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冒険者ギルドをやや下を向いて、恥をかいたのが原因だが、店外へ。
「商業ギルドってのはお隣らしいな」
「あまり町を詳しく調べてないのもある」
「うん、一度ちゃんと調べておこう」
「意外とわからないこともあるしな」
「ココじゃないかな。ユズハさんの言う通りだとしたらさ。ほら商業ギルドって言う看板がついてるわ」
「えっと……」
「ほら、ここ」
「ありましたね」
「本当だ」
アリエルが冒険者ギルドの真横にある店を向いて言った先には、確かに商業ギルドと書かれていた。
「今までなぜ気付かなかったんだろうか俺としたことが。あまりにも近くにあり過ぎて見過ごしてきたのかもな」
(本当にあったぞ)
「それよりもさあ、早いとこ商業ギルドに入って金を見させろよな〜」
「強盗並か」
「似合ってるかも」
「うるさい!」
「やりかねない」
「本気に聞こえるのだが」
「本気ですから」
「仲間だろ私たちは」
リリスはアリエルに確かめる。
「仲間に強盗は困ります」
真剣な顔で言われた。
「ほらお前がモタついてるから私が強盗扱い。早く商業ギルドに入って!」
「いつも最後は俺のせいかよ」
「屁理屈言うな」
「これのどこが屁理屈かい!」
「お前のセリフ全て」
リリスはせっかちな性格なのが現れて、行動が遅い冷を攻め立てる。
「金、金…………」
「ミーコ、なぜか君は金の話だと食いつくな」
「そ、そんなことありません!!」
「いつもそうよ」
「なにかしら、冷の金を盗もうとしてる?」
「してません!」
「でも盗んだ経験は?」
「あ、、、、、、ありません」
「本当にかよ?」
「あることは、あるけど、冷氏のはない。信じてください!」
「信じていいのかな」
「ミーコを疑ってますね」
「冷氏、そんな目で」
「悪かった、盗んでないと思うよ」
(俺も今の所持金を数えてないからわからないんだけど)
慌てて否定するミーコ。
そうなると冷は意を決して商業ギルドに入って行くと、店内は冒険者ギルドとは違う雰囲気で、冒険者が新たなクエストを探しているのとは違い、穏やかさが伝わってきた。
[パトリシア]
性別 女
種族 人族
職業 商業ギルド店員
「いらっしゃいませ。今日はどの様な目的ですか?」
店員に入るや冷に声をかける女性はパトリシアで、金髪で青い目をした美女であり、その妖艶な目は幾人もの冒険者を魅了してきて、冷も思わずドキリっとしてしまう。
(おお、綺麗な女性だぞ)
「マリが有るか確認しに来たのです。まとまった額のマリが入金されたので」
(うわぁ〜綺麗な女性だな〜)
「私はパトリシアと言います、今後もよろしくお願いします。お名前を教えてもらえますか?」
「えっと……冷です」
「冷??? 変わった名前ですかね」
「そうみたいです」
「この町の出身かな?」
「いいえ、違います。えっと……詳しくは……」
(色々と質問してくるな)
「年齢は?」
「なぜかしら、ヤケに質問攻めしてきますが。この人は間違いなく冷です!!!」
アリエルが質問攻めするパトリシアに怒る。
「質問攻めと言いましたが、これも私の仕事なのです。一応本人確認することになってますから」
「それもそうだな。俺の年齢は……」
「ちょっと待って……。今確か、冷って言いましたか?」
「だから!!! 冷がそう言ってますよ!!!」
「そそそそそそ、そんな、まさか、あの冷さんですか???」
「そうよ!!! 何度言わせるのよ!!」
アリエルがやっと気がついたことに腹をたてた。
「失礼しましたっ!! お許しを!!!!!!」
「別に俺は気にしてませんから……」
「すみませんでした。大変な失礼を」
冷が名前を告げるとパトリシアは驚くようにして確認を求め、実際に冷本人は見たことはなく、噂でしか知らなかったからであった。
「俺は、あの冷だと思います。もし違ってたら謝りますが」
(俺以外にはいないだろう。しかもあのって。言われてみると恥ずかしい気分だ)
すると他の職員も来て、
「ええっ!!」
「驚かれても困る。本物なんで」
「嘘!」
「嘘ではないです」
「冷はどうやら偽物だと思われてるのよ」
「そのようだな」
「本物らしくないからか」
「本物らしくないって、俺が本物だからな」
「そうでしたか、あの冷さんと知らなかったので驚いてしまいました。確認します」
しばらく冷の前から離れると、事務作業をしだしたパトリシア。
その事務作業をしてる姿に冷は胸を打たれ、綺麗な事務のお姉さんって感じ、ハキハキとした受け答え方、歩くと締まったお尻が強調されて、知性を感じさせる顔をしていて、見つめてしまった。
(いいな、仕事ができる女性って!)
「ねえ、なんであの女性を見続けてるの。知り合いかな?」
あまりにもパトリシアをガン見した結果、アリエルにみすかれたのだった。
「知り合いに似ててさ〜〜」
照れ笑いでこの場を過ぎ去りたい。
(ちょっとガン見したら、バレちゃうて、アリエル恐ろしいな)
「金髪の知り合いがいるて初めて聞きました」
「言わなかったかな……」
「とぼけてる」
「俺はいつも同じだよ」
「そう言うことにします」
「冷さん、現在の登録した冷名義には約1億マリが有ります!! これは例の魔人を倒した際に得たマリですかね。尋常じゃない額のマリです。冷さんが必要なだけいつでも引き出せるシステムですから、私に声をかけてください。全額をって言われたら急には無理ですがね」
「金額が知りたかったので、全額なんてしませんよ。それに使い道がありませんから。俺って物欲が少ないみたいで金は無くても生きていけます。ではまた来るときお世話になります。それと商業ギルドてマリを管理するだけでしょうか?」
「大まかに商業ギルドの説明をしますと、冒険者ギルドはご存知ですよねユズハがいたと思いますが」
「はい、とても親切で美人なユズハさんにはお世話になってます。冒険者ギルドはクエストを紹介してくれます」
(今の言い方だと、パトリシアさんは、ユズハさんを知ってるようだ。お隣ってのもあるからか。この2人とお風呂に入れたら、さぞかし楽しいだろうな〜)
違うことを考えだす冷。
「そうですね。商業ギルドにはクエストは存在しません。主に町のお金、マリを管理してます。冒険者だけではなくても利用できます。町にあるお店、例えば武器屋、宿屋、飲食店などは店主になるには必ず商業ギルドに登録してもらい、許可を得てから開店となります」
「勝手にはお店を作れないのは理由があるのかな?」
「はい、管理しないとお店の中には詐欺行為をする店が出てくるからでして、例えば偽物の武器などを売ったり、宿賃を急に値上げしたり、お酒を飲む店で一杯で法外なマリを要求するといった例が有りますから、商業ギルドで登録制としておけば、詐欺行為者の店主は追放して安心して利用できるようになるのです。まあこの様にしても詐欺行為は存在しますが、どうしても汚いことを考える人はいつの世でもいるから、しかたないです」
「なるほど理解できました。俺も気をつけるようにしますよ」
「つまり悪いことは許さないわけね」
「素晴らしいギルド」
「安心して預けられそうです」
「俺もそう思う。必要な額だけ引き出すことにしよう」
「あっ……またネイルのように奴隷商館を考えたな!」
「い、いや考えてない!」
「嘘!」
「本当だよ。全部使うと必要な時に困るからな」
(そう簡単には奴隷商館には行けそうにないな)
「私がしっかりと管理します。いつ引き出すのかを必ず伝えてください!」
「アリエルが!!」
「そうです」
「なんか嫁みたいなことするな」
「よ、よ、嫁ですって!」
「どうした、アリエル。嫁って言っただけだけどさ」
「アリエルは嫁になりたいのでは?」
「リリス! 想像で言わないでください」
「想像じゃないよ。お前がビックリしてるから実は憧れてるのかと思ったのだよ」
「憧れてません。女神は人族の上に立つ存在です。嫁になったら同等になっちゃうでしょ!」
「いいじゃんかよ冷が好きなら」
「ああああ、そんな好きとか話しされると混乱しますので!」
「わかった、わかった、アリエルに伝えればいいのだろ。俺は構わない」
「冷は優しいな」
「俺はみんなに優しいよ」
「ありがとう」
アリエルは笑顔に。
「嫁にもらうのも構わないのですか。冷氏とアリエルが」
「ああああああっ! ミーコ、もうこの話は止めましょう!」
「逆に嬉しそうですよアリエル!」
「ああああああっ!」
アリエルは真っ赤になる。
「仲がよろしいようで、いつでもお待ちしておりますので」
「ありがとうパトリシア」
パトリシアは冷に軽く手を振って別れると、金額だけ入金されてるのを確認し商業ギルドを後にするとして、最後のパトリシアには完全にヤラれたという感じの冷であった。
(手を振ってくれたぞ。絶対にまたくるぞ〜〜)




