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EX STAGE35:精霊族王女フィリvs悪の因子【色欲】


 "色欲たちは驚きを隠せなかった。

 先程までボロ雑巾のように扱い、そして性処理道具として使役した私が、脱出していたことに。

 魔力は封じていた。

 力も封じていた。

 だが、私はその枷を解き、脱出していたのだ。

 「おやおや、王女様……ダメじゃないですか逃げちゃあ」

 「……」

 「さあさあ、最後のおしおきの続き……やろうよぉ……」

 「……黙りなさい、不届きもの」

 私の声に対し、色欲たちは思わず後ろに身を引いた。

 ひしひしと伝わる殺気を感じたからだろう。

 「衣服召喚」

 と、私は裸であったその身に、城の自室にあった自身の服を身体に召喚する。

 真っ白で美しかったドレスだが、私の血ですっかりと真っ赤になっていた。

 だが、もう構うまい……今は。

 「あれ?戦う気?王女様~。 いいのかな? 父上殿や母上殿や国民たちがどうなっても……」

 「【成り代わり現象】によって、成り代わっているやつらのことか?」

 「‼」

 色欲は笑顔をピタリとやめ、目を見開き真顔になった。

 先程まで優位に立てていた色欲は、私が発した言葉に対してその行動で優位性を消し去ってしまったようなものだ。

 つまり、やつは今動揺していたのだ。

 「へぇ……この国の情報機関は断っていたはずなのに……それをどこで……」

 「天野翔琉……」

 「‼」

 今度の色欲は、口をポカンと開けて冷や汗をかいていた。

 なるほど、思い当たることがあるんだな。

 天野翔琉について……。

 「な、なぜだ……やつは今頃、邪悪様たちによって肉体を……」

 「奪われてる……いや、これから奪うのか……そうかしら?悪の因子の色欲さん」

 「き、貴様……」

 「さて、お遊びはこれまでね……召喚魔法:三獣士(さんじゅうし)、召喚‼」

 私の周りに3つの魔方陣が展開される。

 光を帯びているその魔方陣からは、私がもっとも信頼する者たち……ウラヌス、ドラグル、ウェルの3体の獣が現れるのだ。

 「主のために敵を討つ妖狐(ようこ)ウラヌス」

 「主のために敵を斬る龍族ドラグル」

 「主のために敵を潰す狼族ウェル」

 「「「ここに見参!」」」

 そう、3人がきちんと魔方陣から出たところを見て、私はふらついて地に膝を落とす。

 「我が主‼ なんてこった……これはひどい怪我だ……」

 ウラヌスは、私を抱き抱え今にも泣きそうな目で私を見ていた。

 一方、ドラグルとウェルは周りに殺意を向けていた。

 それは、普段の二人からは想像できないようなレベルの殺気だった。

 「我らが主をここまで凌辱したのは貴様らか……さて、どう調理してやろうか……」

 「まてドラグル。 そんな生易しい程度で済ますな……こいつらには、死よりも辛い仕置きが必要だ……」

 そう話している二人には、いつも以上の冷静さ、そして怒りが宿っていた。

 「ふん……王女さんよ……それでも、お前たちは我々には勝てない。 我々は邪悪様より産み出された邪悪様の化身というべき存在……君たち程度では相手にすら……‼」

 色欲はようやくここで気がついた。

 なぜ、私が天野翔琉から聞いたのかと言うことに。

 そして、翔琉が私になにをしたのかも……。

 「行きなさい、ドラグル‼ウェル‼ 天野翔琉から付加された神魔法の力と魔力消費零のお陰で、今のあなたたちは、全ての攻撃に光属性と魔力を消費しなくて済むわよ!」

 「「よっしゃぁ‼」」

 その掛け声と共に、ドラグルとウェルの攻撃が始まったのだった。

 「もういいや……みんな、やっちゃって~」

 色欲のやる気の無さそうな声に反し、筋肉質の男たちはそのでかすぎる図体から想像しやすいまでのパワー系の攻撃を仕掛ける。

 だが、ドラグルやウェルには通用しない。

 ドラグルは、剣術の達人……彼の間合いに入る敵は全て微塵切りにされる。

 ウェルは近接戦闘の達人……最小限の動きでカウンターをとり、周りをバタバタと倒していく。

 「くそ……召喚者を狙え!!」

 と、男たちは私に向かってタックルを仕掛けるが、こちらにも守ってくれているものがいる。

 「甘いね……」

 ウラヌスは、私たちの周りに見えないレベルの炎を展開していた。

 それが男たちが触れると、その身を業火に焼かれ消失する。

 ウラヌスは魔法の達人……その実力は、8人の大魔導士レベルと言われるほどにね。

 「そ、そんな……」

 と、色欲は驚いていた。

 なにせ、ものの数分で自身が従えていた者たちは全滅したからだ。

 「あとはあなただけね……色欲‼」

 その言葉に色欲は驚いていた……が、すぐに不気味な笑みになる。

 「それはどうかな……」

 そう言うと黒々しいオーラが色欲を包み込み、辺りを暗くし始める。

 何が始まると言うのだ……。

 "

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