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冷は怒りで拳に力を込める。
こんなに怒りを覚えたのはかつて無い。
魔族を発見すると立ち向かう。
(魔族の野朗、許さねえぞ。俺の怒りの拳を喰らえ!)
魔族が好き放題やってるのを止めさせるために集団に突入する。
「俺の拳が見えるか魔族!」
「何言ってやがる。人族の身分で。貴様らなど怖くもない!」
冷の登場には驚きはしなかった魔族。
どうせ同じ騎士団の連中だと思っていた。
要注意なのはラジッチだけ。
それ以外は何人居ても同じで、怖くもない。
しかしその考えが間違いであったのに直ぐに理解することに。
「ぐわぁ!!」
冷の拳が見る間もなく炸裂したからだ。
顔面を高速で殴る。
魔族は殴られたことさえ気づかない。
何があったか理解する前に脳が保てなくなり死をむかえる。
「どうなってんだ!」
その横にいた魔族は、隣が死んでいるのさえわからない。
分かる前に拳を数発喰らっていた。
眼球の速さよりも速い動きである。
脳に達したのが何か考えることさえ許さないで死を与えられる。
狂戦士らしい殺しかたであった。
「こいつ、強え〜〜〜」
狂った拳が暴走したようであった。
あまりの速さと破壊力に衝撃を受ける。
魔族の何人かは瞬殺されていた。
これ程の技は経験したこともないレベルだったからだ。
「なんだテメエは! ただの人族ではない、何者だ?」
「俺の名は冷……。知ってたらよろしくな」
「れ、れ、冷! テメエがあの冷か! クソ、俺達の仲間をよくもやりやがったな」
「だったらどうするよ、俺と殺り合う気か。俺なら相手になるぜ」
(コイツも瞬殺してやろう)
「クソ、クソ、クソ」
魔族の中でも司令する立場にいた魔族であった。
下級魔人の名もあり、人族の言葉を理解している。
「あんたらじゃ俺の相手にならないよ!」
「クソッ〜〜〜〜」
冷はひと思いにその下級魔人を殺そうとした。
そこで冷は拳を初めて止める。
異変に気がついたからだ。
魔族のものとは明らかに違う気を。
それが何者かは1秒で区別出来た。
ガーゴイルの気だと。
気は冷に降りかかる様であった。
頭上を見上げて、
「……上か!!」
(注意はしていたが……)
「ふふ、気がつくか冷……私はお前を許さない」
ガーゴイルが上空から急降下した。
気配を察知した冷を褒める。
普通なら察知するのは無理だろう。
一撃で死をむかえる。
冷はガーゴイルの速さと同じくらいの速さで回避した。
スキルの攻撃回避を使用。
冷でなければ体は真っ二つとなっていた。
「危ないですが」
(ふぅ〜〜あぶねー)
「今のを回避しましたか。サイクロプスを倒したのはあなた?」
「正解です。だとしたらどうする」
(サイクロプスの知り合いかよ。なんか復讐じみてる。面倒な感じだな。めっちゃ俺を睨んでますが)
ガーゴイルは凄まじい眼光で冷を睨みつける。
「許しません」
目の前にサイクロプスを倒した相手がいると考えたら、興奮が頂点に達していた。
「俺が憎いようだな」
(サイクロプスの復讐かよ)
冷とガーゴイルのバトルが始まった。
遅ればせながらリリス達も登場した。
魔族達の集まる地点に行き、加勢した。
到着と同時にリリスがスキルを放つ。
「なんだこの少女らは、まとめて殺してやるよ!」
「魔族め、私を誰だと思う。聞いてびっくりするな。ディープスピン!!」
リリスのスキルが魔族に放たれると見事に着弾し、その場にいた数匹は爆風で吹き飛んだ。
「ぐぎゃ〜〜〜〜!!!」
「ナメた口をきくからよ!」
魔族は今までにない攻撃に町の人々への攻撃を止める。
「ナイスですリリス。つぎは私の攻撃もどうぞ。聖剣ヴェルファイアです!」
「待てよ、普通の少女じゃないぜ〜」
魔族がリリスに視線を送るのをみて、ミーコが素早く速攻を仕掛けた。
「ぐぎゃ〜〜〜〜!!」
「どうですか私の聖剣の味は?」
魔族はスキをつかれて剣によるダメージを受ける。
ミーコの立ち回りは魔族にも十分に通用し、斬りまくる。
訓練の成果が現れていて、聖剣の切れ味は増していた。
ミーコ本人は戦いで精一杯であるが。
そこへ最初に戦闘していた騎士団が合流して少女達の戦う姿をみるや、
「おお、ありがたい。助かりました」
「確か……騎士団の方と思われるが、なぜここに?」
ミーコは一度騎士団とやりあったので、防具姿などで覚えていた。
「国王からの指示でガーゴイルを倒しに来たのです。そしたら魔族がやって来て戦いになりました。それも強力で手におえません」
「協力します。人々を避難させてあげてください。これ以上の犠牲者はなくしたいです」
「はい、避難させます」
そこへラジッチが来る。
今の少女らの戦う姿を見ていた。
アリエル達を記憶していたので不思議に思う。
すでに帰ったと思ったから。
「君たちは冷の仲間か。冷はどうした?」
「ガーゴイルと戦闘中」
「何! ガーゴイルとか。それなら冷にガーゴイルは任せるとしよう。魔族らを退治するのも苦戦してる」
冷は不参加と確定していたと思ったから驚く。
それもガーゴイルとなれば、ラジッチの戦いにも影響する。
ガーゴイルは冷に任せるとした。
「私達を恨んでいたのでは?ラジッチさん。だって一度は戦って負けたわけでしょうあなたは。だから意外なんですが」
ラジッチは冷に負けていた。
それで今は協力しようとなるのは、不審に思えたのだ。
「正しい。恨んでいるぜ。だが今はお互いに争ってる場合か。違うだろ、ここは一致団結する時だ。言い争えばお互い自滅する」
自滅の可能性を言うことで、ラジッチは敵対心はないと説明する。
「そういう話なら協力します」
アリエルはラジッチを一時的に信用することにした。
自滅したら終わりだからである。
だがまだ安心は出来ない。
依然として魔族側が勝ち進んでいたからだ。
たった3人が来たところで戦力は劇的に増えたわけではないからだ。
むしろ魔族がリリス達を潰す為に集まりだす。
そうなると実力のある魔族を倒すのは困難になる。
「立ち話は後にしよう」
ラジッチは戦闘の優先を促す。
「そのようね。どんどんと集まってきてますから」
アリエルはラジッチとともに戦闘に向かった。
リリスは連続的にスキル攻撃をしていたが、
「うう……。コイツら私の攻撃をかいくぐってきやがる」
ここでリリスが魔族の槍を受けてしまう。
流血するはめに。
最初のようには有利にはいかない。
「ううっ……。苦しいわね。聖剣で防御してるようでは」
ミーコも同じ時に怪我をした。
苦戦はわかっていた。
こうなる事も。
流血するのを覚悟で来た。
彼女達の頭には逃げることは、はなからなかった。
あるのは勝って冷に会うことだけ。
そうしないと冷にバカにされるからで、見返してやりたいのだった。
「リリス、冷に教わったように戦うのよ。思い出すの。あなたにはそれだけの力があるのよ」
「といっても……」
「リリスが魔力を溜めるまではミーコが頑張りなさい。私は聖なる治癒で怪我人を治してみる」
アリエルはスキルである治癒を使う。
一度に全員の怪我人を治療は無理だ。
あくまで1人ずつとなる。
もちろん危険はあり、治癒している最中も敵から攻撃される。
「わかったアリエル。あなたしか治療は出来ないのだから任せる」
「ミーコ、ほら、魔族が来るぞ!」
リリスが注意するとミーコは振り向きざまに魔族を切り裂いた。
「ありがたいリリス!」
リリスに礼を言う。
そこへ新たな軍団が現れた。
防具と武器を身に着けてきたのは、ギルドから来た冒険者達。
話を聞いて魔族との戦いに出向いた。
「我々も参戦いたすぞラジッチさん!」
「……あんたらは冒険者たちか。よく来てくれた。敵は手強い。心してかかるんだ!」
「ここは俺達の町。魔人が来ようが魔族だろうが逃げはしない!」
「数では十分に戦える数になりそうだな」
後から参戦して来たのは、冒険者ギルドからきた冒険者達だった。
これで数では多くなり魔族とも互角ともいえる戦いが可能となる。
ラジッチの斧が音をあげる。
魔族は血しぶきをあげる。
その時、冷もまた血を吐いていた。
ラジッチ、少女、冒険者の戦いも厳しいがガーゴイルとの戦いは、次元の違うレベルであった。
(参ったな。やはり強いぜガーゴイル。このままだと前回同様に負けも同然になるな。また胸を掴むのはさすがに通用しないだろう。二度もくらうような奴じゃない。それなら俺もスキルしかない)
ガーゴイルの大きな胸を触るのは得策ではないとした。
やすやすと触らせてはくれないだろうと。
ガーゴイルも女の子である。
胸を触られた時には一瞬、隙が生まれた。
そこで冷はスキルの使用を決める。
スキルストレージには幾つか記録された。
その中から選んだのは烈火拳。
前回の魔人サイクロプス戦で覚えたスキルだ。
あえてそのスキルを選んだのはガーゴイルがサイクロプスをやたらと意識するからだ。
復讐に燃えているようなので、あえてそれを選択した。
烈火拳は拳に火属性を施し爆発的に相手にダメージを与えられる。
拳の技に自信のある冷に、まさにぴったりのスキルである。
魔力を膨らませ烈火拳を発動させる。




