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99回バッドエンドを経験して転生した世界で初のハッピーエンドを目指す物語  作者: 月兎光


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11/11

010

トナリナでのひと時はこれまでの人生の中で最も幸福な時間だった。


美人のエルフと二人っきりでショッピングデート。正直ただ旅と探索に必要な品を買うためだけにあちこちの店を回っただけなのだが、異性との買い物は母親以外経験のない身としては望外の喜びだ。


途中の露店で小休憩のためにお茶と軽食をしながらヴェルと話したときなどは、自分が何を話したのか、いや、ヴェルが何を話していたのかさえ覚えていないほど浮かれていた。


買い物を終えて『実りの麦穂亭』に着いたころには、ヴェルの俺を見る目がレベル99の冒険者の前に現れた最序盤の雑魚モンスターを見るような目に感じたが、気にしないことにした。


準備を整えその日は宿に泊まり、翌朝炭鉱跡に向けて出発した。


長閑な田園風景が広がる田舎道を足早に進み、夕方には炭鉱跡に到着した。近くに小さな村があった。


人通りも少なく数軒の民家と小さな店がある村ではあったが、幸い宿屋が1軒あったので夜に行動する危険性を考慮し、また情報収集も兼ねて一晩泊まることにした。


「昔は炭鉱に多くの坑夫が働いていてね。この村も賑わったもんだよ。」


かなり年配の白髪の店主が夕食を持ってきたときに話しかけてきた。客は俺たち二人しかいない。


「人が通りに溢れていてね、肩をぶつけ合うように歩いてたもんさ。今は無くなったが酒場なんかもあってね、歌声や喧嘩っ早い連中の怒声なんかもあちこちから聞こえて、そりゃあ賑やかなもんだった・・」


聞くでもなく聞いていると、老店主は話し疲れたのか「ごゆっくり」と言い残してその場を離れていった。コミュ力高めのヴェルだが、今日は店主の話しに興味がなかったのか黙々と食事をしていた。何となく早く部屋に戻りたそうに見えたのはおそらく明日への準備をするためだろう。


その後店主に炭鉱跡に巣くうゴブリンの噂や被害などを聞いたが、被害は特になく、ゴブリンを見かける回数が減ってきたらしい。聞いていた話と食い違うとは思ったが、この辺に出没しないだけかもしれない。経験豊かなヴェルも少し首をかしげていくつか店主に状況を確認していたが、特に不審はなさそうだった。


その後注文したちょっと硬めのパンとちょっと薄めのスープと微妙に濃いめの野菜炒めのような食事を早々に済ませて部屋に戻った。


翌朝、持ち物を確認した後、炭鉱跡に向かった。俺にとっては初の本格的なダンジョン探索だ。


・・ヤバい、緊張する


状況はだいたい分かっているが、すべてがゲームの通りになるとは限らない。ちょっとした油断が命取りになる。ゲームと違って死んだら終わりなのだ。気を引き締めていこう!


緊張しているのを察したのだろう。ヴェルは軽く微笑んで先に炭鉱跡に入っていった。俺も後に続く。


中は湿っぽく、3週間位洗濯していない雑巾のような饐えた匂いが充満していた。


少し進むと何かの動物を食い散らかしたような跡があちこちにあり、骨や肉片なども転がっていた。生活圏なのだろうか。周囲を警戒しながら進んでいくと、奥から複数の足音が聞こえてきた。こちらに向かってくる!


俺とヴェルは互いに目配せして距離を取り、向かい合うように壁に背中をつけて足音が近づいてくるのを待つ。


ゴブリンだ。3匹。


目視できた瞬間、ヴェルは弓を番えて2匹に向かって放つ。


2本とも眉間に命中しゴブリンはもんどりうって倒れた。


残された1匹を俺が剣で突き刺す。ゴブリンの動きは以前の教会で戦った暴漢たちのように遅くはならなかったが、不意を打ったためか簡単に仕留めることができた。


意外と平気だ。


もっと、こう・・嫌悪感や罪悪感を感じるかと思ったが、大丈夫のようだ。


さらに奥に進むと道が2手に分かれていたので、ヴェルの指示に従い右手に進んだ。


行き止まり。


炭鉱跡らしく鉱石がいくつか入っている木製の箱がいくつか積み重なった傍らに、錆びたショートソードと銀貨が数枚落ちていたので銀貨だけ拾う。


レアアイテムはあまり期待できそうになさそうだ。


来た道を戻り今度は左手の道に入ると2匹のゴブリンと遭遇し、ヴェルを制して俺一人で倒した。今度はゴブリンの動きがスローモーションになって見えた。条件はよく分からないが、こちらから積極的に攻撃を仕掛けたときに敵の攻撃がスローモーションになるのかもしれない。


ゲームにはそんな仕様はなかったが、この世界で生き抜くためにはこのスキルは正確に知っておかないといけないだろう。少数だったら訓練のために先に自分に攻撃させてほしいと頼んだら、ヴェルは意外そうな顔をしたが快く承知してくれた。


少し先に進んだところでまた2手に道が分かれていた。右手の奥から唸り声が聞こえる。これはホブゴブリンか?いよいよか?


「ゴブリンの数が少ない。奥に固まっているかもしれないから注意して行こう。」


ヴェルは囁くように俺に言うと、弓を番えいつでも放てるような構えをして右手に進んでいった。ホブゴブリンクラスならベテラン冒険者のヴェルの敵ではない。足手まといにならないよう、おそらく複数いるであろう周囲のゴブリンを俺が担当し、ヴェルにはホブゴブリンに集中してもらおう。


ゴブリンが6匹いた。奥にまだ何かいそうな気配を感じたので速やかに狩る。


唸り声が奥から聞こえた。さっきより大きい。ゴブリンの声ではない。


近づいている。ヴェルも緊張しているようだ。


手の汗を拭き、剣を握りなおす。


できるだけ足音を立てないように進んだ。


開けた部屋に出た。行き止まりになっているようだが部屋自体はかなり広い。


ホブゴブリンがいた。間違いなくホブゴブリンだったものが、いた。


首と胴体が離れ、死骸が転がっている。


嘘だろ


ここのボスはどのルートを通ってもホブゴブリンだったはず。


俺たちの目の前にいたのは


筋骨隆々の体に大きな斧を軽々と持ち


2本の鋭い角


牛の頭をした魔物


ミノタウロスだったー

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