お化けの恩返しかな?
だ、誰・・・?
「いやぁ、なんでみんな校庭の方に行くのに君たちだけ校舎の奥に行くんだろうって不思議には思ってたんだよね。後夜祭始まって君だけ姿が見えないし、なんか怪しいなぁって思って戻ってきたんだ」
「ありがとうございます。あ、あの・・・」
「あ、俺は石井司。3年」
「私は1年の中川ハルカです」
中川ちゃんって呼ぶね、と言いながら微笑むこの男の人は先輩だった。
「君、俺のクラスの模擬店来てれたよね?お化け屋敷」
「あ、はい」
私のことを知っている様子だ。
「かつら持って腰抜かしてた子だよね?」
「そ、そうです」
何故それを・・・!
「俺あの時のお化けなの」
「あー!」
あの時は坊主だったし、薄暗かったから分からなかったけど確かにあのお化け役の先輩だった気がする。
「すごいおどろき様でおもしろ、いや、大丈夫だったかなって思って後夜祭で見かけたら話しかけようと思ってた所で女の子に連れて行かれていたから。なんで閉じ込められてたの?」
「それがよくわからなくて・・・。まぁ嫌われているのは良くわかったんですけどね」
「あの子ミスコンでてた子でしょ?女の子って怖いねー」
「あはは」
石井先輩のおかげで無事部屋を脱出できた私。
「どうする?まだ後夜祭やってるけど」
「うーん。行きたい気持ちはあるんですけど、途中からだし、結衣ちゃんに見つかると面倒くさいことになる気もして」
「行きたいなら行こうよ。中川ちゃん悪くないんだから堂々としていいんじゃない?なんなら俺が側にいてあげるよ?」
「先輩・・・」
お化け屋敷で腰を抜かした時も優しかったな。
「大丈夫大丈夫。俺に任せな」
「わっ」
石井先輩は私の頭をポンポンと撫でて、やさしく笑ってくれたのだ。
***
ハルカ・・・どこにいるんだ。
俺はダンスパーティーで盛り上がっている生徒の間をすり抜け校舎に戻ろうとしていた。
「あ〜!ゆうみっけ!どこ行くの?」
「お前は」
あの女に声をかけられた。
「結衣と踊ろうよ」
「お前に興味ないって言っただろ」
「え〜。でもでも教室で泣いてる結衣のこと励ましてくれたよね?それって興味がないなんてことなくない?」
そうとったのか。興味がないから謝る必要ないって言ったつもりだったけど。
「結衣ちゃーん!俺と踊ろうよー!」
「ほら、呼ばれてるぜ」
「結衣はゆうがいい」
「はぁ?それよりも、ハルカどこにいるのかお前は知ってるんじゃねぇの?」
「中川さんなら来ないよ。帰っちゃったんじゃない?中川さんの代わりに結衣といようよ」
「お前ほんと頭おかしいんじゃないか?お前なんかがハルカの代わりになるわけないだろ」
「そんなの分からないじゃん。ゆうしか思ってないかもよ?」
どういう意味だよ。
こいつと話しても埒が明かないから無視してハルカを探しに行こうとした。
「ほら」
ニコリ、と微笑んだ里中はどこかを指さした。
「ハルカ・・・」
その方向を見ると、ハルカが知らない男と一緒に校舎から出てくる所だった。
「ね?中川さんは別にゆうのことどうでもいいんだよ。ゆうとの約束も無視して他の男を選んでるよ?」
「うるさい」
ハルカと話したい、そいつは誰だって聞きたい。
だけどそいつと手を繋いでるハルカをみて、俺は動けなくなってしまったのだった。
「ゆう、かわいそう。結衣が慰めてあげようか?」
「うるさい」
「お腹痛いって嘘だったんだなぁ。中川さんも残酷なことするよね」
「うるさい」
「楽しい楽しい後夜祭になるはずだったのに、中川さんのせいで台無しだね」
「うるせぇっつってんだろ!!」
俺は堪えくれなくなり里中を怒鳴ってしまった後、ハッと我に返り早歩きで離れた。
ハルカにも何か事情があったんだ。
だけど連絡も全部無視された、俺を探す様子もなく他の男と手を繋いでた。
俺は、俺は・・・。
胸がザワザワして落ち着かなくなった俺は、盛り上がる会場を背に教室に戻るのだった。




