↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれ変わった令嬢は元姦悪皇子の枢機卿に恋をする  作者: 腓(こむら)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/57

19・天使と皇子の微睡みの日々

 想いが通じ合ってから一月。

 その日、フィーネはフェローに連れられて校舎の廊下を歩いていた。人目を避けているのか、人気はない。


『どこへ行くの?』

『内緒』


 フェローは楽しそうだ。最近はずっと笑っていて、フィーネも嬉しい。

 国外へ逃げる準備も順調に進んでいるらしく、姉達の子孫という心強い味方を得たと先程聞いたばかりだ。


 一つの小さな部屋に入ると、フェローはカーテンを引きながら紙袋をこちらへ手渡してくる。

 中を覗くと服のようだ。学園にいる女性のほとんどが身に付けているものと似ている。


『これは?』

『制服だ。君の髪も完全な白ではなくなったし、これを着ていれば誰も君を天使だとは思わない。姦悪皇子と一緒なら尚更。兄は外遊中だし、休日だから人も少ない。今なら多少羽目を外してもいいだろう』

『ふうん……?』

『……今日は私と学園内を巡ろう。前に見たいと言っていただろう?』

『本当!?』


 フェローとの会話で出てくる学園の中が気になっていたのだ。特に食堂は、フェローが持ってきてくれるものの他にもたくさん種類があるらしく、甘いものもあるみたいなので楽しみだ。

 嬉しくてフェローに抱きつけば、一度抱き返された後に優しく離された。


『部屋の外にいるから着替え終わったら呼んでくれ』

『分かったわ』


 触れるだけのキスをして、フェローは部屋を出て行く。

 フィーネは早速着替えようと、服を脱いで紙袋から制服を取り出したのだが。


『フェロー』

『? 早いな。何か──』


 ドアを開けたかと思えば、なぜか途中で閉めてしまった。彼はまだ部屋の外だ。


『フェロー?』

『な……んで服を着てないんだ!』

『着替えろって言ったのは貴方じゃない。着方が分からないの』


 天界では父に頼めば何でも手に入るが、下着や服など頼みにくいものは自分で作ったり、得意な姉妹に頼んで作ってもらう。裁縫の才能もセンスもないフィーネは後者だった。

 こういう服を姉妹が作って着ている姿を見たことがあるが、お洒落にあまり興味がないフィーネは、着やすくて伸縮性のあるこのワンピース以外着たことがない。そうフェローに説明すると、ため息を吐かれてしまった。


『……仕方ない。ならワンピースを着直してくれ。そうじゃないと着させられない』

『ふうん? ……入ってきて、フェロー』

『全く、君はいつも──』


 ドアを開けたかと思えば、また途中で閉めてしまった。彼は勿論、部屋の外だ。


『誰が裸になれと言った!?』

『ごめんなさい。反応がなんだか面白かったから、つい』

『つい、で人の理性を全力で飛ばしにくるんじゃない!』

『? フェローも空を飛べるの?』

『………………いいから服を着てくれ、頼むから』


 なんだか本当に困っているようだったので、今度はちゃんと服を着た。部屋に入ってきたフェローは赤面して酷く疲れた様子だったが、部屋の外で何かあったのだろうか。

 フェローにワンピースの上から制服を着せてもらっている間、大人しくしていろと言われたので彼を見つめる事にした。そうすると目線が合わない彼に『自分で脱げるように覚えろ」と叱られてしまった。


『フェローが脱がせてくれればいいじゃない。着せかえごっこって、こんなに楽しいものなのね』

『ただの着替えだ、これは。…………結婚したら覚えておけよ』

『貴方との事だもの。忘れないわ』

『本当に君は……』


 着替え終わり、鏡を覗く。こうしてみるとフェローとお揃いみたいで嬉しい。

 彼の前でクルリと回ってみせた。


『どう? 似合うかしら』

『似合っているよ。世界一可愛い』

『ふふ、言い過ぎよ。妹の方が可愛いもの』

『君の妹ならそうだろうが、私はフィーネが一番可愛いと思う』

『ありがとう。貴方だって世界一素敵よ』


 ぎゅっと抱き合ってキスをする。唇が触れるだけなのに、なんでこんなに気持ちがいいのだろう。覚えたての頃は会話もせず、ずっとキスばかりしていた。

 余韻にうっとりしていると、フェローはなぜかため息を吐いて抱き締める腕の力を強める。


『…………天臨祭まで半年か……』


 そう、恋人で居られるのは半年。それを過ぎれば夫婦になるのだ。

 今の内に満喫し尽くさなければ、とフィーネはフェローにキスをねだった。一通り満足してから部屋を出る。


『先にランチにしようか。……流石にナイフとフォークは分かるだろう?』

『…………分からないから食べさせて?』

『分かるんだな、良かった』

『あら? なんだか噛み合わない』

『君がウソを吐くからだ』


 腕は拒まれてしまったので、手を繋いで歩きだす。

 きっと今日は忘れられない一日になる。フィーネはそう予感した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。