1433.隠されたルートを進みます!
「ここからは一度、水の中を通る形ですね」
たどり着いた地底湖で見つけた三つ目の道は、巧妙に隠されたポイントだった。
そしてそれはこれまで、話題にもなっていないルートだ。
「泳ぐのならまだしも、潜るのは苦手なプレイヤー多いもんな」
「上手な隠し方ぽよ!」
「本命っぽい道をダミーにする。この隠し方なら、見つかる可能性は数パーセントに満たないでしょうね」
メイを先頭にして地底湖に潜ると、水中を進む時間は意外とわずか。
少し泳ぐとすぐに、岩肌が続くフロアにたどり着いた。
「またここからは、急ぎで進む感じね」
皆の無事を確認して、注意しながら狭い道へと入り込む。
敵の登場に注意して前後を注意深く確認するが、今回はその気配なし。
迷路のような細い道を、とにかく進んでみる。
「結構入り組んでいますね」
緩やかな降りの細道は枝葉の様に広がっていて、なかなかに複雑だ。
「「「っ!?」」」
揺れと共に聞こえた、地響きのような音。
噴火を思わせる動きに、思わず身を固くする。
「ビックリするからやめてよ! もう噴火が始まったのかと思ったわ」
この狭い道の途中で溶岩が迫り来るとなれば、逃げ切れるのはメイくらいだろう。
冷や汗を拭うようにしながら息をつくレンと、驚きに思わずレンのローブを握っていたことに気づいて、慌てて手を放す樹氷の魔女。
自分の意志とは関係なく揺れでプルンプルンしていたスライムに、メイとツバメがちょっと楽しそうにしていた。
「おっ、あそこにあるのは【魔封石】だな! ちょっと取って来よう」
そう言って、わずか一本道を外したパーティ。その直後。
「……何かが、来るっ!」
メイの言葉に皆構えを取るが、そこにやって来たのは敵ではない。
「この音……」
「水だぁぁぁぁぁぁ――――っ!!」
逃げ場など見つけられないレベルの量の水。
それはもはや、濁流と呼べるレベルの地下水の波だった。
「「「ごぼぼぼぼ――っ!」」」
その勢いはすさまじく、全員が容赦なく流されてしまう。
これだけの急流では、さすがに泳いでどうにかできる感じではない。
どこまで続くか分からない道を、とにかく『流れ出してしまう』ことを目的に突き進もうと意識を変更。
途中で引っかかってしまって窒息するような形にだけはならないよう、とにかく流される。
「やっぱ【魔封石】だったな! 儲け儲け!」
「無事に戻れたら、結構いい小遣いに……あれ?」
隣りの道に行っていたパーティが戻ってくると、すでにメイたちの姿はなくなっていた。
「ぷはっ!」
どういうルートで流されたか分からなくなったところで、ようやくどこかに放り出されたメイたち。
「皆さん、大丈夫ですかーっ?」
「もちろんぽよっ!」
「大丈夫でーす!」
「俺、メイちゃんと一緒に流されたことあるけど質問ある? いける……!」
メイが問いかけると、皆して手を上げて応える。さらに。
「び、びっくりしました……」
「「「っ!?」」」
驚きの声を上げているメイド服に、全員が硬直。
「……あれ、メイさん?」
メイド服少女があげた声に、思わず声を上げる一同。
「「「迷子ちゃん!?」」」
そこにいたのは今も絶賛迷子中のはずのメイド服少女、迷子ちゃんだった。
「最近地下をウロウロしてるって聞いてたけど、こんなところにいたのかよ……っ!」
まさかの再会に、驚く掲示板組。
「地下で時々見かけた影を追っていれば、地上に出られるかもと思って歩いていたんですけど……ここはどこですか?」
「アイアスラントの、バザールブンガ火山よ」
「アイアスラント!? ずいぶん遠くまで来てしまっていたんですね……」
驚きの声を上げる迷子ちゃんを、しれっと取り囲む掲示板組。
『迷子ちゃん移送の陣』は、すでに身にしみついているようだ。
「せっかくだし! 迷子ちゃんも一緒に行きましょうーっ!」
「いいんですか!? ぜひお願いしますっ!」
歓喜に跳び上がる迷子。
こうしてまさかの形の追加を得たメイたちは、あらためて辺りを見回す。
たどり着いたのは、変わらず岩壁の続く道。
「迷子ちゃんさんは、どちらから来られたのですか?」
「こっちです! この道の先は、少し岩壁の感じが違うんですよ!」
「岩壁の感じが違う……気になるわね」
「見に行ってみようよ!」
ここから続く道は三本。
雰囲気が違う空間に続くとなれば、何か見つけられるかもしれない。
さらに迷子は、隠された道などを知らぬ間に通りがち。
こうしてメイたち一行は、迷子が来た道を目指して進むことにした。
「た、確かにこれまでの道とは、岩壁の色味が違います」
「……あれって、レンちゃんが使うルーンって魔法に似てない?」
歩いていると、メイがそう言って足を止めた。
確かに岩壁のひび割れなどに紛れた、傷痕のようなものがある。
「確かにそう見えるわね……」
「これは、しっかり目を凝らしても見つけられないですね」
逆に必要以上に大きく刻まれた文字は、普通に近づいてみてもすぐには気づけない。
離れて、斜めの位置から見ると少しだけ不自然な傷が、文字のようになっていると気づける感じだ。
これは、巧妙に隠されていると言っても過言ではない。
「い、急ぎのクエスト中に、こういう仕掛けに気づくのはとても難しいです……っ」
もちろんこんなに面白そうな仕掛けを、起動しない理由はない。
掲示板組も、とにかく面白そうな展開を求める冒険者。
全員がワクワクを顔に隠せずに、うなずき合う。
すぐに各自が辺りに視線を配り、レンがルーンに触れるのを待つ。
「……あれ、ついに掲示板組まで私を背後から見守る形に……」
そんなことをつぶやきながらレンがルーンに触れると、魔力光が灯り発動。
生まれた強力な光が、岩壁に大きな穴を穿った。
「隠し通路……! しかも、階段!」
光苔はなく、道は暗黒の中。
すぐに掲示板組の後衛組が、松明に火を灯す。
これは敵襲があった時に、何より頼れるメイたちがすぐに武器を取り出して戦えるようにという判断だ。
「進みましょう」
メイたちを先頭に、暗闇の階段を降りていく。
しばらく進むと、だんだん感覚がなくなってきた。
そしてどれくらい下りたのか、いよいよ分からなくなってきた頃――。
「ここは…………遺跡ですか?」
ツバメがつぶやいた。
階段を降りた先に広がっていたのは、建物の並び。
岩を削り出して作られた、見たことのない造形の建物には、紋様が刻まれている。
ここにも光苔の姿はなく、炎が燃えているのみ。
夜のように暗く、どこまで広がっているのか分からない建物たち。
その中を、謎の影が動き出した。
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