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第四十話

霧が立ち込める不思議な空間に、三つの人影が静かに佇んでいた。

俺の腕に密着するラトの小さな身体が、突然硬直したのを感じる。

純白と深紅の衣装越しに伝わってくる体温が、一瞬にして冷たくなった。


「ママ……」


ラトの声が掠れ、唇が小さく震えている。

白い手袋に包まれた指が俺の腕を強く握りしめ、その力に彼女の動揺が如実に表れていた。


そうか……そういうことか。

ラトの明らかな動揺。

琥珀色の瞳が大きく見開かれ、全身から血の気が引いている。

その様子は――俺が妹に出会った時の動揺と全く同じだった。


この人は、ラトの母親なのだ。

ラトの母親はラトにとって、とても大切な存在。

そんなの彼女の過去を聞いていて、明らかだった。


危険だ――

その状況の危うさを、本能的に理解した。

俺が妹の幻影に惑わされかけた時と、全く同じ状況。

ラトもまた、母親という最も大切な存在の幻影に心を奪われようとしている。

あの甘い誘惑に屈してしまえば、俺たちは永遠にこの霧の中に囚われてしまうだろう。


「ラト、駄目だぞ。これは偽物だ」


俺は彼女の肩に手を置き、優しく声をかけた。

先ほど彼女が俺を現実に引き戻してくれたように、今度は俺が彼女を支える番だった。

しかし――


「ううん、大丈夫だよリオちゃん。ラトちゃんは大丈夫」


ラトは俺の心配を察したように、小さく微笑んだ。


「もし、いきなりママが現れてたら……ラトちゃんも、きっと騙されてたと思う。けどね、もう騙されないんだ。さっきまで妹ちゃんとお話しして……気付いちゃった。ラトちゃんの心が、はっきりしたの。リオちゃんを絶対に守る……それが、ラトちゃんの一番大切なこと。ママよりもね、大事なことなの。だからリオちゃんがいるなら、ラトちゃんは正常でいられる。えへへ、妹ちゃんのおかげかもね……」


ラトの横顔を見つめながら、改めて彼女の精神的な強さを実感する。

やはり――彼女は俺よりも何倍も強い人間なのだ。

どうやら心配など、無用だったらしい。

むしろ俺の方が、彼女に支えられてばかりだ。


「どうしたのラト?早く帰るわよ」


「ごめんね、ママ……ラトちゃんは、もうリオちゃんと一緒にいるって決めたの。ママのことは大好きだけど、今はリオちゃんのことが大好きなの。ママがラトちゃんを愛してくれたように、今度はラトちゃんがリオちゃんを愛するって決めたから。だから……ママと一緒には帰れない」


ラトの声には迷いがなかった。

その瞳は真っすぐ、彼女の母親を捉えている。

すると……母親の目線は俺に向いた。


「帰れないなんて、そんな我儘言わないで。……なに、そのリオちゃんって?もしかして、あなたのこと……?」


「あ、はい……あの、リオ・ルースです」


声が上ずってしまう。

ラトの母親の射貫くような目つきが普通に怖くて、ビビってしまった。

いかんいかん偽物の幻影だってのに……。

母親の視線が全身を舐めるように動き、まるで品定めされているような居心地の悪さ。


「リオちゃんはね、ラトちゃんの将来のダーリンなの!ラトちゃんの靴下を脱がしてくれた相手なんだよ!だからラトちゃんが心から愛してる、世界で一番大切な人!」


ラトが俺の腕に密着し、満面の笑みで母親に告げた。

その表情には純粋な喜びと幸福感が溢れており、頬が薔薇色に染まっている。

ここまで言われてしまうと、ちょっと照れるな。

あとまだ一応、決まってないんだけど……。


「あなたが……ラトの靴下を……?本当に……?」


母親の瞳が大きく見開かれた。


「え……えぇぇぇ?お兄ちゃんが、この兎の……?」


何か妹も驚いていた。

好きだとか言っちゃってるんだから、これくらい気付けよ。

いやまだダーリンになっていないんですけど……。


「ラトの相手があなただなんて……あり得ない」


しかし、その驚愕の表情はすぐに別の感情へと変化した。

母親の薄い眉が険しく寄せられ、蜂蜜色の髪が怒りに震える。

あれ……これヤバそう?


「ママはそんな相手、認めません」


霧が震えるほどの強い語調。

細い指が拳を作り、病的に痩せた身体全体から拒絶の意志が立ち上っていた。


「ラト、あなたという子は……!こんな弱々しくて、パッとしない男性と一緒にいるだなんて……ママは許さないわ!こんな……こんな貧相な体つきで、魔力の気配すら感じられないような、ひょろひょろとした男性だなんて……!こんな人と一緒にいても、ラトが不幸になるだけよ!」


母親の声は次第に高くなり、最後は叫ぶような調子になっていた。

そのヒステリックじみた怒り方に、俺は本能的に恐怖を感じてしまった。

視線が俺に向けられる度に、まるで汚らわしいものを見るような嫌悪感が込められている。


確かに俺は……前にラトも言っていた通り、極めて貧弱な存在に映るだろう。

俺は魔力の気配を全く放っていないため、最底辺の人間としか見えていないのだ。

この世界は魔力至上主義、さらにそのほとんどは才能で決まる。

そして遺伝とも強い関係があると言われている。

……となると、母親がここまで拒否反応を示すのも当然か。


けど……そこまで言われると傷つくなぁ。

回りから見下されていた視線を、不意に思い出した。

俺はラトには相応しくない存在なのかもしれないけど……

そこまで言われてしまうと正論すぎて辛い。

けど俺がショックを受けていたのを察したのか、ラトの眉間にしわが寄る。


「ママ、言い過ぎ!ママはリオちゃんの良さが分かってないだけだよ~!リオちゃんはね、確かに弱そうだけどすっごく強いの!心も体もラトちゃんなんかより勇敢で頭が良くて、技術もあるの!だから……」


ラトが必死に反論しようとしたが……

母親はその言葉を遮るように声を荒げた。


「違うわ、ラト。あなたは騙されているわ!強そうには見えず、魔法の才能もない。そんな人、ラトに相応しくないわ!兎人族の女性として、もっと誇りを持ちなさい!あなたならもっと立派で、強くて、美しい男性を選べるはずよ!」


「リオちゃんほど魅力的な人はいないのに……」


偽物だってのに、ここまで精神攻撃が鋭いとは思わなかった。

偽物だから……そう割り切れないリアリティが彼女たちにはある。

ラトも母親には強く言えないのか、声が尻すぼみしていた。

それでも必死に反論しようと、顔を上げたとき……


「ちょっとあなた、撤回しなさいよ!」


突然響いた鋭い声に、全員の視線が一点に集まった。

響いたのは、ラトの声ではなかった。

妹――リリィが、母親の前に立ちはだかっていた。


「あなた何様のつもり?あんたがお兄ちゃんの、何を分かってるの?お兄ちゃんは確かに魔法の才能もないし、戦いの才能はないわ。けどお兄ちゃんは強いの!とっても格好良くて優しいの!心の強さ、優しさ、誰かを想う気持ちの深さ……お兄ちゃんの魅力はそこに詰まってる!それなのに外見だけで判断して、好き勝手言ってんじゃないわよ!」


「あらまあ……どちら様ですか?これはわたしとラトの問題なの、部外者は黙ってて頂けるかしら?」


「部外者?違うわよ!超~関係者よ!私は妹よ!リオの妹!お兄ちゃんはあんたの子供に相応しくない!?違うわよ!お兄ちゃんにこの兎は相応しくないのよ!それでもお兄ちゃんが許してるからそうだってだけで、もったいないくらいなの!」


「妹さんねぇ、あなたこそ理解していないわ。兎人族の気高さと誇りを……。優しい?心の強さ?だからなんなのかしら?必要なのは強さよ。そんな精神論で語られても、全く説得力なんてない」


「強さだけが気高さと勘違いしている方が、説得力なんてないわよ!気高さとは崇高さとは、心の強さでしょ!お兄ちゃんほど、気高い人間なんていないわよ!強さだけが指標になるなら、人はとっくに絶滅してるわ!」


「強さだけが指標になるわけじゃない。強さこそ指標になるのよ。誰かを守れなくて、何が気高いのかしら?理想論並べるだけの馬鹿貴族と一緒じゃないの。私たちにとってラトは希望。そんなラトをあんな雑魚と一緒にするなんて……何で靴下を脱がせたのか信じられないくらい……」


「雑魚……?お兄ちゃんが雑魚?私の病気を治そうとして必死に勉強して、お金を稼いで、薬を買ってきてくれて……!そんなお兄ちゃんを雑魚だなんて許さない!」


あまりにも激しい口論。

幻覚であるはずの二人が、俺を巡って激しく言い争っている。

そんなことあるんだ……。


これは……えっと仲裁に入った方が良いのだろうか?

「私のために争わないで!」って物語のヒロインみたいなことを言えばよいのだろうか?

けど……ラトの母親の発言はあまりいい気がしない。

だからといって、偽物の妹に加担するのもおかしい。

う~ん悩ましい。


「力で何も成せない人に、この世に生きる価値はないわ」


「はぁ?力こそが正義って考えの方が古いでしょ!あなたなんかより、ラトさんの方が何倍も増しだわ。ねぇラト、あんたももっと言い返しなさいよ!」


そのとき妹が、ラトのことを睨む。

すると――


「妹ちゃん!まさにその通りだよ!ママは誇りとか強さとか、そういうものにこだわりすぎてて本質を見失ってるよ~。リオちゃんには誇りも気高さがある。ラトちゃんにはもったいないくらい、格好いいんだよ!」


ラトも興奮気味に妹に同調する。

お前もこの不毛な言い争いに加わるのかよ……。


「あなたたち、何で理解できないの?ママはラトのことを考えて発言してるのよ。これはラトのことを思っての言葉なの。いい子だからママを信じて!」


「信じるとか信じないとか、愛の前にそれは無粋じゃないのラトママさんさぁ~。ラトだってお兄ちゃんの魅力が分かってるのに、その本当の価値を見いだせていないのはラトママさんの方じゃないの~?」


「そうだよ~妹ちゃんのいう通りだよ!ママは全然リオちゃんのこと分かってないよ~!リオちゃんはね、ラトちゃんのためにとっても危険な戦いをしてくれるし、困った時はいつも助けてくれるし、弱く見えるかもだけどすっごく強いんだよ!すっごく魅力的な人なの!」


「そうそう~、ほらお兄ちゃんの本当の価値を理解してる人がちゃんといるんだよ!それなのにお兄ちゃんの家族でもないあなたが、勝手に決めつけて馬鹿にするだなんて……失礼だと思わないわけ?自分の子供の決めたことくらい、信じてあげるのが親の責任じゃないの?違うの!?」


「そう!ママ、ラトちゃんを信じて!ラトちゃんとリオちゃんは連携もバッチリで、相性もぴったりなの!そんなおしどり夫婦なんだよ!きっと子供もラトちゃんの才能とリオちゃんの才能が組み合わさった、兎人族の誇りになるような子供になるんだよ!」


「おい、話が進みすぎだろ」


そんな俺のツッコミなど露知らず……

妹とラトは息が合ったように、言葉の雨を浴びせる。

二人の勢いは凄まじく……

完全に二人が優勢になる。

そうして……ラトの母親の声はどんどん小さくなっていった。


「うぅ……そんな……私は……私はただ……」


完全に劣勢になった母親。

先ほどまでの威厳は微塵もなく、ただひたすらしゅんとした様子で立ち尽くしている。

霧の中でその小さな影がさらに縮こまって見えた。

すごいな二人の連携力……。


「ラト、あんた嘘で言ってるのかと思ってたけど、中々お兄ちゃんのこと分かってるじゃない。見直したわ」


「えへへ~妹ちゃんも、すっごくリオちゃんのこと分かってるんだね!兄妹ってさすがだね~」


いつの間にか二人の間には、謎の友情が生まれていた。

俺には訳が分からないが、仲いいならいっか。

実際妹がここにいても、こうなってた気がする。

そんな三人の女性が繰り広げる奇妙な光景を眺めながら……

実は俺は全く別のことを考えていた――


この二回層の攻略についてだ。


この霧の空間について、他の場所と大きく違う所がある。

それは肉体的な攻撃行為が行われないことだ。

他の部屋であればめぇ太郎やベールが絶え間なく魔法を放ち、常に戦闘準備を怠らない必要がある。

増してや先ほどの部屋のように、強靭な敵が現れることがある。

しかしこの部屋にはそのような危険性はない。

精神的な攻撃は、違う意味で殺傷力が高いけどね……。


とにかくこの空間は気をしっかり持ち自分を見失わなければ、唯一の安全地帯とも言える。

もちろんこれからめぇ太郎やベールが入ってくる可能性もあるが……

今の所はその気配がない。


つまり……

この時間こそ冷静に、状況を把握すべきだ。

それに……何か俺は、重要なものを見落としている気がする。

だからここまで追い詰められているのだと、そう感じてならない。


冷静に……これまでのことを思い出せ!

深呼吸をして脳に酸素を回す。

そこに絶対に解決の鍵があるはずだ。


とりあえず、先ほどベールが言っていた言葉を思い出す。

「物語の筋書きを守らなければ終わりは来ない」「多くの試練を越えなければならない」

――つまり、この霧の空間も、あの羊の化け物も、全て乗り越えるべき試練ということになる。


童話『軌跡の羊』の主人公たちのように……

俺たちも数々の困難を乗り越えなければ、金色の羊――

この階層の真の攻略条件を見つけることはできないだろう。

しかしやはり目下の問題は、あの羊の化け物にどう対処するかだ。


羊毛による防御、圧倒的な物理攻撃力、そして俊敏性――

弱点は瞳などの急所部分だと分かってはいるが、そこに確実に攻撃を当てる手段が見つからない。

血液の残量も限られており、ラトの魔力も底を尽きかけている。

もう一度、戦ったとしても――


「リオちゃん……大丈夫?なんだか難しい顔してるよ~?」


その時、俺の手を握っているラトの指に力が込められた。

白い手袋越しに伝わる温もりと、わずかな震えが俺の意識を現実に引き戻す。

顔を上げると、琥珀色の瞳が心配そうに俺を見つめていた。


「お兄ちゃん、大丈夫?やっぱり魔力の使い過ぎなんだよ!私の能力を魔力も十分にないのに、そうやって無理するから……」


妹も俺の傍に寄って、顔を近づけていた。

そんな妹見ていて――思い出すことがあった。

そう言えば妹は、天才であったと。


頭がよく、発想力に長けていて……

俺が困った時には、いつも的確なアドバイスをくれた。


畑の作物の育ちが悪かった年、俺が途方に暮れていた時も――

妹は輪作の組み合わせを変え、肥料の配合を調整し、水やりのタイミングまで綿密に計算して――

結果、その年は豊作となった。

そんな妹の聡明さを思い出した時、俺の口から思わず言葉がこぼれた。


「リリィ……助けてくれないか。この二階層を攻略するために、お前の頭の良さを貸して欲しい」


自分で何を言っているのだろう――そう思った。

目の前にいるのは妹の幻影であり、偽物なのだ。

雰囲気も仕草も表情も、全て記憶の中のリリィと変わらないが……

それでも彼女は妹ではない。


しかし……今はそんなことはどうでも良い。

少しでもこの階層を攻略する光の欠片が欲しい。

そのためなら罠だろうが、偽物だろうがかまわない。

そこにいるのが夢だろうが幻想だろうが、その存在は確かに妹なのだ。


「え……えぇ? お兄ちゃん、何言ってるの……?」


俺の提案は予想外だったのだろう。

妹の漆黒の髪が肩で揺れ、純白のワンピースの袖が微かに震えていた。


「お兄ちゃん、やっぱり変だよ!そんな危険なこと考えなくても、一緒にあの扉から出れば……私と一緒に故郷に帰れば、全部解決するのに……なんで、わざわざこんな危険な場所に留まろうとするの? お兄ちゃんらしくないよ……昔のお兄ちゃんなら、私の提案を聞いてくれたのに……」


妹の声には困惑と悲しみが滲んでいた。

細い指が胸元でぎゅっと握りしめられ、その仕草に俺は胸を締め付けられる。

しかし――


「ダメなんだ、それじゃ。俺はこのダンジョンを攻略しなければならない。ここに来た時に、もうそう決めたんだ。それにラトとも約束したんだよ。確かに俺は多くのことを、リリィに助けられた。けど俺が一度決めたら、そこを曲げないことくらいリリィなら知ってるだろ?」


「それは……それは知ってるけど……」


「そうだろ?だから助けてくれ、そうすれば……リリィとも、ラトとも、みんなで笑い合える未来が待ってる。俺が望む、本当の未来がそこにあるんだ!だから協力して欲しい!」


俺の言葉に、妹は完全に黙り込んでしまった。

妹は長い沈黙の中で、俺の言葉を受け止めようとしていた。

透明感のある瞳が揺れ、薔薇色の唇が小さく開かれては閉じられる。

その葛藤が、表情の一つ一つから伝わってきた。

俺はそんな妹に、最後の言葉を投げかけた。


「リリィなら……俺の妹なら……協力してくれるだろ?」


その瞬間、妹の全身が小さく震えた。

長い、長い沈黙が霧の中に漂い――

やがて彼女は深いため息をついた。


「……分かった。お兄ちゃんがそこまで言うなら……協力する」


とうとう妹は、承諾した。

正直承諾してくれるかは、分からなかった。

何故なら彼女は妹であるが、妹ではない。

階層主のベール側が用意した、俺を嵌めるための罠。

俺をいたずらに惑わせるための、ダンジョンモンスターに近い。


それでも……俺は彼女のリリィたる精神に問いかけたのだ。

リリィならば協力してくれるのが普通だと。

彼女の俺の妹である誇りに賭けた。


良かった……成功して……。

それでも警戒しなければいけないとは思うが……

妹の知恵があれば百万力だ。


その時、ラトもまた母親の方を振り向いた。


「ママ!ラトちゃんも、ママに助けて欲しいの!ママが協力してくれれば、きっとリオちゃんを守れるもん!お願い、ママの力を貸して!」


なるほどラトの母親にも協力してもらう。

そういう手もあるのか……。

しかし彼女は――


「駄目よ、ラト……そんな危険なこと……ママは認められない……」


もちろん否定。

その言葉を聞いた瞬間、ラトの表情が一変した。


「ふ~ん、そっか。じゃあラトちゃん、ママなんて、いらない! 三人で秘密の話し合いをするから、ママはどっか行って!」


「え?ラト……?ラトはママにそんなひどいこと、言ったことないのに……」


「だって、いらないもん!」


「うぅ……ラトに反抗期が来たのね……」


気付けばラトの母親は半泣きになっていた。

しかしここから離れようとせず……


「分かった、ママも協力するわ」


まさかのそう了承した。

あれ?協力してくれるのか?

てっきり否定し続けるかと思ったけど……。

ラトにいらないと言われたのが、よほど応えたらしい。

さっきも二人に言いくるめられて、しなしなだったからな……。


「んじゃ、お兄ちゃん。今の状況を教えてくれる?」


そう妹が切り出したのを機に、奇妙な四人での話し合いが始まった。


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