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いわゆる「1人組長」の阿倍信夫は、そいつを見た途端、逃げ出そうとした。
本職のヤクザである自分より、遥かにヤクザにしか見えない。
新宿署の組対の刑事の有村だ。
「おい、おっちゃん、ちょっと最近景気いいそうだな」
「やめて下さいよ。刑事と付き合うなって本家から言われてんですよ」
デカい仕事が入ったのは確かだ。
でも、しばらくの間だけ食事をいつもより豪華に出来る程度の臨時収入だ。
いずれ、上部組織への上納金として消える。
「あんただって、俺みたいなのと付き合いが有ると……」
「実は、やり過ぎちまったようで、飛ばされそうでな。で、餞別に三〇万ほどもらえねえか」
「ふざけんじゃ……」
「おい、そこの若いの。どこに電話しようとしてる?」
「えっ?」
三〇〜四〇代のチンピラが六〇過ぎの男に金をたかろうとしている。
傍から見ると、そうにしか思えない。
どうやら、警察に通報しようとしている若い男を有村が見付けたようだ。
しかも、この界隈では「違法な客引きに気を付けましょう」的な音声が、いつも流れている。
「警察はこっちで、こいつがヤツザだ。あと写真撮ったら、しょっ引くぞ‼」
そう言いながら、有村は警察手帳を出す。
「ちょっと待って下さい。今、ATMから……」
「ヤクザは銀行口座持てねえだろうがッ‼ 舐めてんのかッ⁉」




