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冷達が空き地での苦しくも励んだ訓練を終えた時のこと、とある森の奥地。
中級魔人が全員集合していた。
こんなに集まるのはいれい中のいれい。
よほどの事態でないと集まれない。
メンバーも仲の良い悪いもある。
中級ともなると強さは格段に強くなり、恐れられる。
その分なのか、性格も我が強くなる傾向に。
日頃から集まる理由がある時だけこうして集まるのだった。
ガーゴイル、ゴーレム、ギガース、グリフォン。
四人の魔人はテーブルにつき沈黙となる。
それぞれは姿は人族に近くはあるが、魔族のものであった。
周りにいる魔族は確実に震えていた。
尊敬する魔人でも、いざ目の前ににしたら恐怖する。
居るだけで、圧倒的なオーラを発して存在感をだしていた。
普段は集まることはないが、緊急事態となり、全員集合した。
その緊急事態とは言うまでもなく、冷の起こしたこと。
その件であった。
「本当なの、サイクロプスがやられたってのは?」
信じられない話だとガーゴイルが言う。
ガーゴイルは鳥のように白い羽根を背中から生やしている女の魔人である。
「ああ、確かな情報だ。ガッパオ山で人族の者に倒された。そして最悪なのは王都に連れて行かれ牢獄の中だとか」
ゴーレムが苦しい顔で頷く。
ゴーレムは鋼鉄で身を固めている。
「人族にだと。それは嘘でしょう」
グリフォンはガーゴイルと同じように信じられない。
グリフォンは美少女の姿をしている。
「嘘ではない。それも冒険者らしい。しかもオークを殺ったのと同一人物」
「冒険者か。冒険者なら限られた者となろう。サイクロプスを倒せるだけの能力を持つのは」
ギガースもまた美少女であった。
その人族に興味を持った。
「どちらにせよ、放ってはおけない。サイクロプスの恨みを晴らす」
「待て、ガーゴイルよ。そんなに苛立つな。我ら魔人が力を合わせれば敵ではないのだから」
苛立つガーゴイルを抑えようとしたゴーレム。
「しょせん人族だ、怖くもない。それともゴーレムはたったひとりの人族の冒険者を恐れておるのか?」
「恐れるものか。だが油断は禁物といっているのだ。現にサイクロプス、オークまでもやられているのだから。すでに2人居なくなっていることを忘れてはならん」
6人いた中級魔人は4人に変わっていた。
特にガーゴイルはサイクロプスと仲良く友達であった。
その友達を倒されて黙っていろと言われても、押さえられるわけない。
怒りが爆発しそうな状態にまでなっていたのだった。
テーブルでの会議は終わった。
ガーゴイルは他の魔人らと別れて自分のすむ森に帰る。
空を飛べる羽根を持つガーゴイル。
森にいる配下の魔族が出迎える。
「おかえりなさいガーゴイル様。会議の方はいかがでしたか」
「最悪だ。最悪だ。どいつもサイクロプスが倒されたのに落ち着けだとか、今は様子を見ろだとかで。私が直接その冒険者を殺ってやろうと思う」
かなり態度が悪くなっているのを魔族達は恐れた。
「かなりご機嫌が悪いようで。ただし、相手はかなりの能力者でしょうが、ガーゴイル様が出れば敵わないですよ」
「当たり前だ。私が負けるわけがない。きっとサイクロプスは油断したのだろう。そうとしか考えられない。仮にも中級魔人だぞ。そうやすやすと人族に負けるなんてあり得ない話だ」
「はい、ガーゴイル様の言う通りでございます。何か汚い戦術を使ったのかも知れません。その汚い戦術に引っかかった可能性があるのでは。人族は汚いですから。能力では我々魔族に劣るので、いつも罠を仕掛けたり、セコい戦法で来ます」
「サイクロプスを罠にか。きっとそうだよな。人族がマトモに戦って勝てるはずない。ますます許せない。絶対に生かしておくか。その人族の奴の居場所を至急に探し出せ。このガーゴイルが復讐してやろうぞ」
「はい!」
ガーゴイルは復讐心でいっぱいであった。
まだ冷とは対面してないし、名前すら知らない。
だが魔族が調べれば、いずれは冷の情報はわかる。
その頃、冷はまだガーゴイルに狙われているなんて思ってもいない。
のう天気に暮らしているといったら変だが、本当にそうであった。
戦いたくなつたらクエストに。
腹が減れば食べる。
何もしたくない時はのんびりと暮らしている。
この世界に来て自由を満喫しているようである。
もちろん最大の目的は決まっていて魔王の復活を阻止すること。
その辺はまだ感じていない生活ぶり。
「あの〜」
「なにミーコ」
「今日はどういう予定にしますか」
余りにも自堕落な生活の冷に思わず出た言葉。
「そうだな。毎日毎日、俺の訓練を受けていて退屈となったかい?」
「いいえ、退屈なわけありません」
「そつですよ! おかげで筋肉がついてしまったわ!」
アリエルが体のラインを気にして発言する。
「筋肉だって! それは俺にとっては嬉しいニュース。俺の訓練のタマモノだろ」
「アリエルは強くなりたいけど美貌は保ちたいのよね」
「そうそう。そこらへんをもう少し考えてください」
「う〜ん難しい難題を言ってくるなアリエル。ある程度の筋肉は必要があるんだよ。それでなきゃダメ」
「もうっ! 鈍感なんだから」
「俺って鈍感なのか」
「そうよ。もう少し女の子の気持ちを理解してよ」
「女の子の気持ちか……俺には一生理解出来ないっぽい」
「わかりました!!!」
ツンとしてアリエルは言った。
「クエストもしたくなりました」
ミーコが積極的に進言してくる。
「実にいい発想だよ。訓練も大切だが、実際の戦闘の方が大事と言える。今日はクエストをしたいと思う」
「ミーコが言うから、このバトルオタクがその気になってしまったぞ」
「えっと……私のせいかしら、それはゴメンです」
「でも訓練ばかりで飽きてきたのもあるから」
「アリエルも試したいと?」
「少しはね」
「そうらしいぞ冷」
「わかった。君たちの気持ちは伝わってきた。さっそく出発としよう」
「ご主人様、お気をつけて〜〜〜!」
「ああ、行ってくるよネイル!」
ネイルは抱きついてきて冷とくっつく。
大胆にもイチャつくのでアリエルはイラッとしていた。
冒険者ギルドに行きクエストを探しすことに。
「あら冷さん、今日はクエストありますよ」
「じゃあお願いします。この子達は前りよも強くなってる。それは俺が保証するから、1段階上のランクのクエストをお願いする」
(魔族達とも戦えたのだから、十分にやれるだろう。それに少しくらい上の方が経験にもなる。俺が監視してれば出来ると思う)
「ランクアップを希望ですか。そうなるとランクは4から5に上がります。5ですとかなり強くなりますが、冷さんが居れば不安はないでしょうということてすかね。まぁサイクロプスのクラスと比べるまでもないですから」
ユズハ店員がランクアップした5のクエストをみせる。
クエストランク5
シーホークの討伐
報酬 1匹 3500マリ
ランク5の魔物はシーホークと記されてあった。
「シーホークはどんな特徴でしょうか」
(名前からして鷹をイメージする。飛んでる敵だったらどうなるか。不利だよな)
冷は飛べる魔物を考えた。
どう考えても地上にいる方が不利であるからだ。
「はい、シーホークは今までの魔物と大きく違います。まず空中を飛べる能力を持ってます。そして襲いかかってくるので、対空中戦の戦い方が必要となります。冒険者の中にはシーホークに空中に連れて行かれてしまった方もいるそうです。ですので無理に受けることはありません。キャンセルして別のにしますか?」
無理にすすめて大怪我しても困るので、冷に確認を求めた。
冷はというと考えは決まっていた。
「もちろん受けます。同じような魔物とばかり戦っていても成長は見込めない。違うタイプの魔物と戦うのも大事です。なのであえて試練になるシーホークでお願いします」
(これは彼女達の為になるのだから、わかって欲しい。強くなるにはより強い敵との戦いが必要である。それは俺の過去がそうであったから)
実際に冷は幾度も自分よりも強い敵と相対してきた。
負けることもしばしばあった。
だがその度に強い精神力で乗り越え強くなってきたのだ。
「大丈夫なの?」
「そぅですよ、私達はそんな魔物と戦った経験はないし」
「経験がないからいいのだ。怖いかもしれない、けど重要なことは経験値が君たちに入る。その経験が今後に役に立つ」
「死んだらどうすんだよ!」
リリスがおっかない顔で言った。
「死なない為に毎日俺の訓練を受けてきたのだろ」
「まぁな」
「それなら自信をもってくれ」
「わかったよ」
リリスも納得してくれた。
「じゃあ、そのクエストでお願いします」
「了解しました冷さん。シーホークで受け付しました」
シーホークにに決まるとギルドを後にする。
冷は納得していたが、その他のメンバーはまだ不安顔。
「おいお前さぁ、空中戦なんだろ今度のクエストは。そうなるとどうやって戦うのだ」
リリスの言う通りに不安は隠せなかった。
「そうよ、勝手に決めてどうする気?」
「待てアリエル。俺は勝手に決めてない。ちゃんと考えがあって決めたことだ。君たちに合うクエストだと思ったからこそ、受けたので、決して君たちを見放してるのではない、わかってくれよ」
(クエストを決めるのも大変だよな。彼女達の気持ちも考えないといけないのか)
「どうみても冷の独断でした。しかしどんなクエストでも受けるのは大事」
「ほらミーコは納得してるぜ。アリエルとリリスも納得してくれ」
「ミーコは単に戦闘よりもその後のマリが多くもらえるからでしょう!」
「げっ……なぜ、わかったアリエル!」
図星であった。
「当然だ、ミーコが積極的になる時はマリの話だ」
「うう……。そんな」
「ミーコが金が好きなのはわかった。とにかく相手はシーホークだ!」
冷は彼女達のどうでも良い話を遮るように言った。




