藁人形
久しぶりの投稿です。
この作品は『怪異らしきもの』に遭遇した場合更新していたので、正直更新できないほうが良いのです。
とはいえ、平穏無事に過ごしていたのではなく。
遭遇していたものの、内容が内容なのでここに書けなかったというのが正しいです。
投稿済みの話に関連する人が他界したためです。
放置していましたが、小説家になろうにログインするたびにこの作品がランキングに入っているとの通知が届くので、どなたかが読んでくださっているのでしょうか。
四年前に更新が止まっている作品を見つけてくださったことに感謝し、そのお礼になるのかは謎ですが、投稿できそうな内容のものを記載していきます。
これは去年の話。
約一年前の、九月下旬です。
私は道路を挟んで緑地があるマンションに住んでいます。
その緑地では毎日野鳥が囀っており、時には珍しい鳥もやってくるので、私は鳥の楽園と呼んでいました。
家にいながらバードウォッチングが出来るので、最高です。
今年はツミの番がやって来て営巣し、オナガとともに暮らしておりました。
ですが、木を切られてしまい、懸命に作った巣は破壊され、結果、卵が孵化することはありませんでした。
緑地は市が管理しており、夏になると木を伐採するため業者がやってくるのです。
伐採中、上空を飛び回って悲し気に泣いていたツミ夫婦がどうなったのか、私には解りません。
来年はここで営巣しないで欲しいと願うばかりです。
そんな穏やかな緑地ですが、ある夜のこと。
主人が「変な音がする」と言いました。
私にはその音が聞こえなかったのですが、主人は気にして緑地の方角を見ていました。
時刻は深夜一時過ぎ。
カーテンを開いて様子を窺うと、バイクの走り去る音が聞こえました。
翌日。
かなり気になっていた主人は緑地に出向き、数分後、血相を変えて戻ってきました。
「藁人形だ!」
主人が聞いた変な音、というのは『木に藁人形を打ちつけている音』でした。
私は即座に「あ、これは見に行ってはいけないやつだ」と感じました。
とはいえ、藁人形を放置すると、それに気づいた子供たちが遊んでしまうかもしれない。
何しろその緑地は鳥の楽園だけでなく、子供やお年寄りが立ち寄る憩いの場でもあるのです。
結局、警察に連絡しました。
数分後にやって来た警官は「藁人形は初めてです」と困惑。
私はベランダから様子を窺っていましたが、嫌な予感がしてお清めの塩を手に緑地へ向かいました。
藁人形を見るのは気が引けましたが、一瞥して後日調べたところ、Ama〇onでも購入できる商品だと思います。
自分でこしらえたものではない。
ただ、その藁人形には紙も打ちつけてあり、そこに恨みと名前らしきものが記載されていました。
内容はよく見ていないので完全ではありませんが、『金の亡者〇〇に災いあれ』のような文面です。
実際はもっと長く、苗字にしては珍しい漢字が並んでいたので、名前ではないのかもしれません。
ここで藁人形について記載します。
地方によっては厄除けで使用する時もありますが、万人が想像する『藁人形』は『呪いの象徴』だと思います。
『丑の刻参り』で使用するものですね。
丑の刻参りをざっくり説明すると、①深夜の一時から三時頃、②神社の御神木に、③憎悪を抱く相手を模した藁人形を、④釘で打ちつける……という昔からある呪いの一種。
七日目に呪った相手が死ぬというものですが、現代でこれを実行するのはほぼ不可能だと思っています。
何しろ、白い衣装で、頭に蝋燭をつけ、その姿を見られることなく、七日続けなければなりません。
そんな不審者を見たら、誰でも通報すると思います。
話を戻しますが、今回の藁人形は神社ではなく緑地の木に打ち込まれました。
ので、本気で呪い殺そうとしたのではなく、嫌がらせの一種だと思っています。
これは私の憶測ですが、緑地と隣接している家の人に恨みがあったのかなぁと。
呪いであれ嫌がらせであれ、市の所有物である木に穴を開けたので、器物破損です。
駆けつけた警官は「嫌だなぁ」とぼやきながら、藁人形を撤去する作業を行うことになりました。
気の毒です。
問題はここから。
その時にうちの主人も触っていたらしいのですが、私には伝えていませんでした。
私は藁人形を見て寒気がしたので、すぐに家に引き返していたんですね。
この後ですが、『主人が詐欺に遭い約27万が消える』という今思い出しても腸が煮えくり返る事件が発生します。
別サイトで読んだ人もいるかもしれませんね、あれです。
あれの発端はこれだと思っています。
ちなみに27万円は栃木旅行の費用だったので、悲しいことに中止となりました。
詐欺と藁人形との関連はないのかもしれません。
ただ、普段であれば外の物音にすぐ気づく私には届かず、気にしない主人にだけ聞こえたことから考えると、やはり嫌なものに主人が吸い寄せられてしまったのではないのかと……そう思っています。
あの時、藁人形にお清め塩を振りかけるべきだったと悔やんでいます。
絶対に触れるなと言ったのに……。
あれほど言ったのに……。
何故触ったのか。