1493.街を守ります!
ついに完成を目前に控えた街。
あとは聖十字による、結界の発動を待つのみだ。
しかし突然地面から噴き上がった黒い液体が、一粒の巨大な雫に変化。
地面に落ちて、広がった。
それから大きくうごめくと、跳ね上げるようにその形状を変化させる。
「うわーっ! すっごい!」
「街を狙いに来てるで、間違いなさそうね」
「は、はひっ」
「異世界らしい、異形の魔物ですね」
登場した時は黒い謎の液体だったその存在は、見上げるほどの大きさを誇る個体の人型になった。
その黒い身体は、重装騎士にコールタールを浴びせたかのような姿。
全身に走る無数の紋様が、恐ろしさを感じさせる。
「動くみたいだよ!」
シオールが声をあげた。
伸ばした右腕の紋様が輝き、放たれる大型の炎弾。
「「「っ!」」」
それは彗星のように飛び、メイたちの頭を超えて炸裂。
民家として使えるように作った、街端の建物を何軒も吹き飛ばした。
「私たちじゃなく、最初から街の方を狙ってるよ!」
「……なんだよあいつ! ふざけんなっ!!」
「あたしたちが……力を合わせて作ったのに!」
「俺の作った家が……」
いきなりの攻撃に、怒りをたぎらせるハウジング組。
粉砕して散らばった素材が、風に乗って舞う。
それを見たメイは、大きく息を吸った。
「みんなで守りましょう……わたしたちの街を――――っ!!」
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
メイの言葉に、街作り組も陣を組む形で展開。
こうして街を破壊するために現れた大型ゴーレムとの、戦いが始まった。
敵はすぐさま、左手を伸ばして次弾の狙いをつける。
「させないってーの! 【ファイアウィップ・エクスプロード】!」
続けざまに大型炎弾を放とうとしたゴーレムの左腕を、炎のムチの炸裂が弾く。
すると体勢を崩したゴーレムは、それでも右側の手を伸ばして攻撃。
今度は大型の光弾が三発、街の外縁目がけて飛来する。
「【チャリオット】【クイックガード】【天雲の盾】【盾】【盾】っ!」
これを防いだのはまもり。
するとすぐさま、レンが反撃の体勢に入る。
「【誘導弾】【フレアストライク】!」
狙いは頭部の、紋様の集合地点の輝き。
ゴーレムはこれを嫌がるように、空いた左腕で頭部を守る。
「【雷光の矢】!」
「【炸裂の矢】!」
直後にハウジング組と掲示板組の弓術師が続くも、腕に当たった矢のダメージは僅少だ。
ゴーレムが、頭部を守っていた腕を退ける。
そこには紋様の集結点に煌々と輝く、粒子の光。
「光線だっ!」
「まかせてっ! 【爆震脚】【聖転鏡】!」
放たれた猛烈な光線は、そのまま一直線。
慌てて【爆震脚】で飛び込んで来たシオールが、どうにか空へ反射してやり過ごした。
「助かったわ!」
「とにかく今は、敵に寄るべきですね! 【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】!」
距離が空いた状態では、敵は街を続け様に攻撃する。
そのためツバメたち前衛組は、距離を詰めることで敵の狙いを自分たちに向けさせようと動き出す。
「【連続投擲】!」
投じる【風ブレード】が脚部に刺さり、ようやくゴーレムが前衛組を認識。
その足を持ち上げると、そのまま強く踏みつける。
「「「っ!」」」
【踏みつけ】はシンプルな攻撃だが、足の紋様の輝きと共に地面から、吹き上がる魔力光がやっかいだ。
ツバメとスワローは、防御でこれに対応。
しかし足元から突き上がる攻撃は面倒で、反動によって身体が小さく浮き上がってしまった。
そこにゴーレムはすかさず、足元を狙った左拳の一撃を放つ。
「ツバメちゃん! スワローちゃん!」
しかしメイは、あらかじめ小さくジャンプしておくことで浮き上がりを回避していた。
フラついたままでいるよく似た両者を、一人で抱えて大きく横っ飛び。
シンプルだがメイの【腕力】と跳躍力だからこその大きな回避で、どうにか直撃を免れる。
「ありがとうございます……!」
「ありがとうですなーっ!」
左拳の猛烈な振り降ろしはそのまま地面に突き刺さり、再び地面が大きく揺れて体勢を崩す攻撃となった。
そしてゴーレムは、メイたちを狙わない。
狙いはあくまで、街の破壊。
ゴーレムはメイたち街づくり組を、目的の邪魔をする存在として捉えているようだ。
余った右手を振りかぶったゴーレムが、そのまま力いっぱい振り下ろす。
するとロケットパンチのように千切れた腕が、そのまま街へと飛んでいく。
「そうはさせないよっ! 【ファイアウィップ・エクスプロード】!」
「そうはいかないわっ! 【誘導弾】【フレアストライク】!」
ムチによる攻撃が飛来する紋様の手に直撃することで、大きくひび割れる。
そこにレンの炎砲弾が直撃することで、爆発して粉々になった。
「「よしっ!」」
思わず声を合わせたローチェとレンは、【ミサイルアーム】への対処に成功。
「いえ、まだですっ!」
しかしゴーレムはさらに頭部の紋様の集結点から、速い炎弾を射出。
レンやローチェはもちろん、シオールやまもりも間に合わない速度で飛ぶ炎弾。
進む先には噴水があることに気づいて、思わず息を飲むが――。
「まだいるぽよっ! 【砲弾跳躍】――っ!!」
ここに横から駆け込んできたスライムが、炎砲弾とぶつかり合うことで相殺に成功。
「ス、スライムさん、お見事です……っ!」
「まだ続きますっ! この感じは私たち狙いの可能性が高いので下がりましょう!」
ゴーレムの全身に走る紋様が輝き出し、蒸気を噴き出したところでツバメが声をあげた。
嫌な予感に、慌てて下がる前衛組。
予想通り直後、その黒く硬質な身体から、猛烈な勢いで緑色の炎が吹き上がった。
片ヒザ状態のゴーレムから噴き上がった炎が、天を焦がす。
「ここを狙いましょう!」
「りょうかいですっ!」
「スワローちゃん!」
ツバメの注意が活き、敵の攻撃を回避。
ここでメイたちが動き出す。
正面からの接近に対し、立ち上がったゴーレムは再び大きく右腕を持ち上げる。
【叩きつけ】は食らえば大ダメージ、避けても揺れで体勢を崩す、シンプルだが面倒な技。
「先行します! 【加速】【リブースト】!」
「了解ですな! 【加速】【急加速】!」
スキルとステータス差によって、先にゴーレムの足にたどり着いたツバメが攻撃体勢に入る。
「【稲妻】!」
わずかに遅れて、スワローが続く。
「【アサシンダンス】!」
「……足りませんか!」
狙ったのは連携による、【叩きつけ】の強制的な停止。
しかし若干ダメージが足りなかったのか、二人は慌てて通常攻撃を追加。
どうにかギリギリで、【叩きつけ】を止めることに成功した。
ツバメとなーにゃは、苦笑いしながら振り返る。
二人が右から迫ることで視線を誘導し、敵の攻撃を停止。
そして狙いから外れたメイが、左から敵へ迫り来るというのが、三人の狙いだ。
「【裸足の女神】【蛮族流】!」
一瞬でゴーレムの足元に駆け込んだメイは、左手に【地帝の斧】右手に【世界樹の剣】で攻撃体勢に入る。
「【大切断】!」
「「「おおおおおお――っ!?」」」
メイの放った斧の一撃は、重量級のゴーレムの足を容赦なく払い上げる。
そのまま地面にめり込むほど深く倒れ込んだところに、叩き込むのは必殺の一撃。
「からの【ソードバッシュ】だああああ――――っ!!」
叩き込まれたケタ違いの衝撃波が、吹き荒れゴーレムを派手に転がした。
「さっすが!」
「これぞメイちゃんよ!!」
やはり頭部への一撃でない分ダメージは軽減されたものの、それでも十分押しているという状況を生み出した。
この流れであれば、ゴーレムは街を狙い続けることはできないだろう。
メイを剣を掲げて振り返ると、ブンブン振って後続組に笑顔を向ける。
「いい感じだねっ! 街は、わたしたちが守りますっ!」
「「「おおおおおおおお――――っ!!」」」
メイの気合十分の宣言に、誰もが大きな声をあげて応えた。
街を守るための見事な防衛と、隙を突いての大きな一撃。
ゴーレムとの戦いは、良好なスタートを切ることに成功した。
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