EX STAGE43:時の監視者ディルvs悪の因子【憤怒】
"それが私と憤怒の出会いであり、私の最大のミスだった。
「初めまして憤怒。 私の名前はディル。 時の監視者にして、世界魔法連合の一員……」
「知ってるよ、お嬢ちゃん。 さてと……今、先程まで君が見ていたものはこちらにとって知られていると非常に困るものなんだよね~なーんで見ちゃうのかな~」
飄々としながら、憤怒はその手に魔法の光を宿している。
あの属性は、闇……。
「無駄よ……私にその魔法は効かない」
「おっと、ディルちゃん。 私がなんの魔法を使おうとしたのか、見ただけで分かっちゃった感じかい?」
「ええ。まあ、私の弟子がそれと同様の魔法を使うからね……おあいにく様、記憶を消す魔法は私には効かないようにしてあるの」
ふふっと、憤怒は笑みをこぼして、すぐに真顔になる。
「さて……じゃあ、仕方がない……殺すしかないね……」
「殺す? 貴方ごときが?」
決して私は慢心している訳ではない。
私は戦闘時の慢心ほど愚かな行為であると考えているからだ。
だから、これは慢心ではなく、確信しているだけなのだ。
私の勝利を。
「減らず口を!!」
憤怒は私に向かって襲い掛かる……が、すぐにその肉体の活動は停止した。
いや、死んだわけではない。
空中で止まっているだけだ。
「時空間魔法:明鏡止水……私以外の時間を停止させた」
風も雲も太陽も、空を飛ぶ飛竜たちでさえも、まるで風景画のようにピタリと止まる。
「時空間魔法の真骨頂はこれからだよ、憤怒」
私は憤怒の周りに、幾重にもおよぶ魔法の光を現出させる。
一つ一つが、時間の力で押し固められた聖なる光。
普通ならば、一瞬で消えてしまう光を時を止めることによって空間に留めることができる。
それらを濃縮させると、光属性の力である「聖なる光」が宿り、悪しき者を滅ぼす力を与える。
その効力さえも今は停止させているけど……。
「明鏡止水、解除」
パチン、と私が指を鳴らすと再び時は動き始める。
憤怒は周りの光景に動じてしまった。
故に動くことができない。
否、動けても意味がないのだ。
「聖なる光に裁かれよ……時空間魔法:千景聖空」
光は憤怒を包み込み、破邪の光を満ちさせる。
「ぐぅぅぅぅぐ、ぐがぁぁぁぁぁ!!」
憤怒は苦しむ。
邪悪……という名は、時の監視者である私は知っていた。
その昔、始まりの神ファーストから終わりの神エンドを奪い、更にはファーストを死に追いやった伝説にして最悪の存在。
その邪悪の苦手とした属性は光。
だからこそ、私は光属性で攻めるのみ。
「時空間魔法:異世界からの魔弾」
上空を暗雲が覆い、その暗雲より光が立ち下る。
「こ、これは……」
「異世界からの魔弾は、異世界の攻撃をここに過去から転用し、相手に攻撃する魔法……今回呼んだのは……私の大好きな人の魔法……光属性最強の攻撃魔法【神之憤怒】だ!!」
絶大なる聖なる力を宿す光は、その形を波状へと変化させ、憤怒を貫いた。
吐血し、肉体が消滅しかかりながら、憤怒は未だ余裕である。
なぜなら、やつの顔は笑っているからだ。
「光属性に、彼の天野翔琉の魔法とは……いやはや、楽しませてくれる」
「はぁ……はぁ……なんで、お前……そんなに……」
「私は憤怒……怒りに応じて能力を発動できる悪の因子。今、私は自らに怒りを覚えている。 力なき、私にね……だから、私は死ねないのさ」
「なら、封印するまでよ!!」
私は、知っている。
邪悪を封じた方法を……そして、その時に使った魔法を。
だが、私はその魔法を発動するに至らなかった。
何故ならば、私は隙を付かれて拘束されてしまったからだ。
新たなる悪の因子である、怠惰に。
「ふぁぁぁぁ……憤怒~遅いから見に来てみたら~なにこの女?」
「おお、怠惰。 ちょうどよかった。」
「くそ、新手か!!」
私は奴に拘束されている。
なにか見えない鎖のようなものでガチガチに固定されてしまっており、腕や足には締め付けられているような痕が浮き出ている。
「動こうとしても無駄だよ~僕殿の魔法は……」
バキッ、と私は身体に取りついていた鎖のような魔法を壊した。
「え?」
「拘束系の魔法は、私の仲間の風の大魔導士を抑えとくためによく使う魔法だからね。 逆に拘束を解く方法も熟知してたりするわよ」
「そ、そんな……僕殿の魔法が……」
「さて、憤怒に怠惰か……同時に相手になってもいいわよ」
「ふふ……バカにしてくれてるようだな。 でも、どうせならそのバカにしてくれてるようなものを利用して、こんな状況はいかがかな?」
そう憤怒は言い、上空に召喚用の魔方陣を展開させる。
そして、その魔方陣からは、新たに5人が現れ、この地へと降り立った。
「憤怒」
「怠惰」
「暴食」
「嫉妬」
「傲慢」
「強欲」
「色欲」
「悪の因子……総出で、君を倒してあげるよ……時の監視者のディル」
1vs7の圧倒的数の暴力を行使してきた憤怒。
だが、私はこれを逆境とは思っていない。
むしろ、悪の因子をここで全て倒せるチャンスが舞い降りてきてくれたんだとさえ思っていた。
早く、こいつらを倒して……あれを何とかしないと。
翔琉が、危ない。
"




