番外・生き返った皇子、大罪を負う(10)
計画は最終段階に進んだ。
フィーネを書類上でも取り戻し、愚かな者達に制裁を与える。
モデラートへの編入に関し、皇帝との話し合いは思いの外スムーズに事が運んだ。
前の皇太子が神殿を敵に回したかと思えば、次の皇太子は国内の貴族を裏切った。流石に心が折れたのかもしれない。
しかし、最後の最後で皇帝が足掻いた。フェローを捕らえようとしたのだ。
とはいえ想定の範囲内である。逆に捕らえて牢へ入れた。滅び行く国に王はもう必要ない。
『貴様が……ッ、貴様がこの全ての黒幕だろう! フェルマータ!!』
『………』
『なにが滅ぶだ…! グラードにあの毒婦を引き合わせたのも貴様だろう! グラードは……グラードこそ私の希望だったのだ!』
被害妄想にも程がある。フェローは何もしていない。むしろどれだけ汚い尻を拭いてきたことか。
あのアホ元皇太子は、どちらかと言うとフェローの父だった皇帝のせいだ。普通に病死で処理をすればいいのに”皇太子が平民と恋をして市井に下った”事にして、周辺国に堂々と間諜を放つ口実にした。後ろめたい事を美談で誤魔化そうとするのは血筋なのだろうか。
この男があの元皇太子を溺愛した理由は、フェローには分かっている。五百年前に偉才と呼ばれた皇太子と瓜二つだからだ。容姿が似ているだけで、中身はとても優れているようには見えなかったが。
フィーネも義父もこんな悪趣味な真似はしないので、本当にただの先祖返りのようなものだろう。帝国に滅びを招いた皇子と帝国に終止符を打った皇子が同じ顔とは、まるで粗末な舞台のようだ。
『何とか言ったらどうなんだッ!』
『──そうだな。一つ、面白い話をしてやろう』
『なに……?』
『グラードはお前の子ではない。血が繋がっているのは、現皇太子──レガートの方だ』
フィーネの呪い故、皇族の「交配」には特に目を光らせている。
皇帝は一人しか子供を生めない。それなのに何世代かは二人か三人を儲けている。つまりはそういう事だ。
皇妃の血筋は、かつて皇家に生まれて降嫁した姫で、皇帝の実子だ。先祖返りをしてもなんら不思議ではない。
つまり目の前の男は皇帝の血を引いていなかったりするのだが、元皇太子を妄信していた男にはこちらの方が酷だろう。
現に驚愕で顔は強張り、先程までの勢いはどこへ行ったのか、二歩三歩と後ろへ下がった。
『う……嘘だ』
『皇妃が城に上がる時に付いてきた赤髪の騎士だ。心当たりはあるだろう?』
完全な政略結婚だ。ただならぬ関係だと皇帝も気付いていただろう。
だがまさか自分より先に不倫の子を産むとは思いもしなかったはずだ。長子なら優遇されると踏んだのか、血筋に似て欲深い。
髪と目の色は違うが、よくよく見れば耳や爪の特徴は父親譲りだ。この男も当の本人も全く気付いていなかったようだが。
『安心しろ、すぐに皇妃も騎士も連れて来てやる。仲良く話し合うんだな』
『あ……あああああああッ!』
断末魔を背に受けながら、さっさと歩き出す。
無駄に時間を食ってしまった。急いでフィーネのところへ向かわなければ。




