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異界迷宮を歩むもの  作者: 戸美丸
23/23

23話

次の投稿は10月26日か27日になります。

 今日はやけにオークに遭遇する。


「よいしょっと……!」


 むかつく豚面にバットを叩き込む。

 一撃では倒せないが、ボス戦のときにクセを見切っているのでそこまで苦労することもない。


(……とはいえ、もうバットが限界か……)


 倒れ込んだオークに蹴りでトドメをさしながら、そう考える。

 この1週間酷使し続けたバットはもう限界を迎えている。

 オークの棍棒と打ち合えば確実に壊れるだろう。


 とはいえ素手どけでオークに勝てるかは微妙なので、出来るだけ避けて通りたいのだが、先程からオークしか出てこない。


(同じ階層でも生息域とかあんのか……?)


 回りをよく観察すると、ヴェノムバイパーがいた場所より木々の葉は少ないし、背も低いような気がしないでもない。


(まあ、だからなんだって話なんだけどさ……オークが嫌でも、もう探してないのはこっち方面だけだし……)


 1週間による探索の成果として、8方向に分けたエリアのうち7つはもう確認済みだ。

 残っているのは今進んでる道だけ。つまり、俺が見落としていなければこの先に第12層へと続く道があるはずなのだ。


(ん……?)


 オークを警戒しながら歩いていた俺は、視界の端にキラキラと輝く何かを見つける。


 近づいて確認すると、それは銀色の宝箱。


(このタイミングでかよ……最悪だ、どうしよう……)


 思い出されるのは第2層にあった黒ゴブリンの罠。

 この宝箱も罠である可能性はある。


 できれば今の状況で無茶はしたくない。本来ならここは無視して進むべきだろう。

 素通りすれば、利益がない代わりに不利益もないのだから。


(でもそういうんじゃないんだよなぁ……)


 罠である確率は低くはない。

 しかし今俺に必要なのは、活力だ。

 この状況を乗り越えるための意気込みが必要なのだ。


 故にここでみすみす宝箱を見逃すことなどありえない。


 ーーという言い訳をして、銀色の宝箱に近づく。


「頼むぜぇ、お宝ちゃぁん」


 気持ち悪い台詞とともに宝箱の蓋に手を触れる。


(……罠ではない、か。じゃあもういいよな!)


 勢い良く宝箱を開ける。

 入っていたのは最近めっきり姿を見せなくなっていた黒いガラス玉が3つ。


「お、お、おおおおぉぉぉぉおおおお!!3つとか馬鹿じゃないの!?最高かよお前っ!!」


 誰に言ってるのかわからないが、予想以上の中身にテンションが上がる。

 幸い近くにオークはいなかったようで、声に反応したオークが襲いかかってくるということはなかった。

 小一時間もたつと興奮も収まり、どのガラス玉を使うか考え始める。


(とはいえ、カズみたいに鑑定スキルとかねえからなぁ……結局のところ運任せか)


 辺りに魔物のがいないことを確認し、念のため木の上に登ってから使うことにする。


(さあ、カモン新スキルっ!)


 このときの行動は、地上へ戻った後カズに大笑いされることになる。


 俺は使うと決めた黒いガラス玉を右手に持ち、残りの2つは左手で持っていたのだ。


 つまりーー


「がああぁぁぁああっ!?」


 ーーーーーー


 帯電I(プラズマ)

 魔力を消費して自身の体に帯電する。

 帯電速度、最大帯電量は熟練度に依存する。


 空間収納E

 所持スキル:空間収納Eと統合。

 空間収納Dを獲得。最大収容量1トン。


 月光の使徒D

 月の光を浴びることで、能力が強化される。


 ーーーーーー


 頭が割れるような痛みが襲う。

 入り込んでくる情報は今までのスキル獲得時とは比べ物にならないほど多い。

 堪らず木の上から落ちてしまった。


 いつもなら一瞬で終わる痛みは、1分以上続いてようやく収まった。


「くっそぉ……痛ぇ……」


 入ってきた情報で自分が獲得したスキルが1つではないことには気づいている。

 つまり、3つ同時に吸収した結果がこの痛みということだろう。


 しばらくすると激痛による違和感も消えたので、獲得したスキルの確認をする。


「ステータス」


 ーーーーーー


 名前:内田千秋

 位階:15

 技能:空間収納D、魔力感知F、清潔化Ⅲ、帯電I

 特性:自己修復C、不眠D、高速処理F、月光の使徒D

 称号:階層ボス単独撃破者


 ーーーーーー


「あ、清潔化上がってる」


 まず気づいたのはそこだ。

 暇さえあれば清潔化の魔法を使っていたからだろうか、清潔化のレベルがⅢに上がっていた。


 それにしてもーー


「月光の使徒……超かっけえ……!」


 迷宮内は月がないので実質ゴミスキルなのだが、響きがいい。

 これがあるだけで強くなった気すらしてくる。


 さらに帯電。これも非常に気に入った。

 発動させると、体にパチパチと雷を纏うのだ。ビジュアル的にかっこよすぎる。

 それに、帯電は戦闘に関しても使えないことはないのだ。

 今はまだ静電気程度の威力しかないが、熟練度を上げればどんなに弱くてもスタンガン以上の威力にはなるだろう。


(新しい能力で遅れを取り戻せればいいんだけど……)


 そんな思いを胸に、俺は探索を再開した。


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