第19話:やはりこうなったか…~ソリティオ視点~
「母さん、少し落ち着いて。ソリティオの気持ちもわかるよ。ソフィーナを他所の令息に嫁がせるだなんて、考えただけで胸が張り裂けそうになるものだ。だが、ソフィーナは公爵令嬢だ、いずれ誰かの元に嫁がないといけない。
それでも私は、ソリティオにもソフィーナにも、できたら自分たちで相手を見つけて欲しいと思っているのだよ。その為にも、色々な貴族と交流を持ってほしいと考えている。幸いソフィーナも、今はまともになったし。きっといい相手を見つけるだろう」
そう言ってにっこり笑った父上。
確かに今のソフィーナなら、いくらでもいい相手は見つかるだろう。だが…ソフィーナをめぐって、熾烈な争いが起こりそうな気がするのだが…
そんな争いに、できたらソフィーナを巻き込ませたくはないのだが。
「とにかく、まだ焦る年齢ではないし、これからものんびり夜会に参加しながら相手を見つけたらいい。どんと構えていよう。さあ、この話しはお終いにしよう。ソリティオも今日は疲れているだろう。報告に来てくれてありがとう。ゆっくり休みなさい」
「はい、おやすみなさい、父上、母上」
両親に挨拶をして、部屋を出た。確かに父上の言う通り、夜会に定期的に参加して、ゆっくり相手を見極めてくれたらいいか。
そう思っていたのだが…
翌日
「旦那様、奥様、お嬢様とお坊ちゃま宛てに、恐ろしいほどの招待状が届いております。中にはお嬢様と2人でお茶をしたいといった内容のものまであります」
使用人たちが、大量の手紙を持って現れたのだ。昨日の今日で、この量は…さすがに考えられない。
「何だって!それにしても凄い量だな。実は今日急遽王宮に呼び出されていて…悪いが私が帰るまでに、ある程度仕分けをしておいてくれるかい?」
「承知いたしました」
「父上、俺も王宮に一緒に行ってもいいですか?何だか嫌な予感がするのです」
昨日のファラオの行動が、どうしても気になったのだ。もしかしたら、ソフィーナの件かもしれない。そう思ったのだ。
「ああ、構わないよ。一緒に行こうか」
父上と一緒に馬車に乗り込もうとした時だった。
「公爵、ソリティオもお出掛けかい?」
やって来たのは、セシルだ。何やら大きな花束とバスケットを持っている。こいつ、もしかして…
「セシル、我が家に何か用かい?その花束とバスケットは一体何だい?」
「ああ、ソフィーナ嬢に会いたくてね。昨日とても楽しかったから、お茶でもと思って来たのだよ。ソフィーナ嬢はいるかい?」
こいつ、やっぱりソフィーナに好意を抱いているのだな。
「悪いがソフィーナは今出かけているよ。それよりも、事前に連絡を入れたのかい?連絡なしに突然押しかけてくるのは、マナー違反だぞ」
「そうか、出掛けているのか…それは残念だな。どうしても会いたくてさ。俺とお前の仲だから、いいかなって思ったのだが。それじゃあ、これをソフィーナ嬢に渡してくれ。今度はきちんと連絡をしてから来るから」
そう言って帰って行ったセシル。もしかしたらセシルと同じように、直接我が家に押しかけてくる者もいるかもしれない。
すぐに使用人に、突然誰かが押しかけてきても、決してソフィーナに会わせない様にと釘を刺しておいた。
「ソフィーナの人気はすさまじいね。さすが私の娘だ」
父上め、何を呑気な事を言っているのだ。ソフィーナをめぐって、早くも多くの人間が火花を散らしているというのに…
「ソリティオ、そんなに深く考えなくても大丈夫だ。我が家はこれでも、この国で一番権力を持っている貴族だ。皆あまり無茶な事は出来ないだろうから。ソフィーナがこの人と思う相手を見つけるまで、私たちはのんびり見守ろうじゃないか」
「父上は呑気ですね…俺は心配でたまらないのですが…」
確かに我が家は国一番の権力者だが…それでも俺は、不安でたまらない。ソフィーナは令息慣れしていないのだ。それなのに、色々な令息から猛烈なアプローチを受けたら、きっと混乱するだろう。
優しいソフィーナは、1人に決めきれずに胸を痛めるかもしれない。あぁ、考えただけで、可哀そうだ。
どうか穏便に事が進んでいくといいのだが…




