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厄災に惑わされるもの達

ここはストフトック辺境伯領とグラム王国の境界線の前に作られた軍議用テントの中だ。


正方形の机の周りに置いてあるたくさんある椅子の中で奥に置いてある椅子に座る俺と先程来た男が入り口付近の椅子に座り向かえ合う。


「司祭殿、カルン聖王国より軍隊を連れてきていただき感謝する」

「いえいえとんでもないことです。

光栄にもライドン教皇様自ら私にお願いされました、当然のことでございます」

「いやそれでも感謝する。

カルン聖王国がついているということは、神がこちらについてるということだからな」

「左様でございますね。神もこの聖戦を見守っていただいていると思います」

「それは心強い」


「そういえばライドン教皇に聞いたのですが、あの話は本当なんですか?


聖女リリアーナ様が復活されるというのは」


白い司祭服を着ている、人が良さそうな男がこの戦争の一番の目的を聞いてきた。


「ああ、本当だとも。

我が一族に伝わる秘術だ」

「秘術ですか、どうやるのか聞いても?」


「かまわんぞ、秘術といっても我が一族にしかできないしな。

条件として、

聖女と厄災の巫女が同じ時代に存在すること。

聖女が他殺であり、100年経っていないこと。

方法は、

厄災の巫女の身体を我が一族に伝わる聖水で浄化し、この領内にある祭壇を使って神に捧げる儀式するとさらに、厄災の巫女が浄化される。

それが終わると死んだはずの聖女に入れ替わるんだ。

嘘のように聞こえるが過去に我が一族はこの秘術を成功させている」


「そうなんですか!それそれは安心しました。

私はまだ聖女リリアーナ様にお会いしてないんですよ。早く復活できるよう、神に祈りましょう」

「そうしてくれ、俺も神に祈るとしよう」

厄神にだけどな。


そのあとは司祭が聖女。

まあ俺にとっては厄神の巫女について聞いてきたので、好感をもつようにはなしていると、テントの外がすこしうるさくなった。


「閣下!コースレ王国軍が到着しました。

ならびに、コースレ王国のバーゼル侯爵様がお目通りを願いたいと言っております」

閉まっているテントの入り口から聞こえる。


「来たか、、、当然だ!我らは同じ目的を持つ同胞だ!警戒する必要はない!他の兵にも伝えておけ」

「はっ」

「では失礼するよストフトック卿」

「久しいなバーゼル侯爵殿」

「そうだな。模擬戦以来か、まさか卿と仲間として戦うとは思いもしなかったよ」

「何を言ってるんだ、切磋琢磨してきた仲ではないか!俺は共に戦えることがうれしいぞ!」

「そういうもんかね、まあ卿を敵に回すよりはいいがな」

「それはこっちのせりふだ!」


俺よりひと回り大きい身体、黒い髪に黒い目。

顔には額から頬にかけての一本の切創。

コースレ王国との定期模擬戦で何度もやり合った。

まさに歴戦の戦士、この男がいればこの戦い

はもらったも同然だ。


「とりあえす座らせてもらうぞ。」

「ああ、すまない気が利かなかったな」

「期待してないから大丈夫だ」

「はっはそうか」

バーゼル侯爵は俺から見て右側の席についた。



「さて、司祭殿は初めてだな。

この度、コースレ王国軍の軍団長を任された、バーゼル侯爵家が当主。

ラインリッヒだ。


おそらくだが、カルン聖王国軍も私が指揮することになるだろう、よろしいか?」

「はい、よろしくお願いします。私にできるのは神に祈ることだけですので。

そうなるように皆に伝えておきます」

司祭はお辞儀をしながら答える。


「助かる。では本格的な軍略会議を開く前に、今回の目的を確認しよう。


まず一つ目は。

聖女を殺害したことにより、グラム王国の王族には国を統治する資格なしと判断し。

王族の処刑および、グラム王国を属国化せよと我が陛下から勅命を受けた。

もちろんカレン聖王国側からも了解を得たが間違いないな司祭殿」

「間違いございません。そのかわりコースレ王国に布教の許可を得ましたので」


「なら問題ないな。

では二つ目。

厄災の巫女の討伐ならびに聖女リリアーナの蘇生。

これに関しては一応内容は聞いたんだが、本当なのか?」

「本当だ、我が一族の秘術で復活する」

「にわかには信じられんが、卿がいうなら信じてみよう。聖女は必要だからな」

「まかせてくれたまえ」

疑いの目をしてくるバーゼル侯爵にむけて、俺は自信満々に答えた。


「そういえば厄災の巫女は王妃であったな、王都まで行かないと呪術のかかったものが元に戻らんとは困ったものだ。

卿も辛かろう、元は同じ国の兵だ」

「そうはいってもどうにもならんよ、本当にうまくやったものだ。

厄災の巫女が王妃なんてな」

「本当に呪術というものは怖いものだな。

それで卿よ、軍略会議いつやるつもりだ?」


「バーゼル侯爵殿は来たばかりで疲れているであろう。明日にしよう」

「ありがたい。流石に我が国の王都からここに来るのはなかなかに遠かったからな」

疲弊された頭で変な作戦でも立てられたらこっちが困るからな。


「はぁ、はぁ、閣下!はぁ、はぁ、大変です!」

先程と同じ兵士が息絶え絶えに入り口の前から叫んだ。



「どうした?何が大変なのか早く言え」

俺は少しイラついて答える。


「グラム王国軍が現れ、その軍の前に立つ女が、私は王妃であり聖女であると叫んでおります!」 

息を整えた兵士が伝えた。


「卿よ、これは流石に偽物であろう」

「であろうな」

俺とバーゼル侯爵は呆れた顔をした。


「ですが、兵士の中に王妃を見たことのあるものがいて、本物だといっております!」

入り口で兵士が叫ぶ。


「卿は、厄災の巫女の顔を知っているか?」

「ああ、一度だけ見たことがある」

「一応確認しないか?もし本物なら無駄な血を流さなくてもいいかもしれない」 

「、、、、わかった。とりあえず見に行こうと。」


もし本物なら千載一遇の機会。

もし本物なら。

俺たちは司祭を残し、テントから戦場に向かい見たものは。


「何度でも言います!

私はこの国の王妃であり聖女です!


私を討ち取りたいのでしょう!


私は逃げも隠れもいたしません!


全力でかかってきてください!」


そこには、グラム王国軍の前で仁王立ちをし、叫んでいる紛れもない王妃の姿があった。


「卿よあれは本物か?」

「ああ、間違いない」

俺は王妃の放つ聖女としての力を感じ、確信する。

「どういうことだ?これは罠なのか?

判断が難しい、だがここて討伐できれば、、

卿よ、いかにする?」

「、、バーゼル侯爵殿はどう思う?」


「ここで討伐するべきだ。

いや、その前に降伏を促してみるのもありだな」

「、、降伏か?」

「ああ、厄災の巫女であるあの王妃も、自分が助からないのを知っているのであろう。

ならば、楽に死なせてやるのを条件にしてやれば、あるいはと」

「難しいのではないか?」

「どちらにしろ、降伏させて討伐するのも。

普通に討伐するのも結果は同じだ。

厄災の巫女とはいえ、最後の慈悲は必要だろう」


「随分優しいなバーゼル侯爵殿は」

「姿を見てしまうとな、娘と重なってしまったよ。

では、とりあえずの総大将として、降伏勧告し、拒否すればそのまま軍を動かし討伐行う、いいか?」

「ああ、バーゼル侯爵殿に任せよう」

「では、行ってくる」


そう言い残し、兵たちから馬をもらい前線に向かっていく彼を見ながら

「どんなに壊れていてもいい。聖女の身体が手に入ればな、、」

邪悪な笑みをおびてそう呟く。



「厄災の巫女よ、我はこの軍を預かるコースレ王国のバーゼル侯爵が当主ラインリッヒである!

最後の慈悲を与える!苦しまないように最後を迎えさせると約束しよう!

無駄に血を流したくはない、呪術を解き降伏してくれ!」

俺は軍の前に出て、金色と蒼い目をした厄災の巫女に降伏勧告した。


「降伏ですか?するわけありませんよ。

さあ早くかかってきなさい。」



「くっやはり厄災の巫女、己のために兵士を死地におくるとは、、


グラム王国の兵士たち、騎士たちよ!

この悲劇は必ず後世に伝え、二度と起こらないよう、このバーゼル侯爵家の名の下に誓う!

だから、安らかに眠れ!

全軍前へ、厄災の巫女を討ち取れ!」

俺はこれから散る呪術に囚われたグラム王国軍を憐れんだ。

そしてグラム王国軍は、我が軍隊に飲み込まれた。


「一つ目の目的は達成させられたな。

なぜ厄災の巫女などになったのだ、見た瞬間に傑物であるとわかるほど才覚があったのに」

俺は複雑な顔をしながら、彼女がいた方向を見つめている。


おかしい。


なぜ兵士たちは未だに戦っているんだ?

随分時間もたったはず。

戦力差は約十倍はあったはずだ。


ここに来る前に聞いたこのそれぞれの軍隊の数は。

ストフトック卿の軍隊256人。

カルン聖王国の軍隊347人。

我が軍隊は534人

対するグラム王国の軍隊は見る限り100人前後のはず。

どういうことだ。



ほんとどういうことだ。

何故彼女が俺の前にいる。


「貴様!何をした!」

「総大将のバーゼル侯爵様。

ここは戦場ですよ?予想外が起こるのが常です。それに種明かしは後でしますね。

では、

魂厄破棄(こんやくはき)です」

そう言って彼女に左胸を殴られた。


一瞬時が止まり、己の身体と失われていた記憶を取り戻し。

よく模擬戦に来ていた嬢ちゃんを見る。


「まさか俺様が呪術如きにやられるとは情けねー話だ、嬢ちゃんありがとな」

「いえいえ、それにしても殴られたのに声すらあげないとはやっぱりすごいですね!」

「当たり前だろ、これでも騎士団長だからな。

さてさて戦場はと。

なるほどねーそういうカラクリか、嬢ちゃんとんでもねーな。

こりゃ勝てんわ。

参った降参するわ」

「もちろん受け入れますよ」

降伏勧告の時とは違い、前と同じとても優しい眼をしたバーゼル侯爵様にお答えした。


今回もいいおつまみになりましたでしょうか?

いつもあざっす!

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