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3歳児ももちゃんのVRMMO大冒険  作者: 生姜寧也
第12話:お話好きのランプ

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79/80

12-2:魔法のランプを預かった

 このマホロバは、かつては貧しい街だったらしい。オアシスはあれど、今のような大きさではなく、本当に極僅かな人間が暮らせる程度の水源でしかなかったそう。

 だけど、ある時を境に状況は変わる。この魔法のランプが使われるようになったからだ。魔法のランプは、擦ると中からランプの精なる存在が出てきて、その者の願いを叶えてくれたという。完全に千夜一夜物語の世界だね。

 ちなみに、ランプは初代市長が作り出したという伝説もあるけど、確たる出自は一切不明らしい。


「とにかく、ランプの精の力でオアシスは大きくなり……外敵から身を守るための蜃気楼も作られた」


「なるほど」


 魔法の要塞になっていたワケだ。


「ただ、ここ100年ほどは擦っても出てこなくなってしまって」


「どうして? ねてるの?」


「いや、そうじゃないんだ。段々、我々の願いを叶えるのが嫌になってしまったらしい」


 うーん。なんか分かる気がするな。人間の強い欲望に触れ続けてたら……想像するだけでも怖いよね。中にはランプを盗もうとしたり、壊そうとする人も居ただろうしね。


「対外的には、魔力が弱まっているという説明にしてあるけどね」


 クエストの依頼書にも、そう書かれてたね。

 ただ実際は、厭世的になって願いを叶えなくなってしまったということか。


「辛うじて、オアシスと蜃気楼に関しては、保守・維持のための力は貸してくれるから、街は回ってるんだ」


「なるほど」


 じゃあ完全に見捨てられてるワケでもないのかな。この街が本当に嫌なら、「滅んじゃっても良いや」ってなるだろうし。


「……キミたちには、魔力充填という名のご機嫌取りをしてもらいたいんだよね」


 少しだけ声を潜めて言うモノッキさん。ランプの中の精霊に聞こえないようにかな。あそこから外界の声が聞こえるのかは知らないけど。


「具体的には?」


「話をしてあげて欲しい。精霊は面白い話が大好きなんだ」


「……それだけ?」


「ああ」


 一瞬、「そんな簡単なの?」とも思ったけど。よくよく考えれば、私に語れるような面白い話なんて無いよね。意外と苦戦するかも。


「キミたちだけじゃ足りないから、街を回って色んな人の面白い話を聞かせてあげて欲しい」


 なるほど。そこまで含めてのクエストだね。ていうか、そういうことなら、私より面白い話のネタを持ってる人を沢山探し出せば、私は免除されるかも。

 

「良いお話を持ってる人の頭上には矢印マークが出るから、それを目印にしてね」


 わあ、メタい。

 でも凄く助かる。


「ちなみに、話に満足したらランプは輝いて知らせてくれる。強く輝いたら、より満足度が高いってことだから」


「わ、分かりました」


「それじゃあ、これを」


 モノッキさんが立ち上がり、件のランプを手渡してくる。受け取ると、思ったより軽い。軽鉄素材みたいな。


「ももちゃんも。ももちゃんも、もってみたい」


 渡してあげる。


「落とさないでね」


「落としても、壊れないけどね」


 モノッキさんの注釈。そうなんだ。かなり丈夫……いや、半子供向けゲームだし、落とす子も多いだろうから。元々、そういう設定なんだろう。


「ちなみに街の外に持ち出そうとしたら、ランプは消えてここに戻ってくるから」


 ファンタジー帰巣パワーがあるんだね。それなら盗難の心配も要らない。だからこそ、私たちみたいな、どこの馬の骨とも知らない冒険者にも預けられるってワケか。


「窃盗未遂容疑で牢屋にも入れられちゃうから。くれぐれも持ったまま、城壁の外に出ないようにね」


 ひえ。

 ももちゃんも「牢屋」という単語に、少し不安げにしている。手の中のランプを丁寧に持ち替えているのが可笑しかった。






 キッチリ脅された後、私たちは1階へと下りる。と、そこで。ももちゃんの頭上に矢印が浮かんだ。え、さっきまで無かったのに。ていうか、プレイヤーに出ることもあるんだね。


「ねえね、あたまのうえにやじるしさんあるよ?」


 と思ったら、私の頭上にも?

 上を向いてみると、確かに矢印先輩が居た。うわあ、嫌だなあ。いきなり面白い話してって言われても、無茶振りだよ。


「ももちゃんね……きのうね、ほいくえんで」


 始めちゃった!?

 凄いね、ももちゃん。ノリノリだ。


「ねんどのぱぱつくったの」


「おお」


 ていうか、初耳だ。

 パパに聞かせてあげたら、大喜びしそうなのに。私から教えてあげようか。


「けどね。ゆきなりくんがね、けっちゃったの」


 雲行きが怪しくなってきた。ゆきなりクンの顔がすぐには思い出せないけど、確か大人しい子だったと思うから、悪意を持ってやったというより過失だと思う。そもそも意地悪されたなら、保育園側から通達があるだろうし。


「ゆきなりくん、あやまってくれたけどね……」


 あ、やっぱり。ホッとする。


「ぱぱのあたまがとれて、どこかいっちゃったの! ふふ、ふふ♪」


 そんな楽しそうに話すことではないんだよ? ももちゃん。


「せんせいとか、ゆっこちゃんもいっしょにさがしてくれたけどね」


 ゆっこちゃんというのは、例の小食の子で、ももちゃんと闇取引してる相手だね。本名はユリコちゃん(漢字は知らない)というそうだけど、園児のみんなは舌足らずだから「ゆっこちゃん」って呼ばれてるみたい。


「みつからなかったの。だからね。せんせいがないしょにしとこうねって」


 今、まさに内緒じゃなくなっちゃったけど。

 パパに教えてあげたら喜ぶ話かと思ったら、真逆だったね。パパが見るまでに、アーカイブ編集しといてあげようか。いくら粘土人形とはいえ、自分の頭が吹き飛んだなんて、あんまりだからね。

 ていうか、こんな残虐エピソードでは、ランプの精さんも引いてるんじゃ……


 ――キーン!!!


 目を開けておけないくらいに輝き始めた。大ウケしてるし……


「♪♪」


 ももちゃんも甲高い声をあげて喜んでいた。

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