第41話:やっぱり諦められない~ファラオ視点~
ソフィーナ嬢の怪我は、大丈夫かな?手紙を書いて執事に渡したが
“申し訳ございませんが、このお手紙を渡すことは出来ません”
そう言われてしまった。それなら、公爵に直接渡そうと思っているのだが、最近王宮に姿を見せない。もしかしたら、ソフィーナ嬢の怪我の具合が、思ったよりも悪いのかもしれない。
ソフィーナの兄、ソリティオも王宮に姿を現さないし…いくらソフィーナ嬢を毛嫌いしているとはいえ、彼ならソフィーナ嬢の様子くらいわかるだろう。
僕の心とは裏腹に、どんどん悪い方向に進んでいく。そんな中、ソラ嬢との対面の日を迎えた。
「殿下、お久しぶりです。ソラ・アレソーヌと申します」
侯爵に似て、物静かで穏やかな女性、ソラ嬢。この日はお茶をして過ごした。その日から、定期的にソラ嬢がやって来た。彼女は誰にでも優しく、王宮の使用人たちの心もすぐに掴んだのだ。
だが、時折見せる悲しそうな表情が、僕にはどうも引っかかった。もしかしたら僕がソフィーナ嬢を好きな様に、彼女にも他に思い人がいるのか?なんて都合の良い事を考えてしまう。
でも、この違和感が本物なら、ここで動くしかない。
「殿下、このバラ、とても綺麗ですね。このバラを見ていると、心が晴れる様ですわ」
「心が晴れるか…もしかして今、ソラ嬢の心は曇ってしまっているのかい?もしかしてその…他に好きな殿方がいるとか」
僕の言葉に、ソラ嬢が大きく目を見開いた。明らかに動揺しているようだ。
「い…いいえ、滅相もございません。確かに私はルドルフ様に好意を…いえ、違うのです。私の片思いで。私はもう、彼の事なんて…」
「彼の事なんて…気になって仕方がないけれど、父親に言われて仕方なく僕に嫁ぐ…か…」
「申し訳ございません。その様な事は決して…どうか、このお話しはなかったことに」
必死に謝るソラ嬢。完全にパニックになっている様だ。
「ソラ嬢、僕にもね、思い人がいるんだ。その子の事が、好きでたまらない。その子以外と結婚なんて、僕は考えられない。もちろん、今でもその子との結婚を、あきらめたわけではないよ。ソラ嬢、君をこんな事に巻き込んでしまって、本当にすまない。必ず君を、自由にするから」
ソラ嬢に向かって、頭を下げた。僕がもっとしっかりしていれば、ソラ嬢をこんな茶番に巻き込ませることもなかったのだ。彼女には本当に申し訳ない事をした。
「失礼を承知で申し上げますが、そのお相手とは、ソフィーナ様の事ですか?」
「ああ、そうだよ。僕は昔から、彼女の事が好きだったんだ。あの子は世間から見たら、非常に我が儘で癇癪もちで、どうしようもない子だけれど、でもね。きっと自分をうまく表現できないだけなんだ。根はやさしい子なのだよ」
僕は知っている、彼女が子猫を助けた時の姿を。あんなにも優しい眼差しをする子が、本当に悪い子には思えない。だからこそ、僕はソフィーナと結婚したい。そして僕の手で、彼女を幸せにしてあげたい。
たとえどんな手を使っても。
「なんだかわかる気がしますわ。ソフィーナ様、誰かを傷つけた時、一瞬悲しそうな顔をするのです。きっと自分もよくない事をしているとわかっているのでしょう。ですが、どうしていいのか分からず…そんな感じですものね
その事に皆様、気が付かれていないのでしょう。ただ、今のままでは…」
「ああ、分かっているよ。でも僕は、どうしても諦められなくてね。だから必ず、ソフィーナ嬢と結婚してみせる。ソラ嬢も、必ず解放してあげるから」
「殿下、ありがとうございます。私も出来る限りの事は致しますわ」
ソラ嬢の気持ちも分かった。ただ、どうやってあの頭の固い貴族たちを説得するかだ…ここはもう、強硬手段に出るしかないか。
僕は王太子だ、この王太子の座をかけて。
僕は最終手段に出る事にしたのだ。




