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EX STAGE41:荊の道


 おいらたちがこれまで必死になって抗ってきた戦いというものは何なのか。

 この石碑を見てしまい、改めて考えることになった。

 いや、確かに……この石碑の通りにやれば、勝てると思うよ。

 でもさ、それってどうなんだってならないかな。

 見ず知らずの、顔も知らない、名前も知らない、忘れさられた森の文明の、謎の石碑の言葉にしたがって、自分達の未来を切り開け……だなんて。

 正直に言えば、不気味というより、罠の可能性を感じてしまう。

 仮にノース文明の者たちが、魔術なる技術を使って遠い未来を見据えた上、この石碑を残しました……と、してもだ。

 おいらたちがこの文章に沿って物語を……言うならば、悪の因子や邪悪たちを倒したとしようか。

 それで、誰が胸を張って勝利したと喜べるのだ。

 そんなものは、勝利といわず、単に攻略したというだけなのだ。

 勝利と攻略は、紙一重に違う。

 勝利とは、心から勝ち誇れるもの。

 攻略とは、知恵で相手の策を破ること。

 おいらたちが求めているのは、勝利の後にある「めでたしめでたし」。

 つまりは、HAPPY ENDってやつだ。

 それを掴むためには、おいらたちはこんな石碑に頼ってしまうべきではない。

 「自分達の力で……」

 そう思っていたのはおいらだけじゃなかった。

 ジンライも、リュウも、クロノスも、ヨルヤも、ファーストも、フィリも、ウラヌスも……。

 みんなみんな、そう思っていた。

 だから、みんなの行動は同じだった。

 翔琉はそれを悟ったように笑い、頷いた。

 そして、次の瞬間……おいらたちは、石碑を破壊した。

 2度とその目で触れることがないように、文字通り塵となるまで粉々にした。

 「それが……君たちの選択なんだね」

 と翔琉は言う。

 おいらたちは、彼を見つめこくりと頷く。

 その目には一切の迷いはない。

 後悔なんて絶対にしたくない。

 未来は過去から指図されるものではなく、自分達の手で掴み取らねば意味をなし得ぬものだ。

 だからこそ、滅び去った文明の英知などには余計に頼りたくない。

 温故知新とは言ったが、過去から学んでいては未来など到底掴むことはできない。

 そりゃあ、たまには振り返ることも必要だと思うよ。

 でもね……今はその時ではないんだ。

 今は、まだ……。

 「なあ、翔琉……お前はこの文明を頼らせるために、俺たちやフィリを導いたのか? 俺たちに、過去の英知にすがって生きろって言いたくてここに連れてきたのか?」

 ジンライはじっと翔琉を見る。

 その目に、一切の迷いはない。

 無垢なる心のままに、彼は天野翔琉に向かっている。

 それを理解した翔琉は、にこりと笑って首を横に振った。

 その姿を見て、おいらたちは何となくだけど少しホッとしたんだ。

 もしも、ここで翔琉が首を縦に振っていたらおいらたちは、2度と翔琉とは関わらないと思った。

 何事にも答えを知る差し出す万能など、近くにあってはダメになるだけの未来しか見えないからね。

 「いや、よくぞ壊してくれたと言うべきだろう……みんな……それでこそ、俺の知る仲間たちだ。 逆にこちらがホッとしたよ」

 そう言って翔琉は笑っていた。

 どうやら彼も同じ考えだったらしい。

 もしも、ここで過去の英知においらたちが頼るのならば……自分はもう不必要であると。

 答えを知るだけならば、自分以外にいくらでも方法がある……が、共に悩み、共に動くのが真の仲間であると。

 おいらたちや翔琉は少なくとも、そう言った絆で結ばれているはずなのだ。

 だからこそ、今回のこの結果には全員が納得していた。

 だからかな。

 自然とみんな、笑っていた。

 嬉しそうに、楽しそうに。

 

 

 「さてと……んじゃまあ、改めて……邪悪たちをどうやって倒すか……だね」

 「そう言えば、ファーストは昔……やつらを倒したんだよな?」

 「ええ。まあ、邪悪だけはエンドの身体を奪ってた関係で封印したって形での勝利だけど……他の悪の因子たちには実力で勝ってるわよ」

 「それは心強い……その時の様子とかどんな感じだったんだ?」

 「どんな感じと言われると……まさしく、あの石碑に書かれた通り……悪の因子たちにはそれぞれ苦手とする弱点があったわ。 今もどうかは分からないけど……何せ、あのときから大分時間が経っているから、当然対策なんかもしてあるだろうからね」

 「そうか……」

 ほらみろ。

 過去の英知だって、完全な攻略は出来ないんだ。

 「でも、ノース文明の石碑に書いてあった、邪悪に対して通じる同じ属性を融合させて攻撃すると言うもの……あれは、もしかすると他の悪の因子たちにも効くのかもしれないわね……」

 「というと?」

 「ほら。 光と光を融合させて聖属性にするって、要は光を光で強化してるってことでしょ? それを他の属性でも出来ないかって話。 例えば、炎属性に例えるなら、小さな炎でも大きくなればそれはまるで太陽のようになるし、水属性も水滴も積もりに積もれば、豪雨となる……つまり、今まで誰もやろうとしていなかった同属性同士の魔法を使えば、対策をしているはずの悪の因子たちの裏をかけるかもしれないってことよ」

 ファーストは、ある一種の確信に至ったような顔をしていた。

 でも、まあ……ぶっちゃけた話なんだが。

 「そもそも、同属性の魔法を融合させるなんて出来るのか?」

 という疑問に陥る。

 火に火を足しても、火のままだろう。

 水に水を入れても水だし。

 雷や風、氷も闇も……地もなに変わらないのではないか?

 「そんなの、今からやってみるだけよ」

 と、ファーストは異空間をこの場に産み出す。

 そして、ファーストは炎の魔法を右手に宿す。

 更には左手にも炎の魔法を宿し、それを重ね、混ぜようとする……が、炎の魔法の力に変化はなかった。

 「なら今度は……」

 と、光と光を融合させようとするが……光は対消滅を起こし、ファーストの手の中で消え失せる。

 あの始まりの神ファーストでさえできない技法など……とおいらたちは諦めかけていた。

 だが、その様子を見ていた翔琉はなにかを思い付いたような顔をする。

 「もしかして……ちょっと、ファースト。 もう一度、やってくれ」

 と、翔琉に言われたファーストは渋々再び光の魔法を灯し出す。

 その瞬間、翔琉はファーストにある魔法をかけた。

 結果、ファーストが作り出した光たちは燦然と輝く光を帯び、まるで月光のような淡く聖なる光を放ち始めたではないか。

 「やっぱり……そういうことか……」

 「翔琉……ファーストになにをしたんだ?」

 そう問いかけるおいらに対し、翔琉は答えた。

 「付加(エンチャント)……。 そう、俺は光属性の魔法を使っているファーストに、光属性を付加させたんだ」

 「光属性に光属性を付加……!! そうか、なるほど!!」

 おいらは理解した。

 なぜ、翔琉が付加に至った理由までも……そして、なぜそれがうまくできたのかもな。

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