羨ましい…
「天音ちゃん、付き合ってくれてありがとね」
「ううん。ちょうど暇してたから。 それに、もしかしたらいい人いるかもしれないし~?
みんな彼氏いるのが羨ましくてさ~」
「ハハッ たしかに、どこに出会いがあるか分かんないからね! よし!じゃあ、いい人がいることを期待して!」
「麻琴ちゃんは柊斗くんだけ見るんだよ~」
結月は部活だったので、練習試合の見学には天音が付き合ってくれることになった。
「そのネックレス、藍葉くんから?」
「うん。天音ちゃんからもらったヘアクリップも着けてみたよ! キャップはゆづからで、リップはももちゃんからのだし、香水も誕生日でもらったのつけてきたんだ~」
「いい香りだね~」
〈誕生日おめでとう。 麻琴ちゃんのイメージと柊斗が好きそうな香りにしてみたよ!〉
誕生日の日、このメッセージと香水を玲華から預かったと颯汰から渡された。
グラウンドに向かっている途中にテニスコートがあり、お互いやっていたので懐かしくなり、時間もあったので少し見学することに。
「やっぱ見てたらやりたくなる?」
「そうだね~ テニスは楽しかったから… 天音ちゃんは?ソフトやりたくなった?」
「まあね。でも、今は硬式やってみたいかも。 なんかさ、たまに交換してみたくならなかった?」
「なった、なった。 一回ソフトやったけど、感覚が違いすぎておもしろかった」
二人で話しながら、見て回っていると、一つのコートの前で天音が突然立ち止まった。
「あ、あの人…」
「誰?知り合い?」
「知り合い…というか、朝同じ電車で見かける人で…… ちょっといいなって思ってる人…」
話を聞くと、天音の一つ後の駅で乗ってくる人で、今月から見かけるようになって気になり始めたらしい。
「それって、一目惚れってこと?」
「そうかも……」
(―…か、可愛い! いい人いたらいいなとか言ってたけど、いるんじゃん!)
「同じ学校の人?」
「ううん。同じ駅で降りるけど、隣の学校の制服だった」
「そうなんだ~ せっかくだから、終わるまで見ようか? もう少しで終わりそうだし」
(それに天音ちゃん、ずっと目離さないし)
「…いいの?」
「もちろん! ここで会ったのも何かの縁だし、私の用事に付き合ってもらってるから」
「ありがと!」
試合が終わり、どうしようか話していると、天音がずっと見ていた人が二人のところへ近づいてきた。
(え…… もしかして、運命的な…)
隣を見ると、天音は向かってくる人物に目が釘付けで固まっていた。
「白木?」
目の前で立ち止まったその人に名前を呼ばれて、顔をよく見る。
「…古川くん? 久しぶり…」
試合を見ているときは遠くて気付かなかったが、声をかけられて同じ中学だった古川流星だったと知った。
(何で気付かなかったんだ……)
「熱心に見てくる人いるなと思ったら、白木でビビった。 ってか、ちょっと忘れてただろ」
「いや、遠くて… もしかして、試合の邪魔した?」
「いや、試合じゃなくて遊びだから。 今日、部活休みだったけどテニスしたいなと思って来たら、知り合いに会って一緒に…
で、そっちは何してたの?」
「その、サッカー部の練習見に来たんだけど、テニスコート見たら懐かしくなって見てた」
「ふ~ん… 懐かしくなったってことは、今はやってないの?」
「うん。古川くんは続けてるんだね…
あっ、この子、同じ高校の友だちなんだけど、ソフトテニスやってたんだよ!」
天音と流星はお互いに「どうも」と会釈を交わす。
(ここで古川くんが「どっかで見たことある気が…」とか言ったらドラマチックなんだけどな~)
「サッカーって、今から?」
「うん。そうだけど…」
「俺もちょっと一緒に見に行っていい? 誰がいるか見たいし」
「友だちはいいの?」
「大丈夫」
「私はいいけど…」
チラッと天音を見ると、天音がニコニコと「私もいいよ」と言ったので、
流星は「ありがと」と声をかけ、三人でグラウンドに向かって歩き出す。
(まさかのだったけど、まあ天音ちゃんがいいならいいか)
―
「もう始まっちゃってるね」
グラウンドに着くと試合は始まっていて、柊斗と朝陽も出ている。
保護者なのか、たまたま公園にいたサッカー好きの人なのか、思ったより見学が多かった。
「とりあえず、ここら辺に座る?」
(…とは言ったけど、この場合どう座るのがいい? 天音ちゃんと古川くんを隣にする? でも、いきなりは…)
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくるから、荷物見てて」
「オッケー」(ナイス! 今のうち聞こう)
「麻琴ちゃん、ごめんね。私のせいで遅れちゃって…」
「全然! それより、天音ちゃん隣座る?」
「それは無理! でも、びっくりした… まさか、麻琴ちゃんと同じ中学の人だったなんて…
「私も… 声かけられるまで気付かなかった」
「その…普通にしてね。私のこと気にしなくていいから! 私もまだ、よく分かんないし…」
「わかった」
―
「よく見たら、相手の学校、俺のとこじゃん」
「へぇ~ すごい偶然」
「そういえば、何でサッカー観に? 友だちの付き添い?」
「違うよ。私が付き合ってもらってんの」
「ああ、お兄さんがいたっけ。 …でも、たしか二つ上じゃなかった? そしたら卒業してるんじゃ…」
(よく覚えてるなぁ)「まあ、その影響で…?」
「ふ~ん…」
試合中、周りで見学していた人たちが柊斗を見てイケメンだねと話をしているのが聞こえた。
そして今、休憩で飲み物やタオルを渡す女子マネージャーと柊斗の姿を見て、頭では理解していても、心の中はモヤッとする。
(―…ん~… 正直、騒がれるのを見るのはまだいいとして、距離が近いのを見ると、やっぱり…)
(それが仕事ってわかってるし、そんなこと考えるのも申し訳ないし嫌なんだけどさぁ…
柊斗は自分のこと嫉妬深いみたいに言ってたけど、私にそんな場面ないし、むしろ私の方が嫉妬して重いって思われて引かれるかも… さすがに話さないでとまでは言わないけど、せめて楽しそうにはしませんように…
そして、こんなこと考えてしまいすみません。)
心の中で謝罪しながら、念を送るように柊斗に向けて両手を合わせる。
試合中、麻琴がいることに気がついた柊斗は、顔が見られた嬉しさと、見られている恥ずかしさと、どうしてここにいるんだろうという疑問、そして…
(誰だあいつ……)
「おっ、麻琴来てくれたか。 俺が声かけたんだ~ 結月は部活って言ってたから、相原誘ったか。 ん?隣に座ってるの誰だ? 見たことあるような… あ、古川じゃね? テニス部だった」
(いつの間にそんな話してんだよ… って、古川? そういえば、中学の時いたな…)
朝陽の言葉を聞いて、もう一度麻琴を見ると、遠くからこっちに向かって拝んで?祈って?いた。
(何してんだ?)
麻琴を見て不思議に思っていると、その様子を見ていた朝陽は、
「何あれ。麻琴なりの応援?」
と笑っている。
(そんな感じじゃない気がするけど…
とりあえず、かっこ悪いところだけは見せないようにしないとな。 切り替えよう)
(なんで試合中じゃなくて休憩中に念送ってるんだろ?)
(このタイミングで何祈ってんだ?)
隣に座っている麻琴の様子に二人は疑問をもったが、祈り終えた?麻琴のスッキリした顔を見たら、何も言えなかった。
「意外と同じ中学だったの四人くらいか。 それにしても、相変わらず藍葉と矢野はセットだな… 藍葉の人気も…
そういえば、家隣じゃなかった? 中学の時は全然話してなかったけど、今も話さないの?」
ドキッ…「…いや、色々あって今はそれなりに… そうだ、天音ちゃんは誰か知り合いいた?」
(付き合ってるとは、なんか恥ずかしくて言えないし… それに、天音ちゃんの知ってる人と古川くんが知り合いだったら、話できるかも。 何もしなくていいって言ってたけど、これくらいはいいよね?)
「11番と15番の人が同じ中学だったよ」
「マジ?俺、15番と同じクラスだよ。11番は、去年同じクラスでわりと話してた」
「そうなんだ。 二人とも~…」
(よかった~ 11番と15番の人、古川くんと同じクラスになってくれてありがとう。
……同じクラスになるっていいなぁ…)
「へぇ~そうなんだ。 …えっと、天音さん?上の名前なに? あ、俺は古川流星です。」
「…相原天音です。」
「相原さんね。よろしく」
「よろしく…」
流星に名前を言われて、嬉し恥ずかしそうにはにかむ天音。
(おぉー これは、いい感じじゃないですか? ってか、私は今まで二人に名前紹介してなかったのか…
でも、古川くんから聞いたから結果オーライ! …そういえば)
「古川くん、誕生日7月7日だったよね?」
「…そうだけど、よく覚えてたね」
「名前流星で七夕生まれだから印象に残ってた。それに、実は天音ちゃんも、その日誕生日なんだよ!」
「―…へぇ~ 初めて同じ誕生日の人に会った。 俺の名前、七夕生まれで願いを叶える流れ星から流星なんだけど、もしかして、天音って名前、天の川から?」
「うん。天の川のあまに音って書くの」
(すごい…普通に会話してる)
二人の会話を横で聞きながら、試合に出ている柊斗を見る。
(口数少ないって知ってるけど、もう少しだけ会話らしいのしてみたいな… 私も会話得意じゃないから偉そうには言えないけど…)
『ありがとうございました』
練習試合が終了した。
「藍葉くん、ゴール決めてすごかったね。そのおかげで勝てたし」
「うん…」
(かっこよかったなぁ… ちょっとは見たことあるけど、考えたら柊斗がサッカーしてるのをちゃんと見るの初めてかも。 教えてくれた朝陽くんに感謝。)
「結局、俺も最後まで一緒に見ちゃったな。二人はもう帰る?」
「えっと…麻琴ちゃんどうする?」
「とりあえず、合図だけはしようかな。 そのまま帰るのは…」
「だね! ミーティング終わったら行こうか。 古川くんも同じ中学の人、声かける?」
「そうしようかな」
(ナチュラル、そしてスムーズ!天音ちゃんすごいなぁ… 私も天音ちゃんくらい明るかったら…)




