1476.酒場を作ります!
「冒険者酒場かぁ……できるのが楽しみだねーっ!」
「どんなものになるか、今から楽しだわ」
「五月神社も人気のようですし、また良いものが作れると良いですね」
「な、何より民さんと一緒に食事ができるのは最高です……っ!」
異世界での新たな街づくり。
そこでメイたちが始めたのは、ご飯も食べられるアイリッシュパブのような冒険者酒場を作る事。
いくつものパーティが同時に楽しめるように、今回はそれなりに広い物を作るつもりだ。
「木製の手書き看板なんかも欲しいわね。素材はこれでどう?」
「いいと思いますっ!」
レンが選んだ調度品は、まさに古きパブといった雰囲気のもので、オシャレ路線を希望するメイもうれしそうだ。
「よし、まずは壁と床をざっと作ってみるか」
ここで資材を持ったハウジングプレイヤーが、メイたちの決めた石材を選択。
ここからの工程は、シミュレーションゲームに近い形だ。
壁は視界に出てくる枠を『高さ』と『長さ』で調整すると、選択した石材を使ったプレビューが登場。
「この位置で良しと……」
しっかりと位置取りを確認したところで、配置する。
床に関しても、石材や木材をパネル化したものを用意しておけば、後は交互に並べていくだけ。
すでに【技量】の高いハウジング勢がそのまま使える資材にしているので、まさに『設置のみ』で済む形だ。
この壁部分にはもちろん、窓を付けたり絵を掛けたりという後工程を施すこともできる。
こうして外壁と床を作ったところで、メイたちはさっそく各所に調度品を置いてみる。
設置に関しては、すでに物が出来ているため好きな場所に置けば良し。
「あっ! いいかもっ!」
「確かに、これだけでも結構違ってくるわね!」
「木製のカウンターが良いですね。イスもちゃんと足が置けます」
「こ、こんなところで、食事ができると最高ですね……っ」
まだ屋根も付いていないが、酒場には早くも良い雰囲気が出てきた。
「完成時には、メイさんのショートソードをお借りしてもいいですか?」
作りかけの酒場を見てそんな提案をしてきたのは、ずっと楽しそうにしているマーちゃん。
「しょーとそーど?」
「メイさんの使っていた剣を飾れば、それだけで人が集まります」
「なるほど、考えたわね……」
「それは面白そうです」
うなずき合う、五月晴れの面々。
現状たどり着くだけでも大変な、異世界の片隅。
あらためて辺りを見回して見れば、プレイヤーの数が結構増えていた。
なーにゃたちやハウジング勢はもちろん、新たな街づくりをメイたちとしたいプレイヤー達も数十人ほど来たようだ。
中には情報と足の速い掲示板組も、数名見られる。
「……さて、どうしたものかな」
「どうかしたんですか?」
マーちゃんのもとにやって来たのは、一人のハウジング勢。
「いや、皆気合が入ってるせいか良い石材を使うつもりらしくてな」
「なるほど。石と木はいくつあっても足りなくなりがちですが、今回は石材が不足気味なんですね」
種類はいくつもあるが、皆が良い石を使うとなればさすがに足りなくなってしまう。
実は街づくりで時間を取られるのが、この資材集めだったりする。
「五月晴れの酒場に合わせて良石を使うとなると、足りなくなるのは【御光石】ですね」
「ああ、これも持ち帰るのが難しいんだよな」
「そういうことなら、私たちが回収に行きましょうか?」
ここで名乗り出たのはレン。
「どうせなら良い物を作りたいっていうのは皆同じでしょうし、資材の回収ならもう経験があるから」
「ハウジングも作製より指定が多いので、それくらいの手は空いています」
「ではお願いします。ただ問題はここにも魔物が来るという点ですね。完成して街にならないと結界が発動しないんです」
「そういうことだったら、チェルシーちゃんにお任せ! 酒場作りの指示役にメイちゃんも残ってくれれば、攻守で安心でしょっ?」
「その代わりに、私となーにゃちゃんが回収に向かうのはどうかな?」
メイが酒場作りの指示役を続けつつ、守衛役も中距離攻撃が得意なローチェと共に兼任。
代わりにシオールとなーにゃが、石材回収に向かう。
「いいんじゃないかしら」
そんなシオールの提案に、うなずく五月晴れ。
こうしてレンたちは、再び荷車を借りることにした。
「今度はこいつを使ってくれ」
すると肩に小さな翼付きのヘビを乗せたハウジング勢らしき男が、前回よりも豪華な荷車を持ってきてくれた。
「【御光石】は、橋を戻って北部へ進んだ山の上にあります。取り出すのは簡単ですが、魔物が出ますので気をつけてくださいね」
「分かったわ!」
こうしてレンが馬にまたがると、シオール達は並んで荷車に腰を下ろす。
「こういう時、荷台に乗るのはなぜ楽しいのでしょうか……」
そんなツバメの『あるある』に、笑いながら出発する。
「「いってらっしゃーい!」」
手を振るメイとローチェに見送られて、勢いよく走り出す荷車。
「「「「っ!?」」」」
速度に乗ったところで、全員が見せる驚き。
「ちょっと! この子って空を走るの!?」
なんと馬は異世界産なのか、まるで空中に足場があるかのように、そのまま低空を駆けていく。
思わぬ事態に驚きながら、レンたちは【御光石】のある山目指して走り出したのだった。
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