533.光の使徒たち
突然襲い掛かってきた光の使徒たち相手に、優位を取ったメイたち。
そんな中、ふわりとした跳躍から優雅なポーズの着地を決めたのは、レイピアを携えた新たな光の使徒。
「わあ! あなたはっ!」
「あら、貴方は――」
「九条院白夜ちゃん!」
「野生の王者メイさん」
「ちちち違うんですっ! 普通の女の子でやらせてもらっております!」
手と尻尾をブンブンと振って否定するメイ。
「い、言われてみればこの耳と尻尾……話題の野生児です!」
「そういうことだったのだね! それなら初見の光の槍の投擲をバク転でかわすなんて超能力も理解できるね!」
「野生児ではございませーん!」
エトワールとヒカリの言葉に、さらにブンブン首と尻尾を振る。
「さて元闇の使徒さん。このようなところで一体……何を企んでいましたの?」
そう言って白夜は、含みを持たせた笑みを浮かべたまま問いかける。
「何も企んでないわよ。だからそんな『いよいよ面白くなってきましたわ』みたいな顔しないでよ」
相変わらずの白夜に、早くも真顔になるレン。
「ですが、このタイミングでアルティシアに来ておいて、まさか偶然などとは言い出しませんわよね」
「魔法陣でレイスを呼び出してたんだ。絶対に何かあるな!」
ミヤビはそう言って、ビシッとメイたちを指さした。
「仕方ないわねぇ……そういうことなら説明するわ」
そう前置きしてレンは闇の使徒と暗夜教団の分裂のこと、闇の使徒に残ったレクイエムや雨涙と共に、アルティシアの街の闇落ちを防ぐために動いていることを説明した。
「……筋は通っていますわね。闇の使徒が私たちと同じ『神殿からのルート』で街を守ろうとしているのであれば、最近の『妙にかち合うのになぜか戦いには至らない』ことにも説明がつきます。それでいて街の危機が着々と進んでいることにも、暗夜教団とやらが別動なのだと考えれば納得ができますわ」
いちいちポーズを取りながら語る白夜に、レンの表情が『無』になっていく。
「それでは、貴方たちはどうしてレイスと戦っていたのですか?」
「神官からのクエストよ。私たちは教会のシスターからの流れでレイスと戦うことになったの」
「あの神官にクエストがあるのか……!?」
驚く花森ミヤビ。
「それがシスターからつながるなんて……そのような事あるのでしょうか?」
それなりに試行されているシスターのクエストからの派生で、神官がクエストを提示する。
どうやらアルティシア拠点のプレイヤーでも、知らない事実のようだ。
聞いたことのないルートに、エトワールはいぶかしむ。
「メイさんの発見力なら、何もおかしくありませんわ」
「いえいえー」
ちょっとだけ照れながら、メイは頭をかく。
「レンさんは確かに、ウェーデンでは闇の使徒と一線を引いた姿を見せていました。ですが全てを信用したというわけではありません。それすらもこの聖教都市アルティシアを、わたくしたち光の使徒を潰すための策略である可能性がありますわ。何より貴方は、さらなる力を求めて闇の使徒を抜けたと言っていました。その高みとは、なお深き闇の可能性がありますわ……っ!」
「そんな可能性ないわよ!」
「……それに、あえて闇を取り込むことで見えてくるものがあるかもしれません。たとえこれが罠だとしても、わたくしはこの機会を逃しませんっ!」
そう言ってレイピアを構えると――。
「そして必ずや闇を払い、この街を救ってみせますわ!」
すでにげっそりしているレンに向けて、はっきりとそう宣言した。
「「「その通りです!」」」
すぐさま白夜の周りでポーズを取るエトワールたちと、白目をむくレン。
「かっこいいー!」
思わずメイはパチパチと拍手を送る。
どうやら白夜は、エトワールたちのリーダー的な立ち位置にいるようだ。
「わたくしたちも先日、妖しい魔法陣を起動させる黒衣の者を目撃していたのです。警戒を強めていたのはそのためですわ」
「でも神官の話が本当なのかは、一応確認しておきたいね」
雪崎ヒカリの提言に、うなずく白夜。
「そういう事でしたら一度神殿に戻りましょう。メイさんたちの展開も気になりますし、貴方たちが聖女様の話を聞くこともムダにはならないのではなくて?」
そう言って「やましいことがないのなら当然できますわよね?」と、表情でたずねてくる白夜。
「本当に楽しそうね……もちろん行くわ」
こうしてメイたちも、目を輝かせている白夜に続く形で神殿へと戻ることになった。
「驚きましたわ。ウェーデンでは『純粋な力を求める』と、かつての組織にその強さを見せつけたレンさんたち。その言葉の通り何者にも流されることなく、風の吹くまま気の向くまま勝利を重ねていくとは」
「それは楽しんできた結果としてなのよ」
「……今の言葉、聞きました?」
白夜の言葉に、なぜかゴクリと息を飲むエトワールたち。
「これだけの快進撃を『楽しんでいただけ』と言い切るこの恐ろしさ。やはり……底がしれませんわ」
「も、もしやこれは、一戦を超えた強者ほど態度が軽くなるあの現象なのでは!?」
強くなりすぎてしまったキャラクターほど、普段の雰囲気に強者感を出さなくなる現象を思い出し、驚愕するエトワール。
「……そのとおりですわ」
「違うわよ。勝手に人を伝説の魔導士みたいに言わないで」
「よく気づきましたわね」みたいな顔でうなずく白夜に、レンはしっかりとツッコミを入れておく。
「現状、アルティシアを落とすために暗夜教団が進めている謎のルート。守るために白夜たちが進めている神殿ルート。私たちの進めてる神官ルートの三つが存在してるわけね」
そしてこれまで『闇の使徒』と『暗夜教団』の区別もなかった光の使徒たちは、街で見つけた黒衣のレンがレイスと一緒だったのを見つけて直接叩きにきたという流れのようだ。
「話を聞く感じでは、雨涙さんたちは神殿ルートのようですね」
「そしてまだ、私たちのルートがどこにつながるのかは分からない状態と」
ツバメとレンが現状を確認。
こうしてメイたちは、神殿へと戻ってきた。
「サバトの件、片付けてきたわよ」
「ありがとうございます。これで街の危機が一つ減りました」
クエストの達成を報告すると、神官はそう言って安堵の息をついた。
「どうやら本当のようですわね」
「それでは続いて、聖女様のもとへ向かいましょう」
先行するエトワールに続く形で、メイたちは一度神官の元を離れる。
神殿を進み、たどり着いたのは魔法石による純白の輝きに照らされた部屋。
一人静かに本を読む、長い金髪の女性が聖教都市の『聖女』のようだ。
「聖女様、現状を教えていただけますか?」
白夜が問いかけると聖女エルステラはそっと本を置き、目を閉じる。
すると聖女の目前に降ってきた一枚の光燐が、弾けて散った。
「悪魔たちの脈動を感じます。悪しき者たちの狙いは大悪魔の復活。阻止しなければ、この街は闇に沈むでしょう」
「この『大悪魔の復活』を狙ってクエストを進めているのが暗夜教団。これが成るか阻止されるかが、アルティシアに隠された大型クエストの結末を決めることになるのね」
「わたくしたちはこのまま神殿ルートでクエストを探していきますわ。メイさんたちは引き続き神官から話を進めていただけると助かります」
「それが良さそうね。ただリズや雨涙の二人は敵じゃないってことは覚えておいて」
「その言葉を鵜吞みにすることはできませんが、留意はしておきましょう」
「この感じだと、またすぐに再会することになりそうね」
そう言い残して、踵を返すレン。
「――――お忘れにならないで。怪しい動きがあればすぐにでも、その背をわたくしのレイピアが貫くのだということを」
「そういうのは要らないの!」
これはあくまで一時的な共闘で、全てを信じたわけではないという流れにワクワクしている白夜。
去り際を狙って放たれたそんな言葉に背筋をゾワゾワさせながら、レンは神官のいる部屋へと戻っていくのだった。
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