾を焦がされながら慌てて逃げ出していった。
「ここから先はこういう感じですよという、デモンストレーターのようですね」
「結構ハードな火力だったわね」
思った以上の火力に、思わず緊張感が走る。
「ゆっくり進みましょう」
三人は、付近をしっかり見ながら歩を進めることにした。
「ツバメちゃん、そこに魔法陣があるから気を付けてね」
「ありがとうございます【罠解除】」
メイが目を凝らし、見つけた罠をツバメが【罠解除】で無力化。
レンは魔法陣を踏まないよう、低めの【浮遊】で後に続きつつ付近に視線を走らせる。
「これ、何時間かかるのかしら……」
「夜ということもあって、本当に難しいですね」
静けさの中に、聞こえるのは足音だけ。
「ツバメちゃん!」
ただしその中に、モンスターの足音あり。
「魔獣も出るのですか……!? 【跳躍】!」
喰らい付きにきたブラックドッグをギリギリのところで回避すると、飛び掛かった先に魔法陣。
広がる輝きが、ブラックドッグを夜空に吹き飛ばした。
「す、すごい勢いで飛んで行きました……」
「数百メートル級の吹き飛ばしってすごい罠ね……ん?」
足元に気を付けながら歩を進めていたレンは、何かに頭が引っかかった感覚に顔を上げる。
見えたのは、魔法糸の輝き。
「ッ!!」
慌てて横っ飛び。
するとさっきまでレンがいたところに、痺れ矢が突き刺さった。
そして再び顔を上げたところに見えたのは魔法陣。
「回避した先に魔法陣っ!? 【浮遊】!」
足がついてしまう前に【浮遊】を発動し、魔法陣の起動を回避。
「そうよ、最初から空を通れば――――」
「【ラビットジャンプ】!」
「うそっ!?」
レンの目に映ったのは、夜空に描かれた魔法陣。
飛び上がったメイはレンにしがみつき、そのまま地面を転がる。
直後、頭上で派手な爆発。
どうやら空中にも、『透明化』した魔法陣罠が仕掛けられていたようだ。
「あ、ありがとメイ」
「いえいえー」
落ちてくる火花に苦笑いしながら、レンは立ち上がる。
「地面から空中まで、流れるような罠の連携だったわね……【連続魔法】【誘導弾】【フリーズボルト】!」
そして見えたモンスターに先行して氷弾を叩き込み、しっかり魔法陣の有無を確認して下ろした足が……ハマる。
「落とし穴っ!?」
「レンさん!」
慌ててレンの手をつかむツバメ。
しかし体勢は悪く、ツバメごと穴に落ちていく。
「ツバメちゃん!」
慌ててツバメの手を引くメイ。
「「ッ!!」」
そこに飛び込んでくるのは、猪型のモンスター。
「うわはー! どどどどうしようっ!?」
メイは尻尾をパタパタさせながら慌て出す。
「……メイさん、私ごといっちゃってください」
「え、ええっ!?」
「私も構わないわ」
「わ、わかりましたっ! せーの! やあーっ!」
言われるままメイ、ツバメとレンを迫る猪に叩き付ける。
ダメージは互いに『衝突判定』ゆえに微量。
すると猪は、砂煙を上げながら転がっていった。
そして安堵の息をついたところに、ガコンと下がる足元。
「ああもう、しつこいわねっ!」
「【投石】!」
「【魔砲術】【連続魔法】【フレアアロー】!」
音のした方に放った石と炎の矢が、仕掛けの弓を消し飛ばす。
しかし、ここで違う角度から飛んできた一本の矢がレンに向けて突き進み――。
「【アクアエッジ】【八連剣舞】!」
ツバメのやや強引な乱舞に弾き飛ばされた。
「「「…………」」」
メイは「セーフ」と、無言のままジェスチャー。
思わず三人笑う合う。
「なかなか、とんでもないクエストですね」
「盗賊もしくは盗賊スキル多めなら、もう少し楽なんでしょうね」
幸い制限時間はない。
その難易度に、レンとツバメは長期戦の覚悟を決める。
「……でも、ここまでの感じだったら大丈夫かも」
そんな中、メイは腕を組んで「うーむ」と首を傾げていた。
「大丈夫とは、どういうことですか?」
「ここの魔法陣とか罠って、踏んだ瞬間バーン! じゃなくて踏んで「わはー!」からのドカーン! だよね」
「そうね。確かに『貴方踏みましたよ』の確認タイムがあるわね」
「もしかしてメイさん……足場の良くはない夜の山中を駆け抜けるつもりですか?」
メイは「てへへ」と笑うと、クラウチングスタートの構えを取る。
「……他に人はいないよね? 【装備変更】っ!」
一応目撃者の有無を確認して、頭装備を【猫耳】から【鹿角】に。
「いきますっ! 【裸足の女神】【バンビステップ】!」
風を巻き起こし、猛スピードで駆け出すメイ。
その足は魔法陣を踏み、張られた糸状の魔力線をバシバシ身体に引っ掛ける。
足元から次々に吹き上がる炎と、ガンガン飛んでくる炎や毒、麻痺の矢。
怒涛の罠攻撃の全てを置き去りにして疾走。
普通であれば手間取る足元の高低差も、長らくジャングルの夜を駆け回ったメイには庭も同然。
「それそれそれーっ!」
華麗な三段跳びで飛び越える。
すると草むらに隠れた魔法陣の光がわずかに見えた。
「【ターザンロープ】」
このままでは魔法陣の真ん中に着地してしまうため、付近の枝にロープを引っ掛け大きく跳躍。
「アーアアー!」
人がいないことで気が抜けたのか、しっかりと叫び声まで発してから、体操選手のような着地を決めた。
「うわっ!」
目の前に吹き上がった光の柱が、わずかに前髪を揺らす。
見ればギリギリ、魔法陣につま先が踏み込んでいた。
メイは「てへへ」と笑いながら振り返る。
「この道はもう大丈夫だよーっ!」
「ふふ。本来は時間をかけてピリピリしながら進ませる想定のクエストだったんでしょうねぇ」
「全力疾走で乗り越えるプレイヤーは、早々出なそうです」
一度効果を発した罠は、力を失う。
ツバメとレンは安心して、手を振るメイのもとへと駆け出した。
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