協力者 ③
【闇堕ち少女、怨霊と化す!】
憎悪の炎は死んでも消えない!
呪い系バッドエンドサイコホラー。
やがて、指示した箇所をすべて読み終えたらしく、雅が静かに日記を閉じた。
「全部、彼女の仕業だったのか……」
本田奈央にだまされていたことを知り、雅は相当のショックを受けたようだ。顔は血の気を失い、心ここにあらずといった様子で、目の前に座る恭弥の存在を忘れたかのように放心している。
すると突然、雅は唇を震わせながら泣き崩れた。
「本当にごめん……。ぼくのせいで……、ぼくのせいで……」
テーブルに額をつけるようにして、雅は泣きながら謝罪の言葉を繰り返す。
「雅先輩、顔を上げてください」
恭弥は静かに声をかけるが、雅は嗚咽を漏らしたまま顔を上げようとしない。
それも当然だったろう。彼の行為が引き金となり、姉は闇堕ちしたのだから——。
雅に対して怒りの感情がないといえば嘘になる。だが、彼もまた被害者なのだ。姉の日記にも、彼を過度に責め立てる記述はほとんど見られなかった。全裸にされ、複数の人間から暴行を受けたのだ。そのときの彼が弱気になるのも無理はない。それに今の彼には同情の余地もある。その暴行を裏で操っていたのが、現在の恋人である本田奈央だったわけなのだから。受けたショックは計り知れない。
「雅先輩、ぼくはあなたを責める気はありません」
その言葉に反応して、雅がわずかに顔を上げる。
「それは姉ちゃんも同じだと思います」
罪悪感に満ちた顔が、ほんの少しだけ安らぐ。
「でも、もし姉ちゃんに対して少しでも罪悪感があるなら、ぼくに力を貸してくれませんか」
「力を……貸す?」
雅が困惑した表情で聞き返してくる。
「ええ、どうしても雅先輩の力が必要なんです」
「ぼくに何をしろと?」
「もう少しだけ、本田奈央と関係を続けてください」
雅が目を剥いて絶句する。
「いや、それだけは……」
「お願いします」
雅が大きく首を横に振った。
「無理だ! そんなの絶対に無理だよ! もう彼女とは、一分一秒でもいっしょにいたくない!」
「それでも、お願いします!」
恭弥は有無を言わせぬ態度で声を上げた。
雅が目に見えてたじろぐ。恭弥は周囲の視線を感じたが構わず続けた。
「ぼくは姉ちゃんの、復讐をしたいんです!」
「復讐!?」
雅が驚いて目を剥いた。
「き、君は……、お姉さんの復讐をするつもりなのか!?」
「そうです」
雅の顔に狼狽の色が浮かんだ。その実に頼りない姿に、恭弥は急に怒りが込み上げてきた。姉はこんな情けない男と付き合ったために不幸な目に遭った。もし、この男に少しでも男らしいところがあったなら、助けを呼んで被害は最小限で済んでいたはずだ。そう思うと、怨みの言葉でも投げつけたい衝動に駆られた。だが、彼の協力がなければ計画は成り立たない。
恭弥は冷めたコーヒーを口に運ぶ。苦味が口の中に広がるのを感じながら相手の出方を待った。
雅がおそるおそるといった様子で口を開いた。
「……ところで、日記の件、ご両親は?」
「両親は知りません。まあ話したところで、きっと世間体を気にして、なかったことにするんじゃないですかね」
「なるほど……。確かに、田舎の人はそういう気質があるよな……」
「ええ」
「それなら、警察に届けたらどうかな?」
あくまでも逃げ腰な態度に、恭弥は冷ややかに答えた。
「どうでしょうね。警察がどこまで本気で動いてくれるのか疑問ですけど」
「確かに……」
雅はむずかしい顔をして、なおも別の提案を模索している様子だ。よほど協力したくないのだろう。それでも恭弥は、彼の罪悪感につけ込んででも必ず協力させるつもりだった。
「雅先輩、協力するかどうかは別として聞いてください。ぼくが考えてる復讐ってのは、姉ちゃんをよみがえらせることなんです」
「よみがえらせる!?」
「ええ。よみがえった姉ちゃんが、あの女を恐怖のどん底に突き落とすんです」
雅が息を呑む。彼の動揺を無視して、恭弥は計画の全貌を淡々と語り始めた。
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