第48話 姉妹の雑談
「……と言うことなの。本当にごめんなさい。」
再びシュウラに頭を下げられて私は戸惑いながらもシュウラの頭を上げさせた。
「いいわよ。気にしないで。それに仇をとってくれたんだから責められないわ。」
「ありがとうお姉様。」
レナも同様に頷いているし、私たちがシュウラを責める理由はない。しかし1つ疑問がある。
「でも、そのくらいなら手紙でも良かったんじゃない?私たちを呼び出すほどの事ではないと思うんだけど。」
「その件は私から話します。」
母様がそう言うと侍女のクレアが私たちの前に紙の束を置いた。どうやら資料のようだ。
「これは?」
「新結婚法の概要です。ですがまだ穴だらけだと思うんです。そこで2人にも考えて欲しいのです。この法案の欠点と改善点を。」
なるほどそう言う事ね。でも、そうなると……
「1度持ち帰って考えてもよろしいですか?」
「何故?」
「私たちだけでは、情報は少ないと思うのです。なのでもう1組のカップルにも聞いてみたいのです。」
「なるほど……では、2ヶ月後に持ってきて貰えるかしら?」
私はレナと顔を見合わせて頷いた。
「分かりました。そのくらい有れば意見が纏まると思いますので。」
私たちは資料を受け取ってとりあえず中身をしっかりと読むことにする。なので今日はお城に泊まる事に。
「明日は昼の馬車に乗って帰るわよ。」
「はい。では、手配しておきますね。」
私はレナへそう告げた。最初の様に歩いて帰るなんて真っ平ごめんだからだ。
「あの、セレン様。私少し席を外しますね。」
「あら?どこ行くの?」
「クレア様の所です。近況報告もですが、シュウラ様がセレン様と久しぶりにお話ししたいとの事ですから。」
なるほどクレアが気を利かせてレナを借りたのだと分かった。そしてレナもそれを伝える辺り成長した。
「分かったわ。じゃあ出るついでにシュウラのところに私も行くわ。」
「いえ、シュウラ様は部屋の前で待っていらっしゃいますので私が行ったらきますよ。」
どうやら知らなかったのは私だけらしい。
「では、ごゆっくり。」
そう言ってレナは部屋を出た。そして入れ替わりにシュウラが部屋に入ってきた。
「ごきげんよう。お姉様……」
「堅苦しいのは無しにしましょうよ。今はただの姉妹として話しましょう。今お茶を淹れるわ。」
「そうね……ありがとう。」
私はシュウラを部屋にある椅子に座るように促した。そして部屋にあるポットで紅茶を2つのカップへ淹れてその1つをシュウラの前に出した。
「ありがとう。お姉様。」
「どういたしまして……と言ってもレナが淹れた紅茶だからね。お礼はレナに言ってあげて。」
それから他愛もない話をして2人で笑って愚痴ってまた笑ってを繰り返した。そして話もそこそこにお開きにしようとしたところでシュウラが真面目な顔になる。
「ねぇ、お姉様。お城に帰って来ませんか?」
「えっ……」
まさに晴天の霹靂の様な言葉だった。
「アイツはたぶんもう長くないわ。アイツが亡くなってからでいいから考えてほしいの。」
「どうして?」
「アイツは頭がキレるわ。だからそこそこに私の不満も聞いてくれて子供も出来た。だけどアイツがいなくなったら私は女王になる。父様も母様も私より先に逝くわ。その時に……お姉様に近くに居て欲しいのよ。」
「シュウラ……」
やはり強気な態度をとっていても不安はある。この子はいつも虚勢を張って生きてるんだと思う。出来れば戻ってあげたい……でも、今まで助けてくれたミスズさん達を置いても行けないんだ。
「まだ答えを出さなくて構わないわ。次に来たときにでも聞かせてくれない?」
私の返事を待たずにシュウラは部屋を出て行くのでした。
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