EX STAGE17:光を切り裂く者
取り憑いていた、この世の悪を司る存在邪悪は、始まりの神ファーストが俺に宿っていたことを知らずに俺の身体を乗っ取ろうとした。
だが、ファーストの存在はそれを許さなかった。
故に彼女は侵入してきた邪悪に対し迎撃したのだろう。
故に、邪悪は追い出され、あまつさえにも手負いになってしまったのだ。
強烈な光の力を受けたのだろう……奴の真っ黒だった髪は少し白色が混ざってしまっている。
「くっくっくっ……やはり、そう簡単には侵入させてくれぬか……ファースト」
「あー、気持ち悪かった……ぬるぬるぬるぬるした……」
「天野翔琉……お前の肉体はよほど居心地が良いのだな……ますます手に入れたくなった‼」
「えー、もうやめてよ……気持ち悪かったんだからさ」
「そんなこと言わずに……」
「我、始まりの者、その天使の力現出せよ……神魔法『創始天神』‼」
詠唱した俺は光輝き、始まりの神ファーストに変身した。
「あ……が……き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「うん……いまいちこの姿に馴れないな~」
「ファァァァァァァァストォォォォォォォォ‼」
邪悪の顔は恐ろしいほどに怒りに満ちていた。
そして、邪悪は邪悪なるオーラを放ち始める。
「お前のせいで……お前のせいで……お前の……お前のぉぉぉぉぉぉぉ‼」
邪悪の怒りのボルテージは最高潮になっているようだった。
仕方がない、一度頭を冷やしてもらうか。
「光魔法:無限の光」
俺の周囲に燦然と輝く光が無数に現れる。
そして、その光たちは邪悪に向かって形状を槍へと変貌させ貫くのだった。
だが、邪悪もまた光を侵食させるほどの闇を放つ。
「ふははは‼天野翔琉‼始まりの神ファーストがよく使っていた無限の光を使ってくるとは‼」
「へぇ、ファーストもこの魔法使ってたんだ」
「ふん、お前のそれとは比較にも……」
「なんかその言い方されるの腹立つ……から、奥の手を……」
あれ?
急に動悸が……。
「やはり、お前は詰めが甘いな天野翔琉……この邪悪がお前の肉体を奪うに当たって、単に侵入しようとするわけなかろう?」
「な、なにをした……」
「なーに。単に、お前の体内に流れる血に、俺の血を混ぜただけさ。お前の……【慈愛の心】に満ち溢れたお前に、【邪悪の血】が混ざり、【善悪の肉体】の完成だ……始まりの神ファーストもこの邪悪も自由に肉体を共有できるんだ……感謝し……」
「嫌だ……」
「は?」
「嫌だ‼」
「はい?」
「光魔法:無限の光-聖浄-」
俺の周囲に燦然と輝く光の剣が現れ、そして俺を一斉に貫くのだった。
「な、何を!!」
「おやおや?これは初見だったようだな」
「何をした‼天野翔琉‼」
「ご覧……」
俺を貫いた光の剣は、黒く変色してそしてみるみると砕け散っていく。
「無限の光-聖浄-は、自身の体内に侵入したものに攻撃する魔法なんだ。最初からこれ使っとけとば……って、あのときは神魔法使えなかったからここまでの威力で出せなかったんだったっけ……」
始まりの神に変身している今だからこの威力……邪悪を排出するレベルの力にまでなっているのだ。
「お、おのれぇ……」
「終演だよ。光魔法:無限の光-削除-」
燦然と輝く光の結晶が邪悪の周りに出現する。
そして結晶たちは輝きを強め、邪悪を照らす。
「な、なにをした‼天野……ぐぅ……」
邪悪は聞いたこともないような声をあげて苦しみ始めた。
悶え、あがき、悶え、あがき……の繰り返し。
まるで、AVみたいだな。
「終わりだな……」
そう言った瞬間、空から突如光を切り裂く者が飛来した。
そいつは、俺の放った光をすべて切り落とし、邪悪を救った。
そいつの名前は……。
「ディル……」




