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531.悪霊召喚

「くっ、なんだこいつら強すぎるぞ! 退散だ!」


 魔導士たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。


「おい魔法陣はどうするんだ!? もう完成してるんだぞ!?」

「いいから逃げるんだ! 騎士団に引き渡されるよりマシだろ!」

「……これでクエストクリアかしら?」

「暗いマップでの追跡は難しく、使う魔法も少し変わっている。なかなか難易度の高いクエストでしたね」

「この魔法陣はどうするのかなぁ?」


 メイは今も鈍く光っている魔法陣に、指で触れてみる。

 すると残された『杖』に反応し、陣が強く輝き出した。


「あれれーっ!?」

「……ちょっと、もしかしてこれって!?」

「もっと早く手を打たなければいけなかったのでしょうか!?」

「いえ、これはそういうクエストなのよ! 魔導士たちを倒した後に、本命が出てくるっていう!」


 その予想は正解だ。

 本来であれば魔導士たちを倒すのにもっと時間がかかるだろうという計算のもと、召喚のタイミングが設定されている魔法陣。

 メイたちの早い攻略によって、妙なインターバルが空いてしまった形となっていた。

 残された杖は『それ』を呼び出す媒介として輝き、魔法陣に妖しい光があふれる。

 現れたのは、深い藍色のローブをまとったアンデッド。


「これは……レイスでしょうか」

「魔術師の悪霊を降臨させるための魔法陣だったのね」


 ボロボロのフードの中に見える闇の中に、青白い目の輝きが灯る。


「それじゃ、やりましょうか!」

「りょうかいですっ!」

「はいっ!」

「――――ヒュオオオオオオッ!!」


 強烈な隙間風のような音を鳴らし、触媒の杖から放たれる魔法。

 直径20センチほどの魔力弾が、次々に飛んで来る。


「【バンビステップ】」


 流星群のような勢いで迫る魔法攻撃を、難なくかわして迫るメイ。

 迫る魔力弾をくるっと回って回避して、放つはきれいな回転撃。


「それーっ!」


 だがレイスはすでに身体を失った幽体。

 予想通り、通常攻撃は効かないようだ。

 確認は完了。

 するとレイスはその杖から、再び魔力弾を連射する。

 シンプルな軌道の魔法攻撃はそこまで怖くない。

 メイたちが余裕を持った動きでこれを回避すると、レイスは杖を高く掲げた。

 そのまま杖を叩き付けると、水面を叩いた時のような魔力の飛沫が飛び散った。


「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】!」


 夜闇の中に散らばる猛烈な輝きのまぶしさに、思わず目を閉じる。

 しかしそれこそが、レイスの狙いだ。


「――――ヒュオオオオオオッ!!」


 鳴り渡る空気音と共に、足元に広がる光。

 魔力光をまとった無数の悪霊が現界し、水中に人を引き込もうとするような動きで手を伸ばす。


「あれ、足が……!」

「遅いです……っ!」


 着地際にちょうど、悪霊の手に触れられたメイたち。

 レンも防御態勢を取っていたために、悪霊に足をつかまれる形になった。

 レイスの【死者の招き手】は、呪いの魔術によって移動力を三分の一にする回避型殺しのスキル。


「これ、マズいわね……っ!」

「「ッ!!」」


 レンがそう言った瞬間、始まる猛攻。

 再び放たれる魔力弾の連射。

『呪い』の状態でこの攻撃を回避することは、あまりに難しい。

 本来であれば、戦況が一気に変わってしまうほどの展開だ。


「【装備変更】【バンビステップ】!」

「【加速】【リブースト】!」


 しかしメイは【鹿角】装備にすることで、ステップスキルの速度を上げて対応。

 ツバメも二段階の直線加速を使うことでこれを回避してみせた。

 するとレイスは、さらに攻勢を強める。


「ヒュオオオオオオ――――ッ!!」


 凝縮した魔力光の糸が、付近一帯に張られていく。

 それは触れれば爆発して隙を作る、トラップスキルだ。


「銀行に忍び込む映画で見る、赤外線センサーのようです……っ!」


 当然、この状況からレイスは魔法弾による攻撃を再開する。


「【アクロバット】からの【バンビステップ】!」


 メイは張られた糸のスレスレを側方宙返りで回避して、着地後に速いステップで距離を取る。


「【跳躍】! なっ!?」


 一方のツバメは思ったより【跳躍】が伸びずに接触。


「【エアリアル】!」


 しかし爆発の瞬間に二段ジャンプを発動し、魔法弾をかわしてみせた。


「これはなかなか、やっかいなモンスターね……!」


 一方のレンは【浮遊】で避けられる攻撃ではなく、必死に駆け回る。


「マズっ!」


 腕を弾いた魔法弾が炸裂し、1割強のダメージを取られた。

 魔力の糸と、連射可能な魔法弾。

 物理攻撃は効かず、戦いのカギになる魔導士も移動力制限で回避がままならない。

 やっかいが過ぎる敵だ。


「レンちゃんだいじょうぶー?」

「このままだと厳しいわね……でも!」


 レンにひらめきあり。


「私のところに集まって!」

「りょうかいですっ! 【バンビステップ】!」

「わかりました! 【加速】【リブースト】!」


 三人は一か所に集結。

 魔力糸によって大きな回避も動きも許されない状況の中、レイスは当然のように魔法弾を三人に向けて連射。

 怒涛の勢いで、魔力光が迫りくる。


「頼んだわ!」

「おまかせください! 【装備変更】っ!」


 縦に並んだ三人。

 その先頭に立ったメイが手にしたのは、【魔断の棍棒】だ。


「それっ!」


 いくらその連射が速くとも、魔法学校ですら猛威を振るった棍棒さばきを崩すことなどできない。


「それそれそれそれそれ――っ!」


 放った魔法弾は見事に全弾打ち返され、レイスに直撃して爆発。

 そのHPを半分にまで減らしてみせた。


「ヒュアアアアアア――――ッ!!」


 それは怒号にも聞こえる、恐ろしい咆哮。

 魔法糸がさらに狭い間隔で張り巡らされ、放つ魔法弾も弾速が向上。

 大量の魔力光が左右から挟み込むようにして飛んでくる。


「【バンビステップ】!」

「【加速】【リブースト】!」


 それでも二人は、回避に集中することでどうにかかわしていく。


「この状況で、それも使うの!?」


 一方、メイとツバメがオトリになってくれたことでどうにか回避を成功させたレンは青ざめる。

 レイスの上げた手は、再び【死者の招き手】を使う合図だ。

 ここからさらにもう一段階移動力を下げられたら、的になるしかない。


「マズっ!」


【浮遊】は間に合わない。

 伸びる悪霊の手に、思わず唇を噛む。


「レンちゃんっ!」

「お、おねがいします……」


 駆けてくるメイの意図に気づき、蚊の鳴くような声でつぶやいたレンは両手を広げる。


「よいしょっ! 【ラビットジャンプ】!」


 メイは、レンをお姫様抱っこの形で抱えて跳躍。

【死者の招き手】を見事に回避してみせた。

 すると掲げたままでいたレイスの杖が、煌々と輝き出す。

 それは【死者の招き手】を喰らったプレイヤーを一気に叩き潰す、必殺の連携だ。

 激しい風切り音と共に振り下ろされる杖。

 足元からマグマのように噴き上がるのは、猛烈な魔力光。


「【投擲】!」


 しかし二度目の呪いをしっかり回避していたツバメは、すでに安全圏に後退済み。

【雷ブレード】で動きを止める。


「ありがとうツバメちゃん! 【装備変更】【投石】!」


 レンを退避させたメイは、【狐耳】で追撃を決めた。

 青の炎をまとった石が直撃し、体勢を崩したところに続くのはレンだ。


「これで終わりよ! 【コンセントレイト】【フレアバースト】!」


 メイに抱きかかえられた時に発動した【コンセントレイト】を開放し、放つ猛烈な爆炎で全てを焼き尽くす。

 夜闇を照らし出すほどの赤光が空を焼き、HPを燃やし尽くされたレイスはそのまま消え去った。


「やったー!」

「やりましたね!」

「おつかれさま!」


 見事な連携で勝利した三人は集まってハイタッチ。

 クエストの達成に喜び合っていると――。


「――――こんなところで、何をしているのですか?」


 聞こえた威圧的な声に振り返る。

 見れば屋根の上から、白の衣装をまとった三人の少女が厳しい視線を向けていた。


「強力なアンデッドであるレイスを呼び出したものの、扱い切れずに片付けた……といったところでしょうか」

「普通にクエストボスを倒しただけだけど……」

「現場を押さえられた上でまだそのような言い訳をしようとは……見苦しい」


 白の剣士の言葉に、二人の仲間も武器を取る。


「覚悟しなさい、アルティシアを狙う闇の者たち! 私は星野エトワール!」

「同じく、花森ミヤビ!」

「同じく、雪崎ヒカリ!」


「「「悪しき魔導士は、私たち光の使徒が打破いたします!」」」

「ええええええ――――っ!?」

「…………」


 クエストではなく、単純にして唐突な対人戦。

 容赦なく飛びかかってくる三人の白き者たちにメイは驚きの声を上げ、レンは白目をむいたのだった。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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【メシマズ大国の料理店~キッチン・みけの店ごと転移譚】~
― 新着の感想 ―
[一言] ナイトメアコンダクター「私はナイトメアコンダクター貴女に絶望(黒歴史)を届けに来ましたわ。」
[一言] この3人の使徒さんは絶対人の話を聞かずに行動するタイプで場をかき乱すやつだね 
[一言] 中二病同士の戦いは更に激しく
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