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第1話 トラック事故

俺の名前は鈴木健太。どこにでもいる平凡な男子高校生だ。

平凡な家庭に生まれ、テストに追われ、家ではゲームと小説に没頭する毎日。


使い慣れた通学路をいつものように下を向きながら歩く。

ちょうど目の前の信号が青になって、スマホを見ていた俺は少し送れて歩き出した。

そんなとき、1台の大型トラックが赤信号にもかかわらず、猛スピードで走ってくる。


そこからの俺の行動は恐ろしく早かった。

小説と同じ展開、同じ場面。何を夢見たのか、今思えば頭のネジが何本か抜けていたのだろう。

交差点をわたっていた黄色帽子を被っている幼稚園児を助けるためじゃない。

俺は転生したいがためにその幼稚園児を思いっきり突き飛ばした。


ーーー瞬間、何もかもが遅く見える。

体の最後の抵抗も虚しく、俺の意識はそこで潰えた。



『おめでとうございます!あなたは異世界への切符を手に入れました!なお、片道切符ですのでご注意ください』


その文字が目の前に表示されたとき、俺は思わずガッツポーズをとっていた。


「おっしゃああおらあああ!!!!」


無機質な白い空間。どこからか差し込む光。そして、眼の前には自分よりも十数倍も大きな人(おそらく女神)と、その従者と思われる大きな槍を持った男が二人立っていた。


『鈴木健太さん。あなたは死亡しました。そこでーーー』


「はいはいわかります!!それで、俺の転生特典は!?俺にはどんな力が与えられるんです?!」


その瞬間、瞬きする間もなく槍先は俺の首元に定まっていた。

『ルミエル様の御言葉を遮るとは何事!?』

『ルミエル様から力をねだろうなど、おこがましい!』


「あ…」


喉元に矛を突きつけられ、声が出せない。

もうすでに死んでいるはずなのに、冷や汗がとまらない。


『ルミエル様、この者の処遇はどうされます?』


『……不遜なあなたは、どうやら転生特典はいらないようですね。』


俺は必死で首を振る。

転生特典がなかったら異世界なんてどれだけ過酷なのだろう。

考えただけで鳥肌が立つ。

いや、でも魔法が使えるならなんとかなるか…?


『それと、魔法も使えないようにしておきましょう。』


俺はさらに必死で首を振る。

思考が読めるのはわかったから許してください。

すみませんでした俺が悪かったです。


『…反省したようですね。これ以上あなたから取り上げる気はありません。』


二人の従者が退いて、ようやく俺は胸を撫で下ろした。


『慈悲深いルミエル様に感謝するんだな。』

『普通なら不敬罪で処しているところだ。』


こいつらいつかぶっ倒してやる。

その瞬間、女神の目が鋭く光った。

し、思考の自由というものがな…


『…あなたには使命があります。世界を脅かす魔王を倒してください。』


「魔王を、ですか?特典も魔法もない俺に…?」


『あなたにできると思っていません。これは決まり文句なのです。他の転生者にも言っています。魔王が倒された暁には、どんな願いも叶えましょう。』


「下手に希望をもたせるんじゃない!ひどいぞ!一瞬期待したじゃないか!!」


『さあ、お行きなさい。あなたの後ろの光、それに触れるのです。』


後ろを向くと、眩い光が放たれていた。俺はそれに手を伸ばす。

ジェットコースターに乗ったときのような感覚に包まれ、俺の意識は途絶えた。

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