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「おい、アレを見てみろ。サイクロプスだよな」


「縄で捕われてるように見えるぜ。まさか!」


「それに誰だサイクロプスを引き連れてるのは。それにめっちゃ可愛い女の子を3人も一緒だ」


 サイクロプスを引き連れて歩き、村に到着してみるとこの注目。

 村の住民達は信じられない物を見たとばかりに驚くのも無理はない。

 特に冷に関しては誰も名前も顔も知らない。

 みんながその光景を、ぼう然と立ち尽くした。


(なんか俺、注目されてるみたい)


 本人は注目されるのに慣れていない為、足が浮く感じ。

 その噂話が広まり、使いの者は直ぐに見つかる。

 大慌てで通りに出ると冷達を発見すると、サイクロプスの姿を見て驚いていた。

 しかしその姿は確かにサイクロプスであり、冒険者ギルド関係者なら顔は張り紙で貼られてあり知っている。


「レレレレレ、レレレレレ、冷さん、本当にサイクロプスを捕らえちゃった?」


「悪いがサイクロプス本人だけど。俺の顔を知らないのかよ?」


「し、失礼っ。知っております。知っておりますとも。この顔は間違いない、魔人サイクロプスです〜〜〜」


「ちくしょ〜〜。これでは魔人の俺がさらし者だ。ちくしょ〜」


「サイクロプス様! こんな村の人族など抹殺してやりましょう!」


「それがヘスティ、いくら力を入れても縄がほどけないんだよ。どうなってんだか……」


「サイクロプス様でもですか……」


「縄縛りのスキルなんだ。そう簡単にはほどけないさ。ギルドまで静かにしてて」


「クソ〜」


「サイクロプスだけでなく、ヘスティまでも捕らえたのですか冷さん。これには驚きました!」


「俺は言ったことはやるのさ。サイクロプスはこの縄で縛ってあるから安全だ。暴れることはできない。悪いがこの村に泊まらずにピルトの町に帰りたいのだが」


(特に用はないしな。それにサイクロプスを長いこと繋いでおくのも神経を使うのもある)


「ではピルトの町に帰りましょう。直ぐに馬車の用意をします!!!!」


 慌てふためく姿で馬車の用意に向かう。

 冷はもう用は済んだので、この山には用はなく帰るのを望んだ。

 馬車の用意が出来た。

 冷達が馬車に乗り込もうとした時に騒ぎが起きた。


「どんどんと騒ぎが大きくなる」


「騒がしいのはお前がいるからだろう」


 リリスはわざとらしく言う。


「俺の活躍が認められたということ。ヒーロー扱いされても照れるな」


(気分は良いです)


「照れるな!」


「そりゃ照れるさ。なにせ俺は魔人を倒して連れて来てるんだぜ、自慢してもいいだろう!」


「冷の自慢もありますが、私達の活躍もあったのです。それを無視していいのですか。余りにも自己中です」


 ミーコが自分のことを忘れられてることに腹がたった。


「そうだったな。よくあれだけの数の魔族を相手に戦えたよ。俺は正直に言って難しいなと思っていたんだ。いや一人くらい死ぬかもなと」


(これは本心でもある。どうやって戦ったかまで詳しくはわからない。でも今までの過去の例からすると進歩といえる)


「そ、それじゃあ私達のなかで誰かしら死ぬと?」


「まぁそう思ったら怒られると思って言わなかった」


「酷いじゃない、本当に死んだらどうする気だったのよ。今回は良いとしてよ!」


 冷の不親切さに黙っていたアリエルが怒った。


「確かに死んだら困る。俺の大事なパーティーメンバーであるし、道場の生徒でもあるわけだろ。もちろん悲しいよ。でも俺にも考えがあってな、それは君たちに強くなって欲しいのだよ。教える立場にある俺からしたら、いつまでも俺に頼ってばかりではダメだと思う。俺の力が無くても戦えるように成長してくれと願ってるのさ。わかるだろ俺の言いたいことがさ」


(これは俺の願望だけど)


「そこまで考えがあって言ったのね。それは言えてるわ。今までずっと冷に頼りきりだったから私は。女神としては情けないわね」


「私も勇者の子孫として今の言葉は胸に刺さった。どこかで冷氏を頼っていた自分がいた。情けない話ね。でも今回は冷氏に頼らずに戦えた」


「そうさ、やれるのさ君たちは。俺から見ても君たちにはとても良い才能がある。だけどなその才能が眠ってるのだよ。まだ活かしきれてない。その才能を俺は呼び起こしたいのさ。かなり危険性はあったけどな。リリスだって良い才能があるんだよ」


「私もか。才能なんてあまり考えたことなかったから、自信がなかった。そもそも淫魔の魔族でも落ちこぼれだったから、こうして一族から離れてしまったわけで」


「実はリリスも才能があるんだよ。周りの魔族がそこに気付かなかっただけだ。それは俺が保証する」


「そう言われると……」


 ちょっと顔を赤くして照れるリリス。


「なんだか今度はリリスが照れてる」


「うるさいミーコ、照れるわけないだろー」


「照れるリリスも可愛いんだな」


(ギャップがあると言うのかなこれ)


「可愛い、言うな!!」


 可愛いと言われてしまい慣れてないリリスはいっそう赤くなっていた。


「どんどん赤くなるよ!」


「アリエルまで、馬鹿にしやがって!」


「それと今の話は本当ですか。私達にとても才能があってまだ眠っているというのは?」


「本当だよ。数多くの武術家を見てきた俺からみてとても良いセンスしてる。嘘ではない。きっと強くなれるさ」


(良いセンスどころか、もっと上のクラスの能力もあるかもな)


「勇者の子孫と言ったら、馬鹿にされるのが怖くて隠して生きてきた。だから自分のことが嫌いになってたの。でも冷氏の言うとおりなら希望が出てきた」


「それでいい。大きな自信を持とう!」


「大きくね!!」

 

 ミーコは大きくと言った時に自分の大きな胸を持ち上げて言った。


「そ、それは十分に大きいから大きくなる必要ない!」


「あら、もっと大きくなりたいと思ってます。だって冷氏も大きいの好きそうだし……」


「そうなの冷?」


「お、俺は大きいのも小さいのも両方好きだけどな……あはは」


(ここは比較しないほうがいいよな。アリエルに気を使おう)


「アリエルも能力が増えると胸も増えると?」


「増えません!!! 私の胸はそんな便利品じゃない! それにみんな見ないでよ、恥ずかしいから……」


「俺はアリエルの胸は好きだよ」


「……そ、そう言われても、もっと恥ずかしい……」


「アホか」


 最後はリリスがアホらしいとなる。

 そうしていると村の中は人だかりが出来ていた。

 村の人の集まりだった。


「みんな集まってるけど、いいの?」


「俺が出たらもっと集まるだろう。だから早いとこ出発としようぜ」


「無理もない。村の人にとってはサイクロプスは絶対的な存在だっただろうし、誰もが従ってきたでしょ。それを縄で縛ってこの状態に」


「騒ぐなと言う方が無理だな」


「き、き、き、き、さまな、サイクロプス様をこんな様にしてこれで済むと思うなよ!!!」


 ヘスティが我慢ならず冷に言った。


「どうなるよ俺は?」


「他の魔人のお方が黙ってないはず。キサマなど殺されればいいさ!!! きっと魔人のお方の仕返しをもらうさ。そしたら死ぬのは確実!!」


「ご忠告ありがとう。よく覚えておくよ。他の魔人て誰よ?」


「ぬぬ……知らぬのか!! 教えてやるよアホめ。オーク様にサイクロプス様、それにガーゴイル様、グリフォン様、ゴーレム様……」


「もういいヘスティ、それ以上は言うな。彼らがどう動くはわからないんだし」


「は、はい」


 サイクロプスに言われて黙るヘスティ。


「へぇ〜〜〜それは楽しみだな」


(サイクロプス級のがまだいるのだろ。俺にとっては楽しみなんだよ)


「た、楽しみだって! キサマは本物のアホだ!」


「アホか……。確かに俺は戦いに関してアホかもな。強い相手を考えると楽しくなる体質持ってるから」


「自分で認めてるよ、サイクロプス様!」


「ふふふ、どうやらとんでもない相手と戦ったようだ。魔人と聞いて怖がらない体質の持ち主と」


「褒めてどうするのですかサイクロプス様!!」


「わかっただろ戦ってみて」


「うう……はい、確かに強かったです、悔しいですが!」


「ちょっと静かにして!! うるさい!」


 リリスが睨みつけるとヘスティはシュンと黙ってしまった。


 冷達は行きと同様に帰りも馬車で出発。

 出発前に見た集まってる集団は歓喜を上げていた。

 村の中央に位置する箇所から放水があった。

 それは水ではなく熱い温泉。

 冷が源泉を開放したことで、今まで閉められていた湯が流れてきて噴水のように空中高く舞う。

 村人はなぜなのかと話し合う。

 答えは1つしかない。


「どうしたんだろう急に温泉が湧いたぞ!」


「こんなことは今までなかった。普通ならへスティが許さないだろうけど、へスティも見えない」


「馬鹿だな、へスティどころかサイクロプスが倒されたんだろ、見たこともない者に。冒険者なのか、それとも国王軍の者かはわからないがな、ただあの人がきっと温泉を開放したと思うよ」


「やっぱりそうか。あの人は誰だろうか気にはなるが、俺たちや国にとっても良いことだとは言い切れる。サイクロプスがいる限り圧迫感は酷かった。逆らえば消されるんだから。簡単に人を消しちゃう奴だ」


「あの人に感謝しなきゃな!」


 サイクロプスが倒された。

 あの冒険者がサイクロプスを倒して温泉を開放したのだと、騒然となっていた。

 サイクロプスはこの村にとっては、厄介であった。

 古くから山は山菜が取れる為に、きのこ狩りなども盛んであった。

 村の特産品として盛況であったのにサイクロプスが現れた時から村の人は山に入るのを制限された。

 許可証がないと山に入れなくなり、その許可証を手にするには多額の金を要求され、仕事をする為にやむなく許可証の代金を払う山菜取り士がほとんどであった。

 サイクロプスが居なくなるのなら、もう許可証も必要なくなるというのもあって、騒然となったのだった。

 それが冷だと知れ渡るのにさほど時間はかからなく、冷本人は知らないところで賞賛されていた。

 

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