第二十八話
日本神奈川県某所
「こっちに逃げたぞー!」
一人の男が、ビルの上から階下の警察を見下ろす。
「どうやら、やっと運が向いてきたー」
ゆっくりと首を回す。
「あー、久しぶりのシャバだなあ。空気がうめー」
囚人服をまとった彼には、5年振りの街並みである。
「さて、これからどうすっかなあ。ここがこんなんじゃ、世界の体制は崩壊してるな」
男が高笑いする。
「さいっこーだな!楽しくなってきた」
男は遠くを見つめる。
夜の灯りが彼を照らす。
「そういや、あのチビチビは死んだか?」
男の頭に、昔の記憶が流れる。
「誰かに殺されるぐらいなら、か」
そういうと、男は夜の街に消えていった。
熊本県某所
「おーい。そろそろ帰るぞー。もう終わりにしよー」
雑木林の中、少年が妹を探す。
「どこだー?置いて帰っちゃうぞー」
いつものことなのか、兄はあまり焦った様子はない。
すると、木の陰から、真っ白なワンピースがはみ出ていた。
妹だと気づき近づく。
「ほら、み~つけた」
そこに広がっていたのは、血だらけの妹だった。
「なんだこれ、おい!どうしたんだよ!」
息はある。
すぐに病院に連れて行かなければ。
「あれ?なんかガキが増えてる」
後ろに立っていたのは、上背のある白髪の男だった。
「うーん、見られちゃったし、処理しないと」
「あなたがやったのか」
少年は怒りで、今にも飛び出しそうだ。
少年は黒い粒子で、剣を作り出す。
「へー、10まで読めるのか。殺すにはもったいないか」
「何を、言ってるんだ。これはお前がやったのか、聞いているんだ」
「そうだったら?どうするの?僕を殺すの?それも、楽しそうだけど、妹ちゃんはいいの?」
妹は一刻を争う状況だ。
少年は怒りをぐっとこらえ、妹を抱きかかえる。
「覚えてろ。僕はあなたを絶対に許さない」
少年は白髪の男に背を向け、走り出す。
「つい、逃がしちゃったよ。まあ、いいか。すぐにまた会えそうだ」
男はその場を離れる。
妹を抱え、病院へと走る少年。
その目には、復讐の炎が宿る。
東京都某所
放棄された駐車場の階段を歩く一人の女がいた。
片手には小包、もう片方でスマホを持つ。
スマホを開くととあるニュースが特集されていた。
「また、11読者が見つかったか。嘘くさい話ね。国がそんなもんはいくらでもでっち上げられるでしょう。まあ、あのお方からすれば、全くもって、下らない話だわ」
女が階段を上がり終える。
天幕が張られたスペースに向かう。
少し身なりを整え、中に入り、膝をつく。
「失礼致します。こちら、例の物」
中には、デパートから持ってきたと思われるベッドに横たわる男がいた。
男は仰向けになりながら、フルーツを食べていた。
「そうか、置いとけ」
「はい、それと、ご報告があります」
「あ?」
「能力者集めについてですが、関東近辺で目ぼしい者を129名集めることができました。目標人数は超えましたが、いかように」
「読めないやつをいくら集めてもしょうがない」
男が女を見つめる。
「11は見つかったのか?」
「すいません。未だ集めた者の中にはいません」
女の手が震える。
「ファック」
「誠に申し訳ございません」
「まあ、見つからないなら、奪えばいい」
「分かりました。準備させておきます」
「あー。めんどうだ」
「全ては、あなたの御心のままに。終読者様」
男は答えず、フルーツをもう一つ口へ放り込んだ。
山形県某所
「それはどういうことだ?」
「俺様が何にもないお前をこの物語の主役にしてやるって言ってんだよ」
「なんじゃそりゃ」
「これで、お前の命は俺のもんだ。勝手にどっかで落っことすなよ」
「ああ、よろしくな、江戸」
「シクヨロ、赤凪」
「おう」
「これからどうすんだ?」
「とりあえず、人助けでもしながら、終読者でも探してみるか」
「あ、終読者、俺ね」
「・・・」
「俺が十二位階神書終読者です。はい、発見おめでとさん」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」




